ワンマン社長とワンマン経営の弊害と末路|ワンマン体制が会社を滅ぼす

ワンマン社長とワンマン経営の弊害と末路|ワンマン体制が会社を滅ぼす

 

ワンマン経営とは、独裁色の強いワンマン社長が会社に君臨して、ワンマン体制で会社を支配している状態のことである。

 

中小企業においては、ワンマン経営が一般的な経営スタイルとして定着しているが、ワンマン経営(ワンマン社長)の失敗事例はじつに多い。

 

この記事では、ワンマン社長とワンマン経営の弊害と末路、並びに、ワンマン社長の辞め方に至るまで、詳しく解説する。

 

 

ワンマン社長(ワンマン経営)とは?

 

ワンマン社長とは、実質ワンマン体制で会社経営を支配している社長のことだが、ワンマン社長(ワンマン経営)最大の強みは、経営判断や意思決定のスピードが速いことだ。

 

ワンマン社長が独りで経営判断等を次々と裁決していくので、経営判断が当たり続ければ会社が順調に成長する。

 

会社創業から10年くらいはワンマン経営の方がスピード感があり、時流に乗りやすいメリットがあると思う。

 

一方で、ワンマン経営は、イエスマンの増殖やナンバーツー不在といった深刻な弊害を生みだしたり、ワンマン社長自身がワンマン経営を辞めることができなくなる、といったデメリットがある。

 

また、ワンマン社長に天才的な経営の才能があったとしても、会社経営は生き物のようなものなので、全ての采配が見事に当たり続けることは、まずあり得ない。

 

やはり、会社経営がある程度安定した段階でワンマン経営から徐々に抜け出し、チームでの経営体制に移行した方が失敗リスクが低下する。

 

 

ワンマン社長(ワンマン経営)の弊害と末路とは?

 

会社経営の全責任を一心に背負い、公明正大な姿勢でリーダーシップを発揮しているワンマン社長であれば全く問題ないが、ひとりの経営者が10年、20年と会社の頂点に居座り続けると初心が薄らぐものだ。

 

事実、中小企業においては、創業から一代でワンマン経営を長く行っていると、知らぬ間に、自己流のワンマン社長に陥りやすくなる。

 

会社は、経営者ひとりのものではない。顧客がいて、社員がいて、取引先がいて、その背後には、関係者の家族もいる。

 

関係者全員の総意を会社経営に反映することは難しいが、顧客や社員の理解を得ずに社長がワンマンで物事を決めていくと、いつしかワンマン経営の弊害が出てくるものだ。

 

当然ながら、ワンマン社長が自己流のワンマン経営を長期的に続けていると、会社の持続的成長を阻害する弊害が次々と出てくる。

 

例えば、イエスマンの増殖やナンバーツー不在は、ワンマン経営最大のデメリットとであり、ワンマン社長の末路は、裸の王様という残念な結果もあり得る。

 

持続的成長を成し遂げるには、ワンマン経営の弊害が出る前に、何らかの手を講じることが必要だ。

 

中小企業の持続的成長を阻害するワンマン社長とワンマン経営の代表的な弊害例と対策を順を追って解説する。

 

 

ワンマン社長の弊害「イエスマンの増殖」

 

ワンマン社長の独裁色が強まると、自分の意見に同調しない社員と距離を置き、自分の意見に同調する社員を重宝する傾向が強くなる。

 

ご想像の通り、この状況が長く続くと、役員から一般社員まで、イエスマン揃いとなり、指示待ち症候群の組織になってしまう。

 

会社組織として、これほど軟弱な体制はない。

 

有能な社員や役員であっても、ワンマン社長の意にそぐわない言動があると、会社の中枢から遠ざけれらてしまうことも起こり得る。

 

こうなると、有能な人材が続々と社外に流出し、会社の組織は、ワンマン社長に媚びを売る社員ばかりのイエスマン天国になってしまう。

 

イエスマン天国は、ワンマン経営の末期状態である。

 

わたしが、過去に再建調査に入った中小企業のワンマン社長の事例を紹介する。

 

この会社は、年商50億を売り上げていて、その地域のなかでは業界1位のシェアを持っていた。

 

創業期から順風満帆な会社経営を続けていたが、数年前に出店した新規事業が大赤字になり、会社全体の損益が黒字経営から赤字経営に転落していた。

 

新規事業の赤字額は年間2億円である。

 

経営改善の見込みはなく、5年も放置すれば10億円の赤字である。現場も視察したが、立地条件が悪く、黒字経営が困難であることは容易に想像がつきそうなものだった。

 

経営者に対して「何故出店したのか?」と尋ねたところ、「役員、部長含め、全員賛成のうえでの出店だった」とのことだった。

 

つぎに、経営者のいない会議室で意思決定に関わった当時の役員と部長に同じ質問を投げかけてみた。

 

返ってきた答えは「あの場では言えなかったが、心の中では全員反対でした...」だった。

 

 

この中小企業は、創業者が長く経営のトップとして経営の采配をとっていた。

 

そして、社長自身も気がつかない間にワンマン経営に陥り、いつしか組織がイエスマンだらけになっているという典型的なケースだった。

 

経営者が部下からの進言を受け入れる度量を示さないと、会社はいつしか恐怖政治となり、ワンマン経営に拍車がかかる。

 

この場合、意思決定に関わった役員、部長は責められない。やはり、ワンマン経営を推し進めたワンマン社長の責任が一番重いと言わざる得ない。

 

このように、創業期から順風満帆に経営されている会社であっても、ワンマン社長のたった一つの判断ミスが命取りになることは往々にしてあることだ。

 

ワンマン社長になりたくなければ、時には経営者にとって耳の痛い内容であったり、意に反する意見であっても、受け入れる度量が必要だ。

 

 

ワンマン社長の弊害「ナンバーツー不在」

 

ワンマン社長の経営体制が長期的に続くと、本来、経営判断を司るべき立場にいる役員や部長の経営判断能力が一向に磨かれない。

 

組織上では役職者が存在したとしても実質的にワンマン社長のワンマン体制で会社が経営されている場合、役職者は会社経営に参加していない状態に等しくなる。

 

これでは経営者の代わりに会社経営の采配を揮うナンバーツーは育たない。

 

ワンマン社長が元気であれば問題ないかも知れないが、社長の身に万が一のことがあったらどうするのだろうか?

