業績目標の正しい設定方法と運用効果|業績の良し悪しは目標で決まる

業績目標の正しい設定方法と本質的効果

 

業績目標とは、事業活動の結果を表す売上や利益などの客観的数値目標のことである。

 

業績目標は、会社全体の経営目標としてだけではなく、部門ごと、或いは、担当者単位の人事評価基準としても活用できる。

 

この記事では、業績目標の正しい設定方法、並びに、業績目標の運用効果に至るまで、詳しく解説する。

 

 

業績目標の基本指針

 

業績目標とは、事業活動の結果を表す売上や利益などの客観的数値目標のことで、幅広い領域で活用できる。

 

業績目標を立てるうえで注意すべき点は、売上一辺倒(売上至上主義)にならないことである。

 

なぜなら、会社の存続を保障するのは売上ではなく、利益だからだ。

 

利益が欠落した業績目標は、杜撰なコスト管理を生み出し、目標が仇となって、かえって業績が悪化する場合がある。

 

例えば、売上が拡大している一方で、赤字金額が膨れ上がるケースは業績目標の典型的な失敗パターンになる。

 

業績目標は売上と利益をセットに考える、これが効果的な業績目標の基本指針になる。

 

 

正しい業績目標の設定方法

 

正しい業績目標の設定方法は、売上と利益をセットで行うことが大原則になる。

 

また、成長率や達成率よりも改善金額をベースに業績目標を設定した方が、会社の成長スピードが加速しやすい。

 

例えば、下表のような事例を見れば、改善金額ベースの業績目標の方が、会社の成長に貢献することが理解できると思う。

(金額単位:万円)

前期売上 売上目標 当期売上 成長率 達成率 改善金額
A部門 1,000 1,100 1.200 20% 109.1% 200
B部門 2,000 2.400 2,300 15% 95.8% 300

 

それぞれの指標の計算式

成長率=〔(当期売上-前期売上)÷前期売上〕×100

 

達成率=(当期売上÷売上目標)×100

 

改善金額=当期売上-前期売上

 

ご覧の通り、A部門は成長率と達成率の成績がB部門よりも上回っているが、改善金額はB部門より劣っている。

 

A部門とB部門の社員数が同じであった場合、業績への貢献度が高いのは、売上改善金額が大きいB部門である。

 

また、売上金額よりも利益金額をベースに業績目標を設定することも大切になる。

 

例えば、下表のような事例を見れば、利益金額ベースの業績目標の方が、会社の成長に貢献することが理解できると思う。

(金額単位:万円)

前期売上 当期売上 売上改善 前期利益 当期利益 利益改善
C部門 2,000 3,000 1,000 200 200 0
D部門 2,000 2,500 500 200 500 300

 

ご覧の通り、C部門は売上改善の金額がD部門よりも上回っているが、利益改善の金額はD部門より劣っている。

 

この場合、業績への貢献度が高いのは、少ないコストで大きな利益改善を達成したD部門である。

 

このように、業績目標は、率よりも金額、売上金額よりも利益金額を重視して設定した方が、会社の成長を一層加速させる業績目標に仕上がる。

 

 

管理部や事務職に適した業績目標

 

収益を生み出さない事務職、或いは、管理部門であっても然るべき業績目標が必要だ。

 

なぜなら、事務職等に業績目標を与えないと、コスト意識が低下し、ムダムラを助長しかねないからだ。

 

事務職等に与える業績目標は、売上や粗利といった収入ではなく、会社の収入に対して、自分達の経費がどの程度消費されているかを示す「売上総利益高管理部門経費率」が適している。

 

売上総利益高管理部門経費率とは、売上総利益高(粗利高)に占める管理部門経費の構成比率のことで、事務職等の利益意識を高める業績目標として有効活用できる。

 

売上総利益高管理部門経費率の計算方法は下記の通りである。

 

売上総利益高管理部門経費率=(管理部門経費÷売上総利益)×100

 

例えば、会社全体の売上総利益高が5,000万円で、管理部門経費が500万円だった場合の売上総利益高管理部門経費率の計算式は次のようになる。

 

売上総利益高管理部門経費率=(500÷5,000)×100=10%

 

売上総利益(粗利)は、経費を賄う原資なので、売上総利益高管理部門経費率が分かると、事務職等の管理部門が会社全体の粗利をどの程度消費しているのかが一目瞭然で分かる。

 

事務職等の業績目標に導入すると、事務職全体の生産性が上がり、少ない管理部門経費で大きな売上総利益(粗利)を生み出す収益基盤が整い易くなるので、おススメの業績目標である。

 

 

業績目標を人事評価に運用する方法

 

業績目標は人事評価の基準として運用することもできる。

 

業績は社員や部門の活動結果を如実に表すので、公平性と客観性に優れた人事評価基準ではあるが、業績目標をもとに行う人事評価は慎重にしなければならない。

 

なぜなら、業績結果ばかりに捉われた人事評価を優先すると、業績を作るプロセスが軽視されて、モラルや組織力の低下を招くリスクが高まるからだ。

 

例えば、業績目標が「売上と利益を2倍に増やす」だった場合、業績結果だけでなく、目標達成までのプロセスも含めてしっかり評価することが大切だ。

 

業績目標を達成するプロセス評価がしっかりしていれば、その社員の弱みや強みの理解が深まり人材育成の効率が上がる、或いは、成功プロセスの共有度が高まり経営の精度が上がる、等の効果が得られる。

 

また、業績目標を達成するためのプロセス(PDCAサイクル)に人事評価者(経営陣)が積極的に関わると、社員のPDCAサイクルの精度が一段と上がる効果も得られる。

 

結果だけでなく、プロセスをしっかり評価することが業績改善や人材育成の効率を高め、強いては、業績目標を人事評価の基準として効果的に運用する秘訣になるのだ。

 

 

業績目標の設定方法と運用効果のまとめ

 

業績目標とは、事業活動の結果を表す売上や利益などの客観的数値目標のことだ。

 

業績目標の設定は、率よりも金額、売上金額よりも利益金額を重視して設定した方が、会社の成長に貢献する業績目標に仕上がる。

 

業績目標は人事評価の基準として運用することもできるが、業績結果だけでなく、目標達成までのプロセスも含めてしっかり評価しなければならない。

 

また、収益を生み出さない事務職に適した業績目標をうまく活用することで、会社の生産性を一段と引き上げることもできる。

 

業績目標は、会社経営に不可欠な要素(ツール)といって過言ではない。業績目標の正しい設定方法と運用効果を理解し、上手に運用することをお薦めする。