ビジネスにおいて、なぜ成功体験が役立たず、失敗体験が役立つのか?
その答えは簡単で、成功体験で培ったノウハウや方法は、周囲の環境が変化すると、途端に通用しなくなるからだ。
この記事では、成功体験が役立たない理由と失敗体験が役立つ理由、並びに、大きな成功を掴むための成功体験と失敗体験の活用法に至るまで、詳しく解説する。
なぜ、成功体験は役立たないのか?
その答えは、成功体験で培ったノウハウは、周囲の環境変化によって簡単に陳腐化し、場合によっては全く通用しなくなるからだ。
例えば、流行に乗って一時は成功を収めたレストランであっても、顧客の嗜好や世間の好みの変化によって、成功体験が長続きしないことは良くあることだ。
大きな成功を勝ち取っている経営者ほど、成功体験は役立たない、成功体験はすぐに捨て去れ、成功体験にしがみつくな、など等、成功体験の無意味さを口を揃えて語っている。
成功体験が陳腐化する環境の変化は様々あるが、代表的な例を詳しく解説する。
顧客の変化は、成功体験が陳腐化する最大の脅威といって過言ではない。なぜなら、商品やサービスの購入権はすべて顧客が握っているからだ。顧客がそっぽを向いたら成功体験はあっという間に破たんする。また、顧客は流行や廃れのコントロールにも深く関わっているので、顧客の変化ほど成功体験を陳腐化させる要因はない。
一度大きな成功体験をすると、油断や驕りを生み出し、それがきっかけで企業が衰退することが往々にしてある。事実、わたしが過去に企業再建で関わった倒産の危機に瀕した会社は、すべて過去に儲かっている時期があり、それぞれに成功体験を持っていた。自分自身の変化、つまり、自壊も成功体験を陳腐化させる大きな要因になる。
ライバルの変化も、成功体験を陳腐化させる脅威になる。なぜなら、最新の技術や新しい価値観を持った商品やサービスを投入されてしまうと、過去の成功体験がすべて無に帰してしまうことがあり得るからだ。
経済環境の変化も、成功体験を陳腐化させる脅威になる。例えば、景気の変化や法律の改定などは、過去の成功体験を陳腐化させる脅威になり得る。景気悪化や規制緩和によって業績が低迷する会社などは、経済環境の変化によって、過去の成功体験が陳腐化した典型例である。
なぜ、失敗体験は役立つのか?
その答えは、小さな失敗体験を見逃すことなく真摯な姿勢で改善し続けていると、いつしか大きな成功体験に繋がるノウハウが形成されるからだ。
失敗体験を成功に繋げるには、失敗を極力小さくとどめることと、小さな失敗を見逃さず改善し続けること、が欠かせない。
当然ながら、大きく失敗するまで何も手を打たない、或いは、失敗を失敗のまま放置する、といった行動では、失敗体験が成功体験に転換されることはない。
変化を先取りし、小さな失敗体験から成功のヒントを学び、失敗体験を改善し続ける努力が大きな成功を生み出すのだ。
成功は成功を生み、一度成功した人は更なる大きな成功を手に入れるという云われもあるが、すべては幻想である。
すべての成功体験は、数多くの失敗体験と不屈の努力から生まれる。失敗体験が、成功体験を生み出す源泉になるのだ。
成功は偶然の産物、失敗は必然の産物である。
つまり、成功には再現性がなくコントロール不能な要素が多く、失敗には再現性がありコントロール可能な要素が多い、ということだ。
約三百年に亘り天下を治めた徳川幕府を開いた徳川家康は、織田信長、豊臣秀吉等々、時代を共にした武将の失敗体験を徹底的に分析し、成功体験の礎を築いた。
会社経営も同様、日頃から失敗体験を徹底的に分析し、失敗をコントロールしながら成功体験の礎を築くのが、成功の正攻法になる。ビジネスにおいては、失敗が成功のもとになるのだ。