会社経営を支える投資戦略の考え方|成長投資の原則から回収基準まで徹底解説

会社経営を支える投資戦略の考え方|成長投資の原則から回収基準まで徹底解説

 

経営と投資は一心同体である。

 

なぜなら、会社の投資活動が、会社成長の原動力になるからだ。

 

会社経営において投資は欠かせない活動のひとつだが、資金の調達手段に限りがあり、資本力に乏しい中小企業の場合、積極的な投資が仇となり倒産の危機に陥る会社も少なくない。

 

この記事では、中小企業経営者が持つべき投資戦略の考え方、成長投資の原則、投資の回収基準に至るまで詳しく解説する。

 

 

投資戦略を誤るとどうなるのか?

 

投資戦略を誤ると、企業は衰退する。

 

資本力のない中小企業ほど、その影響は大きく、事実、多角化投資、広告投資、人材投資、設備投資、株式投資など等、投資戦略を誤って経営に失敗した中小企業の実例は数多にある。

 

投資に伴なう経営の失敗リスクを抑えつつ、効率の良い投資活動を展開するには、経営者自身がしっかりとした投資戦略と投資基準を持つことが大切だ。

 

当然ながら、投資戦略と投資基準が曖昧では、成功はおろか、失敗しか道がないといった状況に陥ることもある。

 

こうした失敗を回避し、投資戦略を成功させるには、第一に「キャッシュフロー重視の投資戦略」を理解することが欠かせない。

 

 

投資戦略を成功に導くキャッシュフローとは?

 

投資戦略を成功に導くキャッシュフローについて、詳しく解説する。

 

キャッシュフローとは、経営用語で「現金の流入と流出」を意味し、投資活動におけるキャッシュフローは「現金流出=投資に伴う現金支出」、「現金流入=投資の見返りである現金収入」を意味する。

 

現金の流入より流出が少ないと、キャッシュフローがプラスで黒字の投資、現金の流入より流出が多いと、キャッシュフローがマイナスで赤字の投資となる。

 

キャッシュフロー重視の投資戦略とは、キャッシュフローのプラス、つまり黒字を絶対的な投資基準に掲げて投資を展開することだ。

 

資本力の乏しい中小企業は、キャッシュフローを軽視した投資戦略がきっかけで経営に失敗する事例が多く、キャッシュフロー重視の戦略は、投資のみならず、会社経営の大原則といっても過言ではない。

 

 

キャッシュフローを重視した投資戦略の例

 

キャッシュフロー重視の投資戦略の例を解説する。

 

例えば、人件費が年間500万円かかっている製造ラインに、500万円の代替ロボット(機械)を導入すると、投資キャッシュフローは下表の通りになる。

 

キャッシュフロー重視

人件費

投資額

投資キャッシュフロー

購入前

500万円

0円

購入年

500万円

500万円

▲500万円

2年目

0円

0円

+500万円

3年目

0円

0円

+500万円

 

投資キャッシュフローは、投資2年目で±0円になり、3年目からは500万円のプラス(黒字)を生み出す。このプラスのキャッシュフローを次の投資に活かすことが出来れば、会社の利益はさらに拡大する。

 

つまり、キャッシュフロー重視の投資戦略を展開すると、会社の収益と純資産(利益の蓄積)の増加スピードが加速し、結果として、会社の成長を推進する短期継続的な投資活動を行うことが可能になるのだ。

 

このように、投資効率と資金効率を高めるキャッシュフロー重視の投資戦略は、中小企業の収益力を向上させる優れた経営戦略といえる。

 

一方、キャッシュフローを重視しない投資戦略を展開すると、どのような弊害が生じるのだろうか?

 

 

キャッシュフローを重視しない投資戦略の例

 

キャッシュフローを重視しない投資戦略の例を解説する。

 

例えば、先の例と同様に人件費が年間500万円かかっている製造ラインに、1,500万円の代替ロボット(機械)を導入すると、投資キャッシュフローは下表の通りになる。

 

キャッシュフロー軽視

人件費

投資額

投資キャッシュフロー

購入前

500万円

0円

購入年

500万円

1,500万円

▲1,500万円

2年目

0円

0円

▲1,000万円

3年目

0円

0円

▲500万円

 

ご覧の通り、投資から3年経過してもキャッシュフローがマイナス(赤字)で、しかも、初期投資の1,500万円を回収するのに4年もかかり、その間、会社の投資活動が停滞してしまう。

 

このように、キャッシュフローを重視しない投資戦略を展開すると、次の投資活動までの時間に大きな差が生じてしまう。

 

 

キャッシュフロー重視の投資戦略のポイント

 

キャッシュフローを重視した投資戦略とは、言い換えれば、「短期的に利益の出る投資活動を重視する」ということだ。

 

従って、次に挙げるような投資活動はすべきではない。

 

☑将来値上がりが期待できる資源への投資

 

☑資金回収まで2年超かかる投資

 

☑用途未定の土地建物

 

上記投資活動は、キャッシュフロー重視の投資戦略を優先するのであれば、会社としては見送った方が良い投資活動になる。

 

キャッシュフロー重視の投資戦略を展開していても、投資活動の方針が間違っていれば、投資が失敗に終わる可能性がある。

 

また、投資対象が中小企業の投資活動の基本である「ニッチ市場であること」、そして「既存事業の深掘りであること」も、重要な要素として忘れてはいけない。

 

伊藤のワンポイント
 

経営と投資は密接な関係にあります。成長投資なくして、会社の発展はないからです。成長投資の成功と失敗を分かつのは投資戦略の精度です。ですから、キャッシュフロー重視、投資方針、回収基準、投資原資等、投資戦略を左右する約束事はなるべく明確にしなければなりません。