中小企業で働く従業員の不満の原因の多くは会社側、つまり経営者にある。
従って、経営者が従業員の不満に耳を傾け、従業員の不満を満足に変えるための行動を自覚(実践)することが大切になる。
この記事では、従業員の不満を捉え、満足度を上げる方法について、詳しく解説する。
従業員の不満の原因の多くは会社側、つまり経営者にある。
例えば、
☑経営者の私欲優先の経営方針
☑経営者の経営能力の低下からくる労働環境の悪化
などは、従業員の不満の原因になりうる最たる理由になる。
よく考えてみてほしい。
経営者が私欲優先で、従業員の報酬を抑えて経営者自身の報酬ばかりを上げ続けていたら従業員はどう感じるだろうか?
経営者の経営能力が低く、従業員の労働時間が増える一方で報酬が全然上がらなかったら従業員はどう思うだろうか?
従業員の不満やうっぷんが溜まるのは目に見えているだろう。
従業員の不満を放置する会社に明るい未来はない。
事実、過去にわたしが再建調査で関わった衰退会社は、例外なく従業員の不満が噴出していた。
「企業は人なり」と云われるように、マンパワーは業績をけん引する重要な経営資源だ。
従業員の不満が大きくなるとマンパワーが低下し、会社経営の至るところに弊害が出始め、何れ業績が悪化する。
経営者が私利私欲を抑え、なお且つ、経営能力を高める努力を継続することが、従業員の不満を解消する秘訣になるが、一体、簡単かつ客観的に従業員の不満をキャッチする方法はあるのだろうか。
従業員の不満を捉え満足度を上げるには、経営者自身の言動を絶えず顧みることが絶対条件になるが、従業員の不満指数を測定する基準を定着させることも効果的だ。
従業員の不満指数を測定する基準としてお薦めなのは「社員一人当たりの付加価値」と「社員の時給」である。
この二つの経営指標を活用すれば、従業員の不満をキャッチできるだけでなく、従業員の満足度を高める目標指標としても活用できる。それぞれの経営指標について詳しく解説する。
社員一人当たりの付加価値とは、1人の社員が1時間働いて生み出す会社の付加価値のことである。計算式は下記の通りである。
①付加価値=総人件費+営業利益
②社員一人当たりの付加価値=付加価値(①)÷総労働時間
※総人件費を集計する際は、役員報酬、給与、賞与、雑給、福利厚生、法定福利費、支払報酬、支払手数料(謝礼等)、等々、あらゆるヒトへの支払が対象になる
※総労働時間は役員、社員、全従業員の労働時間の合計である
社員の時給とは、従業員一人一時間当たりの報酬のことである。計算式は下記の通りである。
社員の時給=(総人件費-役員報酬)÷総労働時間
※役員報酬の中には、役員の家族への報酬、役員の接待交際費用、等々、あらゆる役員への支払が対象になる
※総労働時間は役員の労働時間を除いた従業員のみの労働時間の合計になる
「社員一人当たりの付加価値」と「社員の時給」の推移をみると「経営者の状態」と「従業員の不満度」を明確に捉えることができる。
ふたつの経営指標と経営者の状態、従業員の不満の相関は下表の通りである。
社員一人当たりの付加価値 |
社員の時給 |
経営者の状態 |
経営状態 |
従業員の不満 |
---|---|---|---|---|
上昇傾向 |
上昇傾向 |
経営能力が高い 私利私欲が少ない |
業績と共に従業員の時給も上がっている |
少ない |
上昇傾向 |
横ばい ~下降傾向 |
経営能力が高い 私利私欲が多い |
業績は上がっているが従業員の時給が上がっていない |
多い |
下降傾向 |
下降傾向 |
経営能力が低い |
業績と共に従業員の時給も下がっている |
多い |
「理想のカーブ」と「不満のカーブ」は下図の通りである。
日頃から「社員一人当たりの付加価値」と「社員の時給」をモニタリングしていると、従業員の不満を発見できるだけでなく、経営者自身の経営能力の低下や行き過ぎた私利私欲を早期発見することができる。
また、従業員の満足度を上げるための目標基準として運用することもできる。
例えば、従業員の時給の上昇はもちろんだが、社員一人当たりの付加価値の上昇は従業員の満足度に繋がる様々な要因をもたらす。
▶会社の将来性が明るい
▶雇用の不安がなくなる
▶ゆとりからくる心の平穏
何れも中小企業のマンパワーが最大化される要因といえる。
経営者が経営力を磨く努力を継続しつつ、少ない私利私欲で社員満足度を追求している限りは、従業員の不満が大きく育つことはない。
従業員の不満を放置するような会社に明るい未来はない。従業員と経営者が苦楽を共にし、共に成長してこそ、長期的な会社の成長が見えてくるのだ。
計数管理で従業員の不満を捉え、満足度を上げる方法について解説しましたが、もう一つ大切なことは、社長が積極的に社員とコミュニケーションを取ることです。コミュニケーションは何気ない声掛けや差し入れで十分です。社長にとっては些細なことでも、社員は社長との交流に大きな喜びを感じるものです。