経営リスクとは?社長のリスクマネジメントが企業の繁栄を築く


経営リスクとは、企業の事業活動に支障をきたすリスクのことだ。


経営リスクは、内部環境と外部環境の変化に伴い生じるが、リスクを放置するほど対処の難易度が上がり、企業の繁栄を阻む大きな障害になる。


この記事では、経営リスクとは何か、社長の経営リスクマネジメントの要点について、詳しく解説する。



経営リスクとは?


経営リスクとは、企業の事業活動に支障をきたすリスクのことだ。


なかでも、会社を取り巻く経済環境は、事業活動の成果に大きな影響を及ぼす。


経済が好調であれば、追い風の中でビジネスが展開できるので、少しの企業努力で商品やサービスが売れたり、新しい社員や顧客が集まったり、経営資源の価値が拡大したり、さほどの苦労なく、ビジネスの成果を上げることができる。


一方、経済が不調に陥ると、向かい風の中でのビジネスを強いられるので、商品やサービスを売るにも、新しい社員や顧客を集めるにも、経営資源の価値を上げるにも、相当な苦労が伴い、ビジネスの成果を出すことも容易ではなくなる。


日々磨き上げた経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー等)の価値を守り続けるには、できる限り、経済不況を遠ざける工夫が必要だ。


そのために必要なことは、経済に悪影響を及ぼす経営リスクをしっかり抑えることだ。


特に抑えるべきは、公共投資、軍事衝突、環境問題、エネルギー問題の4つのリスクだ。それぞれの経営リスクについて、以下順番に詳しく解説する。


経営リスク1|公的投資


日本国内の人口は、減少の一途を辿る。


公的投資は誰も使わなくなれば終わりなので、人口減少と共に縮小し続ける。


役所の統廃合、行政再編、行政サービスの縮小が進み、国や地方自治体の管轄下にある公共事業や公益サービスも縮小する。


と同時に、これらに付随する民間ビジネスも縮小する。


国家予算の配分も減少するので、受託事業の単価はなかなか上がらない。補助金や助成金もどんどん無くなくなる。


つまり、公的投資に頼っている会社ほど、構造的不況に陥る経営リスクがある。


当然、販路開拓、外貨獲得、ビジネスモデルの転換など、ビジネスの仕組みを再構築しない限り、経営リスクを払しょくし、構造的不況から脱することはできない。


経営リスク2|軍事衝突


軍事衝突が少ない平和な時代は、世界各国の土地、資源、技術、労働力、マネー、テクノロジーなどがグローバルに展開されるので、経済はすごく安定する。


しかし、ひとたびどこかで軍事衝突が勃発すると、この安定は一気に崩れ去る。


地球の東西で分かれたり、民主国家と共産国家で分かれたり、資本主義と社会主義で分かれたり、同盟国と非同盟国で分かれたり、


経済の安定を支える大本の繋がりに分断が生じ、経済活動に大きな影響を及ぼす。


例えば、軍事衝突に伴う販路縮小、事業撤退、部品不足、為替乱高下、原材料高騰、輸出入規制、入出国規制などの弊害は典型だ。


この先、外貨獲得や外国人労働者の活用など、諸外国との繋がりが一段と身近になるので、しっかり注視したい経営リスクだ。


経営リスク3|環境問題


地球の自然環境は極めて繊細な仕組みのうえに成り立っているが、今の資本主義経済はそれを完全に無視して突き進んでいる。


人間中心の経済活動の範囲が拡大するほど、その経済活動のスピードが加速するほど、自然環境は破壊される。


気候変動、自然災害、海洋汚染、生態系破壊、地球温暖化、化学物質や有害廃棄物の越境移動、宇宙ゴミの山積、生物多様性の減少、鉱物資源の減少、森林破壊に伴う酸性雨や砂漠化など、


環境破壊の症状は様々だが、人々の生活や生命に脅威を与えるレベルまで環境破壊が進むと、その分野に関わる全てのビジネスは非難の対象になる。


場合によっては、お客様の不買運動や取引先や協力会社のボイコットを招き、ビジネスが破綻することもあり得る。


また、環境破壊が進むことで、ビジネスそのものが消滅することも起こり得る。


生態系や生育環境が壊れることで、農作物や海産物の収穫量が激減するケースは典型だ。


この先も、環境問題はビジネスの存続を大きく左右する経営リスクであり続けるだろう。


経営リスク4|エネルギー問題


エネルギーは経済成長の重要なピースだが、日本のエネルギー自給率はわずか10%程度だ。


さらに、エネルギー源の8割を占める化石燃料は、ほぼ輸入に頼っている(2022年・経済産業省資源エネルギー庁調べ)。


石炭、原油、天然ガス等の化石燃料はいずれ枯渇する資源であり、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出するため、今後の使用量は世界全体で減少する見通しだ。