 

経営判断力は、責任ある立場で繰り返し経験しなければ、一朝一夕に磨かれるものではない。

 

ナンバーツー不在の状態でワンマン社長が会社から居なくなってしまったら、その会社の成長はそこで止まってしまうかも知れない。

 

少なくとも、何かしら重要な経営判断に直面したら、戸惑ってしまうだろう。

 

ナンバーツー不在は、会社の成長を阻害するワンマン経営最大の弊害といっても過言ではない。

 

 

ワンマン社長の弊害「不正行為の助長」

 

ワンマン経営が末期状態になり、ナンバーツー不在のイエスマンだらけの会社組織になると、ワンマン社長の暴走を止めることができなくなる。

 

例えば、ワンマン社長が主導して行う粉飾決算、背任行為、横領行為、法令違反、パワハラ、セクハラなど等の不正行為を防止する手立ては、殆どなくなってしまう。

 

会社の利害関係者(株主、経営陣、社員、取引先、顧客)を考慮した意思決定や合意形成のガバナンス(統治力)も崩壊し、ワンマン社長の暴挙を止める防波堤もなくなる。

 

当たり前だが、不正行為が世間に知られると、会社とワンマン社長の信用は一瞬で失墜する。資本力の小さい中小企業であれば、会社倒産という末路もあり得る。

 

不正行為に手を出すワンマン社長のケースは、わたし自身も企業再建の現場で稀に目にするが、決して珍しいことではない。

 

不正行為は一度手を染めると、後戻りするのが困難になるので、決して手を出してはならない。

 

 

ワンマン社長の弊害「辞められない」

 

ワンマン経営を長らくやっていると、社長自身がワンマン社長を辞められなくなる、という弊害も生み出してしまう。

 

例えば、日々の経営判断を任せようにもイエスマンしかいない、或いは、ナンバーツーがいないという状況であれば、最後は社長自身が決断なり判断をしなければならず、一向にワンマン社長を辞めることができなくなる

 

つまり、ワンマン経営の弊害が末期状態になると、ワンマン社長を辞めたいと思っても、なかなか辞めることができなくなるという、悪魔のスパイラルから抜け出せなくなってしまうのだ。

 

このスパイラルにハマってしまうと、ワンマン社長と社員の距離は遠のく一方になる。

 

ワンマン社長の孤立感も、加速度的に増していき、場合によっては、あっという間に裸の王様に陥ることもあり得る。

 

裸の王様までいってしまうと、創業からすべての責任を一身に背負って会社の為に尽くしてきた時間と努力が全て水の泡となり、社長の尊厳は地に落ちる

 

行き過ぎたワンマン社長の末路は、決して良いものではないのだ。

 

 

ワンマン社長の辞め方

 

ワンマン社長を辞めたいと思っている経営者は少なくないと思う。

 

ワンマン社長の辞め方は色々なアプローチがあるが、早い段階から社員の自主性と責任感を育てる方法はおススメである。

 

なぜなら、社員の自主性や責任感が育つと、自ずとイエスマンが少なくなると共に、ナンバーツー候補が頭角を現すようになるからだ。

 

当然ながら、ナンバーツー候補が数人いれば、ワンマン社長の負担は大幅に軽減される。

 

社員の自主性や責任感を育てるには、社員に然るべき目標や情報を与え、経営に参加させることが大切になる。

 

また、会社の経営理念や会社の数字など、社員の仕事の質と思考力を高める情報分野を積極的に教育することも大切になる。

 

指示は命令より相談情報は独占より共有仕事は放任ではなく援助、など等、常に経営者と社員が一体となって経営に当たることが、結果としてワンマン社長を辞める土壌を生み出すのだ。

 

 

中小企業はワンマン社長が当たり前!?

 

中小企業は、ワンマン社長が圧倒的に多い

 

むしろ、ワンマン社長がいない中小企業は珍しいといってもいいのかも知れない。

 

そして、ワンマン経営であっても元気よく業績を伸ばしている中小企業があるのも事実だ。

 

しかし、そのような会社には、社長の右腕と呼ばれるナンバーツーの存在や、社員の気持ち忖度する社長の人望の厚さがあったりする。

 

ワンマン社長のアイデアをどんどん具現化するナンバーツーの存在、或いは、人望の厚いワンマン社長の存在は、行き過ぎたワンマン経営のうえにはなかなか成立するものではない。

 

右腕を育てる、或いは、社員への気遣いを丁寧にするという社長の意識ひとつでワンマン経営の性質はガラリと変わる。

 

また、成功しているワンマン社長の特長として挙げられるのは「数字に強い」ということだ。

 

数字は、経営判断、或いは、指揮命令の正しい根拠となり得るので、社員の反発を受けにくいというメリットがある。

 

経営者の自己研鑽する努力も、ワンマン経営を成功させる秘訣になる。

 

伊藤のワンポイント
 

中小企業はワンマン経営が正攻法です。しかし、社長が数字に弱い、右腕不在、社員軽視などの要因が一つでもあると、ワンマン経営の弊害が噴出します。ワンマン経営を成功させるには、失敗要因を克服するしかありません。裸の王様になる前に、時折り立ち止まって客観視することを忘れないでください。