2020年2月11日
日本のプロ野球界で選手・監督として活躍した野村克也さんが逝去した。
野村克也監督は野球人という枠を超えて、多くの人間、とりわけ経済人や角界のリーダー達に大きな影響を与えた。
わたしも影響を受けた一人だが、この記事では、野村克也監督から学べる経営理論やリーダー像について、詳しく解説する。
野村監督の野球理論は、会社経営に置き換えても通用することが多く、わたし自身、とても尊敬していた。
自分の著書(小さな会社の安定経営の教科書)の前書き部分に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けあり」という野村監督が好んで引用していた失敗の理を掲載したほどリスペクトしていた。
失敗と書いて「せいちょう」と読むという語録も残っている通り、とにかく失敗に焦点を当てて、成功の礎を作るアプローチは大いに共感できた。
ユニクロ創業者の柳井氏は事業の勝率は1割程度。大切なのは9割の失敗から何を学ぶかだ、ということを云っているが、このことからも、野村監督の失敗から徹底して学ぶ姿勢が会社経営に大いに実践できることが分かると思う。
野村監督といえば「ID野球」が有名だ。
頭を使えば勝てる、ということだが、この理論は、当時弱小チームだったヤクルトをリーグ優勝4回、日本一3回というチーム黄金期を支えた。
この「頭を使えば勝てる」という理論も私は大好きだった。
中小企業は資金も人財もナイナイ尽くしも珍しくない。最初の資金調達で躓いて、事業アイデアが実現できない場合もたくさんある。せっかく軌道に乗った事業が、大企業や経済の気まぐれで窮地に陥ることも多々ある。
とっても“か弱い”のが中小企業の実態だが、諦めたらそこで終わりだ。頭を使えば、絶対に活路は開けるものだ。出来ない理由を考えて思考を停止させるのではなく、できるにはどうしたら良いのかを考えること。そして、一歩ずつ成功に向かって歩むこと。
常に頭を使って会社経営を采配すれば自ずと勝てる道が見つかるので、中小企業にピッタリの考え方といえる。
一方で、野村監督は理屈だけの人間ではなかった。
時には非情な決断をするのが監督の仕事なので、監督時代は絶えず選手と距離を置いて、安易に慣れ合うことをしなかった。人間の感情の機敏を理解していた、ということだ。
また、豊かな感情表現をベースに選手の人間成長を後押しすることも実践していた。理屈ではなく、感情が部下を惹きつけることを熟知していたことが分かるが、この姿勢は、社長のあるべきリーダーシップ像でもある。
きっと、野村監督は会社経営者としても一流になっていたと思う。いまの不祥事続きの大企業の社長なんかをやらせても、上手に采配したに違いない…。
野村監督の教え子達の惜別の言葉を一部抜粋する。
「今でも野村さんの考えには影響を受けていますし、正しいと思っている。これを継承して次の世代に伝えていくのが僕たちの仕事だと思う。」
「一から十までプロ野球の難しさ、厳しさを教わった。監督姿を見てもらいたかったですし、またボヤいてほしかった。教わることはたくさんあった。」
「プロ入り一年目で野村監督と出会い、ご指導いただいたことは、僕の野球人生における最大の幸運のひとつです。どんなに感謝してもしきれません。」
お金を残して死ぬのは下。
事業を残して死ぬのは中。
人財を残して死ぬのが上。
関東大震災の復興立役者である後藤新平の言葉だが、野村監督はたくさんの人財を残してくれた。
本当に素晴らしい人間であり、素晴らしい人生だったと思う。
野村克也監督、本当にありがとうござます。
心よりご冥福をお祈りいたします。
合掌 2020.2.11
ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社
代表取締役社長 伊藤敏克