当然、資源が希少になれば、電力コストは上昇し、その影響は全産業に及ぶ。


また、化石燃料を主なエネルギー源としている発電業界、自動車業界、プラスチック業界等は、ビジネスの大転換を求められるだろう。


昨今は、世界規模で化石燃料から電気へのエネルギーシフトが進んでいるが、日本国内においては、すべての電力需要を満たせるだけの発電を化石燃料なしで実現できるかは不明だ。


再生エネルギーは国土が狭い日本では限界があるし、原子力発電は使用済み核燃料の処理に莫大な時間・国土・エネルギーを浪費するだけでなく、大地震のリスクもあるので、増設のハードルが高い。


エネルギー源を電気に統一したとしても、電力不足という新たなエネルギー問題が生まれるだけで、根本解決には至らないのが現状だ。


さらに、電力不足は、AI(人工知能)、ブロックチェーン、ビックデータのマイニング(データ採掘)等の先端テクノロジーにも影響を及ぼす。


これらの技術は、稼働時に莫大な電力を消費するので、電力がひっ迫すると、機能不全に陥る可能性がある。


世界各国のテック企業や有力投資家たちは、こうした状況を見越してか核融合発電に巨額の投資を行っている。


核融合発電とは、ウランやプルトニウムなどの危険な放射性物質を使わずに、水素やヘリウムといった、地球上に広く存在する物質を利用した発電方法だ。


資源枯渇の心配がなく、核分裂で起こる連鎖反応がないので、放射線事故のような深刻な事態が起こる可能性がないとされている。


この他にも、地熱発電や蓄電技術と再生エネルギーを組み合わせた電力インフラも注目を集めているが、何れにしろ、エネルギー問題は、人々の日常生活だけでなく、経済の好不調に直結する極めて重大な経営リスクだ。


リスクマネジメントが繁栄を築く


以上、経済に悪影響を及ぼす経営リスクとして、公的投資、軍事衝突、環境問題、エネルギー問題について解説した。


何れのリスクも放置するほど危険度が増す。また、ひとつのリスクが他のリスクに波及して、経済への悪影響が増幅することも起こり得る。


リスクは、小さなうちに解消するのが正攻法だ。


ひとたび経済不況に陥ると、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー等)の価値が加速度的に減少し、経営破綻の危険度が増すので、リスクを見つけたらすぐに行動しよう。


なお、これらのリスクを避ける努力は、会社繁栄のチャンスを大きくする。


例えば、公的投資に頼らない会社経営、公的投資の費用対効果を高める提案、軍事衝突のリスクを小さくするサプライチェーンマネジメント、環境問題やエネルギー問題を解決するソリューションの提供など、


経済に悪影響を及ぼす経営リスクを回避する努力は、繁栄のチャンスを引き寄せ、事業の永続性を高める。


また、ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー等の経営資源の最適化も、こうしたリスクを抑えながら推進すると、どんな時代にも耐えうる資源価値に磨きあがる。


つまり、経済に悪影響を及ぼす経営リスクを解消する企業は、いつまでも経済をけん引する主役でいられる、ということだ。


まずは経済に悪影響を及ぼす4つの経営リスク(公共投資、軍事衝突、環境問題、エネルギー問題)を、しっかり分析しよう。


将来リスクが大きく、確実性の高いリスクが見つかった場合は、早急に対応しよう。将来リスクは小さいが、確実性が高い課題は、対策を用意しよう。


課題やリスクをスピーディーに解決するほど、事業の永続性は高まる。また、経営資源の最大価値も守られる。


なお、今の時代は、公共投資、軍事衝突、環境問題、エネルギー問題がマイナスリスクになっているが、経済環境が変われば、リスクそのものが無くなることもあり得る。


経済を取り巻く環境は絶えず変化するので、経営リスクの分析は定期的に行うことをお薦めする。


(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)


筆者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」