コスト削減の原理原則|コストカットの意味・方法・効果・メリット

 

中小企業に限らず、コスト削減はすべての企業にとって極めて重要な活動になる。

 

なぜなら、コスト削減の手を緩めると、提供商品やサービスの原価が高まり、ライバルに勝てなくなるからだ。

 

この記事では、中小企業にとってのコスト削減の重要な理由、並びに、コスト削減の意味・目的・方法・効果・メリット等について、詳しく解説する。

 

 

コストダウンの目的・意味・効果・メリット

 

コスト削減に悩む中小企業はじつに多いが、コスト削減の目的は、競争優位性の向上にある。

 

ライバルよりも少ないコストでより良い商品やサービスを提供し、ライバルとの競争に勝つために、一所懸命、コストを削減するわけだ。

 

それでは、コスト削減の本質はどこにあるのか。どこを目指して、何を基軸にコスト削減を進めれば良いのか。

 

コスト削減の本質は、コストの使い方の最適化にある。

 

コストは売上を上げるために費やす経費なので、コストの使い方が上手になれば、企業の付加価値や競争優位性が高まり、売上と利益が効率よく増えるスパイラルが回り始めるからだ。

 

だからコストをどう削り、コストの使い方をいかにして最適化するかという課題にみんな真剣に向き合っているのだ。

 

当然ながら、この課題から目を背ける企業は簡単に衰退する。

 

例えば、売上1億円、コスト1億円、利益0円の、表面上、まったく同じ成績の会社が二つあったとする。

 

一方は、1億円の売上を作るためだけに1億円のコストを消費し、もう一方は、1億円の売上を作るために1億円の90%のコストを消費し、残り10%のコストは成長投資に消費している。

 

この2社を比べた場合、将来繁栄するのは、後者の会社だ。

 

今は利益が出ていないが、コストの使い方が上手なので、次第に企業の付加価値や競争優位性が高まり、売上と利益が効率よく増えるスパイラルが回り始めるからだ。

 

 

コスト削減の流れと正攻法

 

コスト削減の効果的な方法について、大まかな流れと正攻法について、詳しく解説する。

 

コスト削減は、だれが、いつ、なにを、の3W(who・when・What)を明快にすれば、コストダウンの効果が高まるので、しっかり抑えて欲しい。

 

まず、中小企業のコスト削減を進める場合は、社長が中心となって、今すぐ、売上とコストの年計を集計することから始めると良い。

 

年間の売上とコストの関係性が明快になったら、あとは上位コスト(トップ5)を特定し、創意工夫でその上位コストを削減する。

 

上位コストには、その企業、業界、経営者の癖が如実に出るので、この上位コストを削減するほど、ライバルに勝ちやすくなる。

 

なお、社長が数字に苦手な場合は、数字の得意な社員や顧問税理士の協力を得ても良い。

 

ちなみに、売上とコストの年計は、直近12ヶ月分の数字を合計するだけなので、簡単に計算できる。

 

例えば、1月末時点の年計は、昨年2月から直近1月までの12ヶ月間の数字を合計すると計算できる。季節性や一過性のコストノイズが全て除去されるので、売上とコストの関係性の精度がグッと高まる。

 

そもそも、企業は1年間という期間単位でしか評価されないので、1年間の売上に対して、どのようなコストを使っているのかを測定し、理解することが極めて重要になる。

 

この他にも、中小企業がメスを入れやすいコスト削減の対象を挙げると、固定費であれば、地代家賃、人件費、通信費、保険料、諸会費など、変動費であれば、接待交際費、研修費、通信費、水道光熱費、広告宣伝費、消耗品費などがある。

 

 

コスト削減で抑えるべき重要ポイント

 

コスト削減を進めるうえで抑えるべき重要なポイントについて、詳しく解説する。

 

まず、殆どの会社にとって、コストの大部分を占める人件費を削るために、社員の給与を減らすことは止めた方が良い。

 

業績が悪くても支払い続けるのが給料の本質なので、給料を下手に減額するとモチベーションを下げるきっかけを作りかねないからだ。

 

ボーナスは業績連動でも差し支えないが、給料は相場よりも少し上を目指して支払う努力が正攻法になる。

 

また、多くの中小企業は、もともとギリギリのコストで事業運営しているケースが多いので、金額ベースのコスト削減にこだわらない方が良い(むしろ多少のゆとりはあった方が良い)。

 

それよりも、最新の技術やノウハウを積極的に取り込んで、生産性をどんどん改善することを推奨する。

 

世の中が進歩すれば、生産性改善のアイデアが生まれるので、コスト削減の種は無限に生まれる。

 

そして、大切なことは、変化を拒んだり、常識に捕らわれたりしないことだ。元気な会社ほど変化を受け入れ、新しい常識を生み出している。

 

 

コスト削減と同時並行で行うべきこと

 

コスト削減と同時並行で最も行うべきことは、コストを賄う粗利額を増やす取り組みだ。

 

例えば、不採算の売上を捨てれば、粗利を減らすことなく、経費だけ減らすことができるので、手元に残る利益が大きくなる。

 

