新規事業のアイデアは会社成長の源泉になる。
一方で、新規事業は、アイデアを誤ると簡単に会社が衰退する。
この記事では、新規事業の成功アイデアの作り方について詳しく解説する。
新規事業のアイデアを生み出さなければ、会社の更なる成長はあり得ない。
しかし、新規事業のアイデアには、会社衰退という副作用が常に潜んでいることを忘れてはならない。
事実、新規事業の失敗で衰退の一途を辿った中小企業は少なくない。
新規事業の成功アイデアの作り方は、事業を成立させている要素を理解すると見えてくる。
全ての事業は2つの要素で成り立っている。
ひとつは「市場(顧客)」、もう一つは「商品(サービス)」である。
当然ながら、市場と商品の一方が欠けると、事業は成り立たない。
新規事業の成功アイデアを作るには、まず第一に、現在保有している市場と商品の付加価値を高める必要がある。
付加価値とは、端的に、オンリーワン市場のことで、例えば、事業を長く続けていると、自社が保有する市場と商品に独自性(オリジナリティー)が生まれてくる。
市場の独自性が高まれば、「ここで買いたい」というファンが増え、商品の独自性が高まれば、「これが買いたい」というオンリーワンの要素が濃くなる。
そして、市場と商品、双方の独自性が高まると、オンリーワン市場が強固なものになる。
兎に角、新規事業のアイデア作りに着手する前に、まずは会社の本業をオンリーワン市場(規模は小さくてよい)に育て上げることが不可欠になる。
新規事業の成功アイデア作りに、本業の市場と商品の独自ノウハウが深く関わってくるからだ。
新規事業の成功アイデアの作り方について解説する。
事業は、市場と商品のふたつの要素で成り立っていること、そして、新規事業のアイデア作りに本業の市場と商品の独自ノウハウを活用することは前章でお伝えした通りだが、重要なのはココからになる。
本業の独自ノウハウは「市場ノウハウ」、或いは、「商品ノウハウ」に分類し、新規事業の成功アイデア作りに利用する。
例えば、「本業の市場に全く新しい商品を投入する」、或いは、「本業の商品を全く新しい市場に投入する」というように、「本業ノウハウ×新規(市場・商品)」の掛け合わせが、成功アイデアを生み出す秘訣になる。
何故、本業ノウハウの一方を利用するのかというと、独自性が高まった本業ノウハウは、プロの領域に達しているからだ。
どちらか一方がプロの領域に達していれば、成功の確率は五分五分になる。
もしも、市場と商品の両方が全く未知の分野、つまり完全に素人分野の市場と商品の掛け合わせで新規事業のアイデアを考えると、成功の確率は限りなくゼロに近づく。
市場も商品も共に素人分野の新規事業アイデアが成功するはずがない。
素人分野は、資本力が乏しい中小企業が最も手を出してはならないアイデアであり、むしろ、失敗しか道がないといったアイデアしか生み出さない危険な分野になる。
なお、「本業ノウハウ×新規(市場・商品)」の掛け合わせは、新規事業の成功アイデアを生み出す秘訣ではあるが、成功確率は五分五分なので、成功の確率を上げるための綿密な仮説と検証を決して疎かにしてはならない。
新規事業アイデアの成功事例をひとつ紹介する。
アスクル株式会社(以下、アスクル)の新規事業アイデアの事例である。
アスクルは1963年に創業した文具等製造販売メーカーで、元々は、文具等を製造して、街の文房具店に販売していた会社だ。
1990年代にインターネットが普及すると、本業の延長で「アスクル」という新規事業アイデアを立ち上げた。
法人や個人がカタログやインターネットで文具等を注文すると翌日に商品が手元に届くというサービスだ。
この新規事業は、本業の商品とカタログ・ネット販売という新しい市場との掛け合わせで誕生した新規事業アイデアになる。
本業の商品を新しい市場に投入することで、小売店の店頭販売しかなかった当初の市場規模が一気に拡大したのは言うまでもない。
アスクルの新規事業アイデアの躍進はこれで終わらない。
次なる新規事業アイデアは、本業の市場と文具以外の日用品等という新しい商品との掛け合わせで誕生した。
つまり、本業の市場に、全く新しい商品を投入したのだ。
結果はご存知の通り、文具以外の日用品、印刷物、電気工事やリフォーム事業、など等、アスクル事業に新しい事業分野が次々と誕生していった。
現在は、法人個人問わず、オフィスや生活に関わるあらゆる商品やサービスを翌日に提供する多角事業に成長している。
(この記事は2016年6月に執筆・掲載しました)
新しいビジネスは会社の成長に不可欠です。しかし、新規事業アイデアの作り方を誤ると、かえって衰退リスクが高まることもあり得ます。重要なのは本業をしっかり育てることです。そうすれば、本業の市場か商品の何れかに新しいアイデアを掛け合わせた派生ビジネスの展開が容易になります。