独占市場を拡大する経営戦略とは、事業価値を維持・増幅する戦略展開のことである。
一度築いた事業価値を維持・増幅できれば、競争優位性を保持できるので、独占市場の拡大が容易になる。
この記事では、独占市場を拡大する経営戦略、強いては、中小企業の事業価値を維持・増幅させる戦略について、詳しく解説する。
独占市場を拡大する経営戦略とは、一度築いた事業価値を維持・増幅する戦略展開のことである。
独占市場を拡大するには、事業価値を陳腐化させないことが必須条件になる。
なぜなら、どんなに強固な独占市場であっても、事業価値が陳腐化すると共に、市場が縮小するからだ。
純金の延べ棒は小さく分割してもグラム価値が変わらないが、事業は違う。
例えば、人気店舗を近隣に10分割すれば「ここでしか買えない」が「どこでも買える」という価値観に変化し、事業価値が1/10以下に陳腐化することもあり得る。
このように、独占市場であっても、一点集中から拡大分散すると、加速度的に事業価値が陳腐化することがあるので、独占市場を拡大するには、事業価値を陳腐化させないことが何よりも大切になる。
中小企業が独占市場を拡大するには、事業価値を維持・増幅させながら、独占市場の拡大戦略を展開することが欠かせない。
資本力の乏しい中小企業には難易度の高い戦略かも知れないが、独占市場拡大の失敗パターンを理解すれば、成功のイメージが見えてくる。
簡単な失敗パターンを紹介する。例えば、地方の菓子メーカーが地元の物産店(空港・駅等)のみで繁盛店を展開し、「ここでしか買えない」という事業価値を保有している場合、その市場は、その会社にとって立派な独占市場といえる。
このような会社が地元の商圏を飛び出して東京等の大都市圏へ多店舗展開するケースがあるが、実際に出店してみると失敗に終わることがよくある。
失敗の理由は簡単で、「顧客の見誤り」である。
大都市圏への出店が失敗に終わる会社の顧客は、地元在住だけでなく、東京等の大都市圏からの観光客も多く含まれている。「そこに行かなければ買えない」という事業価値が、「東京にいても買える」となると、途端に事業価値が陳腐化する。
このように、地方の中小企業が顧客を見誤った状態で独占市場の拡大を進めると、事業価値が陳腐化し、せっかくの独占市場が縮小することがある。
ちなみに、大都市圏への出店の失敗は、地方出店の失敗に比べて業績悪化のスピードが極めて速い。
例えば、大都市圏は地方に比べて人件費や家賃が高いため、一度、採算割れに転じると数ヶ月で数億円の損失になることも珍しくない。さらに、事業撤退のタイミングを外すと、本業の利益が全て無くなり、倒産の危機に瀕することもある。
中小企業が独占市場の拡大を成功に導くために活用できる経営戦略を2つ紹介する。一つは「既存商品×既存市場」を掛け合わせた独占市場の拡大戦略、もう一つは「既存ビジネス×新規」を掛け合わせた独占市場の拡大戦略である。
既存商品×既存市場を掛け合わせた独占事業の拡大戦略とは、集中的に既存ビジネスを深掘りする戦略展開のことである。既存商品の付加価値発掘・用途開発・デザイン刷新など等、或いは、既存顧客へのサービス向上・情報充実・リピート促進・口コミ助長など等、既存ビジネスの深堀りを積極推進することで独占市場の収益を更に拡大する戦略だ。独占市場の拡大スピードは速くないが、失敗リスクは極めて低く、独占市場拡大の正攻法といえる戦略になる。
既存ビジネス×新規を掛け合わせた新規事業展開し、独占市場の収益を更に拡大する戦略展開のことである。例えば、飲食業界で多店舗展開を行う際に、一店ずつお店の看板(コンセプト)を変えて多店舗展開している会社があるが、既存ビジネスに新しい要素を掛け合わせて、別コンセプトで独占市場を拡大する戦略は、有効な手立てのひとつになる。但し、新しい要素が含まれているので、成功の確率は五分五分になる。
(この記事は2016年7月に執筆掲載しました)