品質重視の経営戦略は中小企業の収益力をグッと上げる。
なぜなら、「品質」は、企業が提供する商品の価値を計る重要な基準になるからだ。
例えば、高品質=高価、低品質=安価というように、品質は、商品価格を決定づける重要な要素を持っている。
商品価格の高低は、そのモノの価値の優劣を決定し、更には会社の収益力までをも決める。
この記事では、品質重視の経営戦略について、詳しく解説する。
品質重視の戦略メリットは、会社の収益性と競争力の向上にある。
例えば、品質重視の経営戦略を展開し、競合他社よりも優位な価格帯で安定需要の確立ができれば、会社の収益力が高まる。
そして、会社の収益力が高まれば、市場競争力も高まり、更に、収益力は利益率を高め、競争力は売上を増やすので、品質重視の経営戦略は、会社経営の本質である利益拡大を加速させる効果がある。
つまり、中小企業にとって、商品の価値(価格)を高める品質重視の経営戦略は、大変に効果的な戦略といえるのだ。
なお、品質重視の対極にある、品質軽視(低価格・低品質等)の経営戦略は、収益力と競争力低下等、全て反対のマイナス現象表れ、業績悪化のリスクが高まる。
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品質重視の経営戦略を効果的に推し進めるには、優先すべき判断基準を「品質」に置くことが第一になる。
下図は、品質重視の基本戦略の活動サイクルを表したものである。
品質重視で付加価値を追求し、企業の収益力を上げる活動サイクルが、品質重視の基本戦略になる。
品質重視の経営戦略最大の特徴は、会社の強み(品質・付加価値等)が増強されるほど、会社のオンリーワン要素が色濃くなることだ。
オンリーワン要素が色濃くなると、会社の収益力と競争力が一段と高まるので、品質重視の経営戦略は中小企業にとって優れた戦略といえる。
品質重視の重要な戦略ポイントについて、詳しく解説する。
より良い工夫は付加価値増加の源泉になる。顧客満足度の高いサービス追求、高品質の材料調達や製法改善、パッケージやデザインの高級化、革新的な用途開発、等々、品質重視の工夫は沢山ある。常により良い品質を目指すという意識を重視していれば、自ずとさまざまな工夫やアイデアが浮かんでくる。
付加価値が増加すれば高品質を求める顧客層が増加する。また、商品やサービスの値上げの選択肢も生まれる。品質向上のための工夫やアイデアを、どの程度価格に転嫁できるかを見極めたうえで、適正な値上げを実行することができれば、会社の収益は更に拡大する。
高品質化、高価格化が進むほど競争力が磨かれて、競合他社に対して圧倒的な差をつけることができる。競争力が高まれば市場占有率や市場の拡大効果が生まれるので、自然と需要が増加し、益々需要が安定する。
品質重視の戦略メリットは、会社の収益力と競争力を高めるだけではない。
例えば、品質重視の経営戦略で商品の付加価値が高まると、価格勝負の優位性が高まる。
品質重視の経営戦略を展開していながら価格設定に失敗している中小企業は少なくないが、高めた付加価値を価格に転嫁することは商売の鉄則である。
価格の妥当性チェックは、商品の付加価値を全て書き出し、徹底的に競合比較する方法がお薦めだ。
競合よりも付加価値が高いことが分かれば、同じ価格帯でも勝負を優位に進めることができるし、値上げという収益改善を検討することもできる。
また、品質重視の経営戦略は、会社の組織にも好影響を及ぼす。
例えば、5S活動(※1)の定着、お客様サービスの向上、円滑な報連相、など等、会社の組織力向上に繋がる様々なメリットを生み出し、結果、会社の業績を押し上げる二次的な効果を生み出す。
※1 5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5つの頭文字(S)をとったものである。組織をあげて活動することを5S活動という
最後に、品質重視の経営戦略とは対極にある品質軽視、いわゆる低品質・低価格化の弊害について、詳しく解説する。
下図は、品質軽視の基本戦略の活動サイクルを表したものである。
ご覧の通り、安さを追求すると、品質低下と共に、商品の付加価値と会社の事業価値も低下する。
この戦略を推し進め、薄利多売の水準まで商品価値が低下すると、少しの需要減少で経営が行き詰まる。そもそも、薄利多売の市場は大手の独壇場なので長期的に競争を勝ち抜くのが難しく、会社の衰退リスクが付きまとう。
更に、一度、品質軽視の戦略を推し進めると、品質重視の戦略に戻すことが困難になる。
品質軽視の経営戦略は、資本力のない中小企業ほど危険な戦略なので、くれぐれも注意してほしい。
品質重視の経営戦略は、資本力のない中小企業の生命線になります。資本力で勝負できない会社は、強み(品質・付加価値・ストロングポイント等)でしか勝負できないからです。品質重視の戦略は、弛まぬ経営改善の継続が不可欠で、一朝一夕では成し得ませんが、兎に角、諦めずに強み(品質等)を磨き続けることが大切です。