中小企業は、限られた人材で勝負せざる得ないので人材育成が成長のカギとなる。
当然ながら、人材育成をおざなりにすると個々のマンパワーが伸びることはなく、業績も低迷する。
この記事では、中小企業の人材育成を成功させる人事戦略について詳しく解説する。
中小企業の人材育成を成功させる有効な戦略は、経営者が社員の活動を徹底的にサポートする体制を構築する戦略展開にある。
会社の業績を上げるために経営者の方針に則り、営業、製造、開発、等々、会社のあらゆる現場で手足を動かし、会社の事業活動を推進しているのは、他でもない社員だからだ。
社員の活動がなければ業績は上がらず、事業そのものも成立しない。当然ながら、社員の活動の質が良ければ業績は上向くが、社員の活動の質が悪ければ業績は下がる。
つまり、社員の活動の質を上げる取り組みこそが、人材育成の本質といっても過言ではないのだ。
とはいっても、社員の活動の質を上げる有効な人材育成は容易ではない。
例えば、一般的な中小企業の人材育成方法は、勉強会やセミナー機会、或いは教育教材などを社員に与え、社員の能力開発を行うが、多くの教育は、効果に即効性がない。
教える立場の人間に必要なのは「あきらめのわるさ」というように、そもそも教育とは、結果が出なくても、根気強く教育し続けるところに本質がある。
そう考えると、営利目的で事業活動している会社にとって、人材育成ほど非効率な投資はない。
過去に再建に関わった中小企業の人材育成事例を紹介する。
その中小企業は、売上の10%を人材育成費用として社員の教育に循環投資していた。
教育内容は経営者が良いと思った教材、セミナー、勉強会等々、様々だったが、全て、経営者の独断で決めた人材育成プログラムを、一方的に社員に押し付けているものばかりだった。
経営者は、人材育成に力を注いでいるという強い自負心を持っていたが、多くの社員は一方的な人材育成に疲弊していて、教育効果は業績にも表れていなかった。
売上は下がる一方だったし、問題社員の言動も是正されていなかった。
再建開始時に、一番初めに手を付けたのは、人材育成の戦略改善だったのは言うまでもない。
それでは一体、中小企業の社員の活動の質を高める人材育成の戦略とは、どのようなものなのだろうか?
中小企業にとって、人材育成ほど重要な取り組みはない。
なぜなら、人材が育成されて組織力が強化されると、会社の業績がグングン伸びるからだ。
中小企業の人材育成で最も費用対効果の高い育成方法は、経営者が社員の活動を徹底的にサポートする体制を構築する戦略展開になる。
具体的には、PDCAサイクルで社員の活動を徹底的にフォローする人材育成体制を構築することである。
事業活動は、経営計画(Plan)、行動(Do)、実績検証(Check)、計画改善立案(Action)のPDCAサイクルで回っていて、会社の階層に応じて、役割分担が決まっている。
会社の階層は、戦略を担う経営者、戦術を担う経営幹部、戦闘を担う社員と、3つの階層に分かれ、階層毎の役割を整理すると下表の通りになる。
階層 |
経営計画 (Plan) |
行動 (Do) |
実績検証 (Check) |
計画改善立案 (Action) |
---|---|---|---|---|
経営者・経営幹部 |
○ |
○ |
○ |
|
社員 |
○ |
人材育成の効果を上げるには、社員が担う「活動部分(Do)」の精度を高める工夫が不可欠になる。
例えば、社員の行動(D)の中には、社員なりのPDCAサイクルが存在しているが、社員の行動(D)に対して、経営者の関与(PCA)が薄ければ、PDCAサイクルを通じた人材育成効果は弱くなる。
逆に、社員の行動(D)に対して、経営者がPCAの役割で積極的にサポートし、PDCAサイクルを経営者と社員の協業で推進することができれば、人材育成効果が高くなる。
経営者がPDCAをサポートすることで得られる人材育成効果は大きい。
社員の活動の質が上がるだけでなく、組織全体の活動の質も上がり、会社の業績もみるみる上がる。
つまり、PDCAサイクルで社員の活動を徹底的にフォローする人材育成体制が構築されると、効果的な人材育成が実現できると同時に、会社の業績向上効果も得られるのだ。
下の図は、人材の成長と会社の成長を図解したものだ。
多くの中小企業は、社員の行動に対して十分なサポート体制が構築されていないために、人材育成が不十分で、社員の力が十分に活用されていない。
また、教育の本質を理解せずに、費用対効果の低い人材育成を推進している中小企業も多く見受けられる。
基本に忠実に、経営者が徹底して社員をサポートすることが、費用対効果の高い人材育成を成功させる秘訣である。
小さな会社ほど経営者自らが社員に寄り添う人材育成環境を構築する必要があります。人材育成の一環で適宜軌道修正が働けば社員の活動の質が一段と高まるからです。また、社員に対して評価基準を示すことも大切です。会社が求める人材像と社員が目指す人材像のギャップが埋まるほど、人材育成の効率が高まるからです。