あるいは、不採算の売上を値上げすることも有効だ。値上げする際は、赤字原価を公開し、真摯に丁寧に交渉するのが良い。

 

原価を公開する覚悟を持てば、原価を下げる努力が自然と働く。先方も、相当な企業努力の末の原価を見せられれば、値上げに同意し易くなる。

 

経営は情と理のバランスが大切だが、値上げ交渉はまさに情と理の見せ所といえる。

 

また、コスト削減でねん出した利益は、企業の強みを磨く成長投資に積極投入した方が良い。

 

強みが強くなれば、コストを賄う粗利額が大きくなるので、コスト吸収力の強い企業体質に変貌する。

 

さらに、コストゼロで行える、礼儀、挨拶、笑顔、やる気、前向きな言動などをしっかり定着させることも大切になる。業績の良い会社ほど、しっかり定着させている。

 

 

悪影響を与える間違ったコスト削減の例

 

会社経営に悪影響を与える間違ったコスト削減の例について、詳しく解説する。

 

商品の品質悪化や顧客サービスの低下を招くコスト削減、社員の安心安全を損なうコスト削減は、コスト削減が衰退リスクを引き上げる典型なので絶対にしない方が良い。

 

顧客と社員の満足度に関わりのない部分のコストを徹底的にゼロにする意識も大切で、具体的には、経営者の自己満足・無駄な節税・企業成長に関わりのない投資は避けた方が良い。

 

例えば、用途不明の土地建物、1~2年以内に回収できない事業投資、本業と関係ない事業展開等へのコスト消費はお薦めしない。

 

 

コスト削減の結果判定の基準と方法

 

コスト削減の結果は必ず、顧客・社員・数字のどこかに出る。

 

例えば、コスト削減した後に、顧客や社員から不満が出る、数字が悪化する等の症状が出た場合は、コスト削減がマイナスリスクを引き起こしていると言える。

 

従って、コスト削減の前にマイナスリスクが予想される場合は、コスト削減の方法をしっかり再考した方が良い。

 

コスト削減の方法を入念に検討した末の結果判定は、マイナスリスクが出ない場合(顧客や社員が満足・数字が好調)はコスト削減成功と考え、

 

マイナスリスクが出た場合(顧客や社員が不満足・数字が悪化)は、コスト削減失敗と考え、即刻、元に戻すのが良いだろう。

 

コスト削減の事例紹介

過去3年間、コスト水準が横ばい(5億円弱)の会社で、コスト削減を進めた結果、1年でコスト15%削減を達成した事例がある。もちろん、前年と同額の粗利もキープできている。コスト削減は、即利益アップに繋がるので、経営基盤が一段も二段も強固になった

 

 

中小企業がすぐに実施できるコスト削減方法

 

最後に、中小企業がすぐに実施できるコスト削減の方法について、詳しく解説する。

 

削減の対象は、どの会社でもかかると思われる人件費、固定費、変動費、惰性コスト、業務コストに焦点を当てている。

 

人件費

人件費の削減は、人を育てる、生産性を上げる、この二つの施策が正攻法になる。人を育てる施策は、社員満足度追求、教育促進、現場主義、定着率upの施策、ノルマや枠にはめない等がある。生産性を上げる施策は、顧客目線、利益意識、情報共有、情報発信、自動化、デジタル化、縦割り排除、残業ゼロ、フラット化、多能化、管理外注、テレワーク等がある。

 

固定費削減

固定費の削減は、人件費、地代家賃、通信費などをターゲットにすると良い。人件費の削減方法は前記した通り。地代家賃の削減方法は、都心や一等地回避、小規模化、シンプル化などがある。通信費の削減方法は固定から携帯へ、FAX・郵便からメール・デジタル化へ等の施策がある(通信費は変動費の性格もある)

 

変動費削減

変動費の削減は、水道光熱費、研修教育費、旅費交通費、広告宣伝費、消耗品費などをターゲットにすると良い。水道光熱費の削減方法は、自動化、省エネ化等、研修教育費の削減方法は、教育のデジタル活用,教育ツール充実,社内教育等、旅費交通費の削減方法は、webやデジタル活用で出張を削減する、広告宣伝費の削減方法は、自社メディアの運用、SNSの活用等、消耗品費の削減方法は、小ロット化、共有化、シンプル化などが効果的だ。

 

惰性コスト削減

惰性コストの削減は、接待交際費、保険料、諸会費などをターゲットにすると良い。何れの経費も、売上に貢献しているか否かを、年に一回は棚卸することをお薦めする。

 

業務コスト削減

業務コストの削減は、部門単位の情報共有(顧客・進捗・戦力・数字等)と部門を超えた情報共有(方針・役割・目的等)、IT化、web化、デジタル化、クラウド化、ペーパーレス化、最新の技術やノウハウを積極的に取り込む(このスピードで繁栄が決まる)、ムダムラをなくすための5S徹底〔整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)、経営力を高めるために社長のマネジメント力・リーダーシップ力・ヒューマンスキルを磨く、右腕の育成、ブレーンの活用などが有効だ。