会社経営に逆境はつきもので、長く会社経営を続けていると、必ず逆境がやってくる。
経営資源や資本力に乏しい中小企業であればなおさらのことで、当然ながら、経営者が逆境に備えることなく日々を過ごしていては、逆境がやってきたときに、会社全体がパニックに陥ってしまう。
逆境を乗り越えるために必要な戦略展開は山ほどあるが、逆境がやってきてから慌てて動いても手遅れだ。やはり、逆境を乗り越えるには有事に備えた準備が必要だ。
この記事では、逆境を乗り越えるための中小企業の経営戦略、つまり、逆境に負けない強い会社の作り方を、詳しく解説する。
逆境を乗り越える経営戦略の一例を紹介する。
逆境を乗り越えるための中小企業の経営戦略は沢山あるが、リスク管理の面から常に強化(準備)したい「収益体質・販売市場・現金水準・人員体制・経営者の意識」の5つの経営分野についての逆境を乗り越える具体的な経営戦略を紹介する。
利益水準が高い中小企業は逆境に強い。例えば、何らかの突発的な外的要因で売上が激減したとしても、利益水準が高ければ、逆境を乗り越える経営改革を果たすための時間稼ぎができる。
逆境を乗り越えるために目標とすべき利益水準は売上総利益高営業利益率20%以上になる。利益水準が高ければ逆境で一時的に苦境に陥っても、逆境を乗り越えることができる。どうにか逆境を越えてしまえば、会社経営を続ける事ができ、元通りになるのは時間の問題になる。
ニッチの独占市場を確立している中小企業は逆境に強い。例えば、経済不況等で市場が縮小する場合、ニッチ市場だけは縮小の影響が小さく済む傾向が強い。
また、ニッチの独占市場は、高い収益性が得られるので自ずと利益水準が高くなる。先に述べた通り、利益水準が高い会社は逆境に強い。従って、ニッチの独占市場を確立している会社は、競争力と共に、収益面でも優位な立場に立つことができる。
現金残高が多い中小企業は逆境に強い。例えば、何らかの突発的な外的要因で売上が激減したとしても、現金残高に余裕があり1年間持ちこたえることができれば、逆境を乗り切るための経営改革を果たすことができる。しかも、現金に余裕があれば、逆境を乗り越えた後も経営が安定しやすい。
逆境に備えた余剰現金残高は、売上が20%減少しても1年間耐えうる水準が望ましい。計算式は「年間売上×売上総利益率×20%」で計算できるが、例えば、年間売上が3億円で売上総利益率が50%であれば、3億×50%×20%=逆境に備えた余剰現金残高は3,000万円になる。まさかの資金として3,000万円を確保しておくと、逆境に備えることができる。
逆境に陥ってから現金を用意するのは困難を伴う。会社はお金がなくなると倒産するので、日ごろの心がけが何よりも大切になる。
余剰人員が少ない少数精鋭体制の中小企業は逆境に強い。例えば、年間の売上のピークが増減するような会社で、売上が一番多くなるピーク時に合わせた人員体制をとっている会社がある。このような会社は、売上が下がり始めると、人員が溢れ出し、労働効率の低下と共に、会社の収益も低下する。また、余剰人員が多い会社は逆境の時に人員整理が追い付かず、収益悪化を食い止めるのに時間がかかる。
年間通して売上のピークが増減するような会社は、最も売上が下がるピーク時に合わせた少数精鋭の人員体制をとり、売上が上がるピーク時は臨時の人員体制(アルバイト・短期パート)で乗り切る工夫が望ましい。
ピンチをチャンスと捉える経営者がいる中小企業は逆境に強い。ピンチをチャンスと捉える意識は、逆境を乗り越える最大の秘訣といっても過言ではない。優れた経営革新、技術革新、新商品、新発明、等々、飛躍的に会社を成長させる原動力はピンチから生まれる。
産みの苦しみではないが、大きなピンチほど会社に大きなプレッシャー(重圧・負荷)がかかる。そして、大きなプレッシャーの反動で生み出される成果は、会社の成長に大きく貢献することが多い。
ピンチに委縮するような経営者の下では、逆境を乗り切ることも、大きな成果を挙げることもできない。ピンチはチャンスと捉える意識が大切で、意識は行動を変え、行動は未来を変える。
中小企業は、経営者の心持ち次第で、いかようにも逆境を乗り越えることができるのだ。
(この記事は2016年7月に執筆掲載しました)