リソース・ベースト・ビューとは、会社の内部に目を向けて、ライバルにはない強みを見出す分析手法である。
リソース・ベースト・ビューの対象となる企業内部の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)の中から、他にはない強みをピンポイントに発掘・研鑽し、その強みを起点に繫栄を加速する戦略が基本のアプローチになる。
この記事では、リソース・ベースト・ビューの実践的経営戦略について、詳しく解説する。
リソース・ベースト・ビューとは、企業内部の経営資源に目を向けて、競争優位性や付加価値を見出す分析手法である。
リソース・ベースト・ビュー(Resource Based View)の頭文字3つをとって、RBV(アールビーブイ)とも呼ばれ、1980年代にB・ワーナーフェルトによって提唱された概念だ。
企業内部の経営資源は、現預金や設備建物等の有形資産、特許やブランド等の無形資産、社員の才能資質や成果結果の源泉となる組織能力などが挙げられ、これらの内部資源の中から他社とは違う強みを見つけることが、RBVの基本アプローチになる。
また、リソース・ベースト・ビュー(RBV)は、ピーター・F・ドラッカーの「選択と集中」、フィリップ・コトラーの「地位別戦略」、マイケル・E・ポーターの「競争原理」等のマーケティング戦略との補完性も高い。
なお、RBVが経済界で注目され始めたのは、C. K. プラハラッドとゲイリー・ハメルが1990年に発表した「コア・コンピタンス経営」と、ジェイ・バーニーが1991年に発表した「企業の資源と持続的な競争優位」の論文の影響が大きい。
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リソース・ベースト・ビューの分析手法の核となる前章で触れた「コア・コンピタンス経営」と「企業の資源と持続的な競争優位」ついて、詳しく解説する。
コア・コンピタンス経営とは、企業の中核事業(コアビジネス)を分析・把握し、将来的にその分野の勝者になるための集中・拡大の戦略を推進することだが、顧客利益最大化、模倣困難性、他分野への応用力の3つの要素を戦略の中心に置いている。
企業の資源と持続的な競争優位とは、経済価値、希少性、模倣困難性、組織能力の4つの視点から競争優位性や付加価値を見出し、どの経営資源が競争優位の構築上有効かを分析する手法である。それぞれの視点の詳細は以下の通りだ。
経済価値は、顧客に提供できる利益の大きさと言い換えられる。顧客の手間・時間・コスト等の削減貢献度、ナンバーワン、世界初・世界最小・世界最軽量・世界最速等の提供価値が典型と言える。
オンリーワン、限定品、手仕事、手料理、作家モノ、人間国宝、世界遺産、観光名所、今この瞬間の価値(旬・季節・景色等)など、その人、その時、その場所、その瞬間にしか提供できない商品やサービスが典型と言える。
他社に真似され難い商品やサービスの事で、模倣困難な経済的価値や再現困難な希少性、並びに、長年かけて積み重ねた信頼やブランド価値、特許等で守られた技術的強みが典型と言える。
経済価値、希少性、模倣困難性を生み出す組織の暗黙知・属人化ノウハウ・外部からは見えない一連の仕組みが挙げられる。この人と一緒に仕事がしたい、この人から商品を買いたいと思わせるヒューマンスキルも含まれる。
この組織能力は、社長の経営力と人間性を磨くだけで簡単に高められるので、中小企業が最も重視すべき視点だ。例えば、第三者がユニクロの製造小売モデルやトヨタ自動車のカイゼン方式を書籍や研修等で一所懸命研究したとしても、ユニクロやトヨタと同じような会社が現れないように、最も持続的に競争優位性を保てる経営資源が組織能力なのだ。
リソース・ベースト・ビューとポジショニング・ビューの違いについて、詳しく解説する。
ポジショニング・ビューとは、外部環境の中で、自社の強みを発揮できる場所を見つけることである。
他社とは違う強みを持つためのリソース・ベースト・ビューが内に向かった分析であるのに対し、ポジショニング・ビューは、外に向かった分析と言える。
自社の強みを発揮できる場所を見つけるのが本来の目的なので、競争するための位置取りではなく、競争を避ける位置取り、ライバルと違ったことをする場所探しが、ポジショニング・ビューの基本アプローチになる。
ライバルと顧客の取り合いにならないように主戦場をずらせば、ライバルとの争いは起きず、体力を温存したまま、生存することができるので、大企業とは違うことをすることで強みが発揮できる中小企業と相性の良い戦略と言える。
例えば、駅前と郊外、法人と個人、安物・低価格・消耗品と高級・高価格・一生モノ、機能や技術だけでなく魅力的なコンセプトで勝負するなど、ライバルとの主戦場をずらす方法は沢山ある。主戦場を変えれば、自然と差別化ポイントが生まれ、不毛な争いに陥ることなく会社を繁栄させることができる。