世の中に喧伝されている経営手法はじつに多い。
赤字経営を推奨する逆説的な経営手法、世界的大企業や著名経営者の経営手法など等、その内容は多岐にわたる。
この記事では、様々な経営手法の成否、並びに、中小企業に適した経営手法について、詳しく解説する。
巷の書店に出かけると、様々な経営手法を記した経営書が並んでいることに驚く。
どんぶり経営のすすめ、赤字経営のすすめ、赤字でも借金できる方法など等、逆説的な経営手法をまとめた書籍、
中小企業の成功手法や中小企業のマーケティング経営論、老舗の成功パターンなど等、様々な中小企業の成功事例をまとめた書籍、
松下幸之助の経営手法、カルロスゴーンの経営手法、ジャック・ウェルチの経営手法、など等、世界的大企業の経営手法をまとめた書籍、
成功の習慣、こころの経営、幸せをつくる経営など等、精神論的な経営手法をまとめた書籍、
など等、その内容は多岐にわたり、会社の経営手法を学ぶうえで、どれを手に取ったら良いのか悩むほどのラインナップだ。
何れの書籍もそれぞれの立場で経験したこと、ないしは実績を出したことについて書いているわけなので、認めざる得ない経営手法であることは理解できる。
しかし、中小企業の会社経営をするうえで、すべての経営手法を鵜呑みにして受け入れることが出来るかと問われると、ノーという選択肢も出てくるが私の考えだ。
その根拠と共に、中小企業に適した経営手法について、以下に詳しく解説する。
逆説的な経営手法は危険だ。
例えば、どんぶり経営や赤字経営を推奨する経営手法を真似た結果、中小企業が成長するケースは稀ではないかと思う。
確かに、もともと数字に強い経営者がどんぶり経営にシフトして、損得勘定を自分の頭の中で行いスピーディーに経営判断を下していった結果、会社が成長発展するというケースはあるかも知れない。
もともと数字に弱い経営者が同じことを真似たらどうなるだろうか?
.....。
勢いと勘に任せた経営手法ほど恐ろしいものはない。
わたしには、失敗するしか道がない、といえるほど危険な経営手法に思える。
また、会社の数字をないがしろにするどんぶり経営には様々な副作用がある。
例えば、会社に合理的な判断基準が根付かないために社長が交代した途端に業績が傾く、或いは、社員の利益意識が低下して経営に躓く、はたまた、計画の詰めが甘くなり成長投資に失敗する、など等だ。
数字に弱い経営者にとって「どんぶり経営のススメ」というタイトルは格好の逃げ道になるので、思わず飛びついてしまうかも知れないが、それでは出版社の思うつぼだ。
型破りな経営手法が成功する人は、基本の型が身についている人だけだ。
基本の経営手法が身についていない状態で、逆説的な経営手法に走っても失敗を早めるだけで、何を信じて良いのか分からなくなったら基本の経営手法に帰ることが、失敗をかわす秘訣になる。
大企業の経営手法は、中小企業の会社経営に殆ど役立たない。
なぜなら、大企業と中小企業の経営資源には、比べるまでもなく雲泥の差があるからだ。
経営の真理やヒントは掴めるかも知れないが、大企業の経営手法が中小企業に通用することは殆どない。
仮に、大企業の経営手法を鵜呑みにして無理に導入を進めても、経営に失敗するか、社員の反発を受けるだけだ。
大企業の経営手法を役立てるには、まずは大企業との経営資源の差を理解した上で、自社にマッチする経営手法にアレンジしなければならない。
その際に注意すべき点は、「大企業はもともと中小企業から出発した、故にうちにも通用する」といった飛躍した考えを捨てることだ。
考えが飛躍すると、正しい思考で経営手法をアレンジすることが出来なくなる。
「看却下(かんきゃっか)」
何事もそうだが、足元を看なければ成功の道筋は見えず、浮足立った会社経営に成功はあり得ない。
中小企業を成功に導く経営手法は、企業の数ほど存在する。
なぜなら、経営資源から経営者の考え方に至るまで、会社を取り巻く経営環境は十人十色だからだ。
経済の多様化が進み、経営環境はますます複雑化しているので、どんな会社にも通用する成功の経営手法を見つけ出すことは、最早、不可能に近い。
また、成功は偶然の産物、失敗は必然の産物と云われるように、そもそも成功の法則などない。
他力本願ではなく、自力本願が会社経営の本質だ。
従って、人様の会社の成功事例に目を向けるより、失敗事例や自社の至らない点に目を向けて、ひたむきな姿勢で経営改善を推進した方が、よほど早く成功に近づく。
因みに、成功する経営改善のコツは、徹底した経営課題の解消にある。
周囲の成功事例に惑わされて目の前の経営課題から逃げていては、成功に近づくことはできない。成功は、現実を直視することから始まるのだ。
精神的な側面、例えば、モラルなどは、経営を成功させるうえで不可欠だ。
しかし、命令絶対、服従強要、或いは、早起き、滅私奉公、ボランティア精神など等、論理を超えた精神性の度が過ぎると会社経営に支障が出ることがある。
また、社員教育の一環で、精神論に傾いた書籍を社員に配布したり、ボランティアを社員に強要したりしている経営者をたまに見かけるが、この手の教育効果は殆ど上がらない。
経営者の自己満足的な押し付け教育は、社員の反発を招くだけで、教育効果は殆ど上がらない。
兎に角、精神論一辺倒の経営手法(社風)に走り過ぎると、論理的思考が衰退し、会社全体の経営力が弱体化する。
中小企業における社員の精神的支柱は経営者になる。
経営者自身がモラルから外れた経営手法に走らない限りは、社員がモラルから外れた行動を起こすことは殆どない。
つまり、経営者のモラルさえしっかりしていれば、精神論的な経営手法に走る必要はないのだ。
良いものは真似する、悪いものは受け流すといった取捨選択、或いは、真似から始めて真に辿りつくといった行動は経営者として立派な行いである。
問題は、本質がどこにあるのかを見誤らない選別眼を持つことだ。
本質を見失うと、何が正しいのか分からなくなってしまい、たちまち情報弱者に転落する。
当然ながら、正しい情報は経営を助けるが、誤った情報は経営の足を引っ張る。
経営資源から経営者の考え方に至るまで、会社を取り巻く経営環境が十人十色な中小企業を成功に導く経営手法は企業の数ほどある。
自社にマッチした経営手法は、ひたむきな経営課題の解消(経営改善)から生まれる。
会社経営はとても繊細なので、経営課題を見落とすと、いとも簡単に行き詰る。わたし自身、倒産の危機に瀕した企業を幾度と見てきたが、原因を辿ると大概はココに集約される。
プロ経営者としてのスキルとマインドを持って、ひたむきに経営改善を継続することが、自社に適した経営手法を確立する確かな方法になる。
会社の数字を深く理解し、なお且つ、顧客と社員の満足度を追求するだけで上々な経営手法が見出せます。さらに、衰退を予見し先手を打つ会社経営を実践し続ければ、次第に経営課題が小さくなり安定成長の基盤が整います。つまり、数字の異変や顧客と社員の不満を見落とさないことが優れた経営手法を生み出す秘訣です。