利益拡大を図る経営戦略|中小企業の利益を拡大する具体的手法・方法

中小企業の利益拡大を図る経営戦略

 

利益拡大を図る経営戦略は、安定経営の実現に欠かせない。

 

なぜなら、会社の利益は、企業の存続を担保する重要な要素だからだ。

 

この記事では、中小企業の利益拡大を図る経営戦略について、詳しく解説する。

 

 

利益拡大の基本戦略

 

中小企業の利益拡大は、会社の利益の足を引っ張る損失要因(赤字収支や赤字取引等の損失)を、徹底的に排除することで実現できる。

 

つまり、会社の損失を徹底的に排除する活動が、利益拡大の基本戦略になる。

 

利益の足を引っ張る損失要因は、会社の数字を分解することで明らかになる。会社の数字は様々な事業収支の集合体で形作られているので、事業収支を細かく分解するほど、事業単体(商品単体)の損益が明快になる。

 

例えば、会社の中に、A事業部とB事業部があった場合、その会社の収益構造は2つの事業収支に分解することができる。更に、夫々の事業部が販売する商品が各々5種類あったとすると、収益構造は2事業部×5商品、合計10の事業収支に分解することができる。

 

全ての事業収支が黒字であれば問題ないが、どんな会社にも、利益がマイナス(赤字体質)の赤字収支の事業、或いは、赤字取引の商品が混入している。

 

当然ながら、会社全体の収支が黒字であっても、赤字事業、或いは、赤字商品が混入していれば利益の総量は減少する。

 

下図は、会社全体から事業へ、事業から商品へと、事業収支を細分化するイメージだ。

 

 

このように、事業の収支構造は、事業や商品毎に細分化することで、一つひとつの損益実態が明らかになる。

 

そして、細分化した各事業収支の損益(黒字か赤字)が明確になれば、会社の利益の足を引っ張る損失要因を排除する利益拡大戦略を、効果的かつ効率的に展開することが可能になる。

 

 

利益拡大戦略の基本ポイント

 

利益拡大戦略の基本ポイントは、黒字収支は利益の最大化を、赤字収支は早期黒字化を目指すことが基本戦略になる。

 

そして、利益拡大のために、赤字収支の黒字化を最優先する事が何よりも重要になる。

 

なぜなら、赤字収支は癌細胞のごとく増殖スピードが速いので、放置するほど会社の衰退リスクが高まるからだ。従って、赤字収支を見つけた場合は、待ったなしで対処する必要がある。

 

なお、赤字収支の判定基準は「貢献利益」を用いる。貢献利益とは、その事業、又は、その商品が会社全体の利益にどの程度貢献しているのかを表す利益指標で、貢献利益算定の損益構成と判定方法は下記の通りになる。

 

貢献利益の計算

項目

補足

売上

事業単体又は商品単体の売上

売上原価

事業単体又は商品単体の売上に連動する原価

売上総利益

売上-売上原価

直接経費

事業単体又は商品単体の売上に連動する直接経費

貢献利益

売上総利益-直接経費

本部経費等

事業単体又は商品単体の売上に連動しない本部経費や間接経費

営業利益

貢献利益-本部経費等

 

貢献利益の判定基準
貢献利益が黒字

貢献利益が黒字であれば、更に利益が拡大されるような経営改善を推進する。貢献利益が減少傾向、或いは、貢献利益が黒字であっても営業利益が赤字の場合は、営業利益黒字化のための抜本改革を断行する。

 

貢献利益が赤字

貢献利益が赤字であれば、貢献利益の黒字化を実現すべく抜本改革を断行する。貢献利益黒字化の見込みがない場合は、事業閉鎖、商品終売等を検討し、速やかに損失を解消する。

 

利益拡大の戦略効果を上げる意識

 

赤字事業や赤字商品がある場合は、会社のどこかに、必ず、ムダムラが潜んでいる。

 

業績が悪い中小企業ほど事業単体の損益(事業収支)を把握していないケースが多いが、損失原因が不明・曖昧では、利益拡大のための戦略展開が全て的外れになる。

 

もしも、「色々と手を尽くしているが利益が拡大しない」という症状が出ている場合は、利益拡大の戦略が的外れに陥っている可能性が高い。

 

当然ながら、的外れな活動は、労力と時間のムダであり、1円たりとも利益に貢献することはない。

 

赤字事業の黒字化、或いは、黒字事業の利益最大化の戦略展開を効果的に推進するには、細かな事業収支の把握が不可欠で、正しい収支さえ把握できていれば、最適な利益拡大戦略を展開することができる。

 

また、利益拡大の戦略効果を上げるために、会社の生命線は売上ではなく「利益である」ということを常に意識することも大切だ。

 

中小企業の場合、100億円の売上に対して利益1億の会社より、10億円の売上に対して利益1億の会社の方が、よほど将来性がある。

 

利益を拡大するために、目指すべき目標を売上ではなく利益に向けることも大切な条件になる。

 

伊藤のワンポイント
 

利益拡大は会社存続に欠かせない取り組みです。利益がなければ現金は増えず、成長投資もペースダウンするからです。利益拡大のための収支分解は戦略の肝になります。なぜなら、収支分解が利益拡大の出発点になり、この作業の精度が利益拡大の戦略展開の成果を決めるからです。日頃の収支管理を大切にしてください。