
先般、中小企業向けの某経営コンサルティング会社が負債総額30億円弱を抱えて自己破産した。
この経営コンサル会社の業務内容は、M&A、事業継承、企業買収、企業評価・デューデリジェンス業務等で、日本全国を営業エリアとして自社開催のセミナーで集客するビジネスモデルだった。
経営コンサル会社が倒産だなんて、何ともシャレにならないと感じた方もいると思うが、コンサル会社も色々だ。この記事では、経営コンサルの失敗しない選び方について、詳しく解説する。

中企業向けのコンサル会社は意外と沢山あるが、そのビジネスモデルは、大きく三つに分類することができる。
1.アドバイス型
2.ノウハウ提供型
3.社長コンサル型
それぞれのコンサル型(ビジネスモデル、スタイル等)のメリットとデメリットについて以下の通り、詳しく解説する。

アドバイス型のコンサルは、冒頭の倒産会社のように、相続、節税、診断、事業承継、デジタル化等の一部の経営業務のアドバイスに特化して手数料を徴収するビジネスモデルが一般的だ。
売上拡大、資金調達、IT戦略、販促戦略、マーケティング、コスト最適化等の部分コンサルも含まれるが、このコンサルは事業の一部分のアドバイザーを主業務としているので、厳密にいうと経営コンサルとは言えない。
社長業ではなく、あくまで業務の部分最適化が主目的なので、全体業績を改善するためではなく、部分的な悩みや課題を解消する手立てとして有効活用できる。
部分コンサルが得意な専門家だけでなく、弁護士や税理士等の士業もこの分野に該当するので、特に専門性を求められるコンサル業務に関しては、積極的に活用する事をお薦めする。

ノウハウ提供型のコンサルは、経営ノウハウをパターン化して、経営塾やセミナー、或いは、経営者コミュニティーを提供し、経営スキルの習得をサポートするビジネスモデルが一般的だ。
このコンサルも経営コンサルとは言えない。なぜなら、会社の業績改善を経営者に丸投げする形態になっているからだ。参加した経営者は一時的に満足するかも知れないが、自分の会社経営に役立つスキルに巡り合うことは極めて稀だ。
なかには成功する経営者もいるかも知れないが、そもそも才能があったか、事業環境が見事にマッチしていたかのどちらかの理由によるところが大きいと思う。
ピンポイントで活用するメリットはあるが、自己満足に陥り易いデメリットがあるので注意が必要だ。また、一定の型にハメられて社長本来の素質や才能を潰される恐れもある。高額報酬で失敗するパターンもじつに多い。

社長コンサル型のコンサルは、
経営者と共に、企業の繁栄のために業績改善を推進するビジネスモデルで、これこそが本来の経営コンサルの姿と言える。
このモデルを生涯貫いたのは、経営コンサルタントの第一人者であり、現代経営学や経営マネジメントの発明者である「ピーター・F・ドラッカー(1909-2005年)」だ。
ドラッカーは、GEやP&Gといった世界的企業から地域密着型の慈善団体の経営コンサルまで、幅広いジャンルの経営をサポートしたことで知られているが、生涯、どの組織にも属さず、経営者とマンツーマンのスタイルでの経営コンサルティングを貫き通した。
経営コンサルの依頼電話もドラッカー自身が対応し、面談の調整も本人がしていたらしい。経営コンサルは企業のトップに寄り添い、高い専門性を発揮しなければならない仕事なので、ドラッカーの経営コンサルスタイルは理にかなっており、わたし自身も、ドラッカーの経営コンサルスタイルを踏襲している。

経営コンサル会社と一括りに言っても、
ビジネスモデルやコンサルティングのスタイルは多種多様にある。
従って、コンサル活用の目的が不透明だと、高い確率で経営コンサル選びに失敗する。
例えば、色んな専門家のアドバイスを聞いてはいるものの、会社の業績が一向に伸びない会社は失敗パターンにハマった典型といえる。
会社の成長を加速するために専門家を頼ることはじつに有効だが、大切なことは「どの専門家を頼るか」である。
そのために重要なのは、悩みや課題の本質を誤らないことだ。悩みと課題の本質さえ捉えることができれば、きっと良い専門家と巡り合えるはずだ。
(この記事は2019年5月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」