コストコントロールは、会社経営の基本である。
ライバル企業よりも少ないコストで商品やサービスを提供できれば、競争の優位性を確保することができるからだ。
また、低コスト体制で高付加価値商品を提供することができれば、ライバル企業よりも大きな利益が獲得できるので、コストコントロールは収益性を高める効果もある。
コストコントロールの基本手法は、上位コストをしっかりコントロール(管理・分析・削減)することだ。
殆どの会社は人件費が1位になり、2位以下のコストは会社や業界によって変わる。
例えば、小売業であれば仕入、水道光熱費、地代家賃、建物修繕費、販売促進費などのコストが上位にくる。旅館業は、温泉使用料、水道光熱費、燃料費などのコストが上位にくる。製造業であれば、材料費、労務費、製造経費の原価コストが上位にくる。
また、周囲との交流が好きな経営者は、旅費交通費、接待交際費、福利厚生費、会議費などのコストが上位にくる。社員教育や勉強好きな経営者は、研修費、研究開発費、支払手数料などのコストが上位にくる。
このように、上位のコスト構造には、その会社の特徴や経営者の癖が如実に表れる。
上位コストを競合よりも低くコントロールする、或いは、上位コストを使いすぎない意識を強く持つことが、競合よりも優位なコスト構造を確立する秘訣になる。
逆に、この部分に対するコストコントロールの意識が低下すると、必ず会社経営に失敗する。事実、衰退する会社ほど、コストコントロールが杜撰だ。
会社のコストを上手にコントロールするうえで、成長投資の源泉になる減価償却費をしっかりコントロールすることも大切だ。
減価償却費は現金流出が伴わない特殊経費なので、減価償却分の経費は現金としてそっくりそのまま会社に残る。
ストックした現金をうまく成長投資に振り向けるスパイラルを作るには、減価償却を起点とした成長投資、利益創出、新規借入、借入返済などのコストコントロールが欠かせない。
減価償却を理解している経営者ほど、このコストコントロールが巧みで、ストックした現金をうまく成長投資に振り向け、大きなキャッシュフローを生み出すスパイラルを上手に作り出している。
逆に、減価償却の理解が浅い経営者は、このコストコントロールが苦手で、成長投資に失敗したり、借入返済に窮したり、会社の成長が鈍化するきっかけを作りがちだ。
減価償却はコストコントロールの肝であり、会社の盛衰を決定づける要素でもある。
特に、減価償却資産が多い資本集約型の会社(主に製造業や装置産業)は、減価償却費のコントロール次第で会社の成長が決まるので十分に意識してほしい。