
大企業は、中小企業が得意とするニッチ市場に参入してくることはない。
なぜなら、大企業と中小企業、双方の事業方針と得意とする市場ニーズには大きな違いがあるからだ。
この記事では、大企業がニッチ市場に参入しない理由、並びに、中小企業が勝てる市場戦略の本質について詳しく解説する。

大企業と中小企業、
双方の事業方針と得意とする市場ニーズには大きな違いがあるので、大企業はニッチ市場に参入することはない。
例えば、手作りと機械作りの食事をテーブルに並べて、どちらを食べたいかと問われれば、大多数の人は手作りを選択するだろう。
限られた顧客で形成されているニッチ市場で勝負している中小企業であれば、相応の製造体制を整えて、手作りの食事を提供することができるだろう。
一方、不特定多数で形成されているメジャー市場で勝負している大企業は、製造体制の無人化(機械化)が進んでいるために、手作りの食事を提供することはできない。
顧客ニーズが「手作り」にあるので、中小企業のニッチ市場が拡大しそうなものだが、実際に、ニッチ市場が拡大することはない。
なぜなら、市場への供給能力に限界があるからだ。
当然、市場への供給能力に限界があると、それ以上の市場拡大は望めない。
一方の大企業は、大量生産の仕組みが構築されているために、市場への供給能力が極めて高い。
手作りよりは品質が劣るかも知れないが、市場に商品を大量供給できるので、市場拡大の余地があり、軌道に乗ればメジャー市場にまで成長することもあり得る。
このように、大企業と中小企業は、事業基盤の違いから、それぞれが相反する事業方針と市場ニーズを形成することになるのだ。

大企業と中小企業の
事業方針と市場ニーズ等の主な違いを比較すると下表の通りになる。
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大企業 |
大量生産、半加工品の集合体で生産、材料と商品が均一的、一定水準の品質維持、品質維持は化学力と文明力でカバー、効率的な機械生産、など |
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中小企業 |
少量生産、一から生産、材料が非均一的、常に高い品質を追求、品質維持は工夫力(非化学・非文明)でカバー、機械生産の品質を超える手作業生産(職人体制・独自ノウハウ)、など |
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大企業 |
市場規模が大きい、メジャー市場、いつでもどこでも、便利で簡便(すぐ完成)、安価、社会的影響力が大きい、多数派(マジョリティ)、文明的、など |
|---|---|
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中小企業 |
市場規模が小さい、ニッチ市場、こだわりを限られた場所で、比較的不便(ひと手間加えて完成)、比較的高価、社会的影響力が小さい、少数派(マイノリティ)、文化的、物事の本質に誠実、など |
ご覧の通り、大企業と中小企業を比較すると、事業方針と市場ニーズに大きな違いが生まれる。
例えば、街角の片隅で小さく営業している本場イタリアンレストランの一流ピザ店と、日本全国の小売店等で購入できる冷凍ピザを展開している大企業を比べてみてほしい。双方が取るべき事業方針と市場ニーズの違いがよく分かるだろう。

中小企業は、大企業と同じ土俵のうえで競争しても勝てない。
中小企業が生き残るには、常に大企業と相反する市場形成を意識した経営を実践することが大切だ。
また、大企業の脅威から逃れ、尚且つ、中小企業同士の競争に勝つには、大企業と相反する市場形成を意識しつつ、常に優れた品質を追求し、独自のニッチ市場を形成しなければならない。
ニッチ市場の参入障壁は極めて高いが、参入障壁を乗り越えるための専門性(独自性)を磨くほど、そのハードルは低くなる。
また、高い専門性や独自性は、愚直に経営改善(経営課題の解消)を続けることで得られるので、常に改革改善を意識することも大切だ。
一度、ニッチ市場の参入障壁を乗り越えてしまえば、あらゆる面の競争優位性が高まるので、市場シェアの安定と共に、会社の収益力がグッと高まる。ニッチ市場の開拓は、大企業や競合他社の攻勢から身を守る有効な防御策(防御壁)になるので、中小企業の生きる道といっても過言ではない。

ニッチ市場を保有している中小企業が、
安易に市場規模の拡大に乗り出すと、圧倒的資本力で大企業に吸収されるリスクが高まる。
なぜなら、市場規模の拡大を推し進めると、事業方針や市場ニーズが大企業寄りになり、知らぬ間に大企業が競争相手になり得るからだ。
ニッチ市場は安定した売上と高い収益を会社にもたらすので、十分な資本力がない中小企業には最も適した市場だ。市場の拡大意欲は程々にして、身の丈に合ったニッチ市場を維持し続けることが、中小企業の安定経営のコツになる。
中小企業が闇雲に大企業に勝負を挑んでも負けるだけです。勝負に勝つには、大企業との差別化を徹底することです。差別化が明快になるほど市場が拡大します。この戦略が、小さな会社が大企業に勝つ正攻法になります。また、大企業に勝ったからといって安易に拡大経営に舵を切らないことも大切です。
(この記事は2016年7月に執筆掲載しました)