ブルー・オーシャン戦略とは、競争のない市場を創出し、競争自体を無意味化する経営戦略のことだ。
市場競争を無力化するブルー・オーシャン戦略は、少ない資本で勝負せざる得ない中小企業にとって、最も適した経営戦略といえる。
この記事では、中小企業に適したブルー・オーシャン戦略の基本と応用について、詳しく解説する。
ブルー・オーシャン戦略とは、競争のない市場を創出し、競争自体を無意味化する経営戦略のことである。
ブルー・オーシャンとは読んで字のごとく、見渡す限りの地平線が見渡せる青々とした大海原を表し、視界を阻む障害物は何もなく、競争のない世界観を表した言葉がブルー・オーシャンである。
ブルー・オーシャンを気ままなペースで航海できれば、さぞかし気分が良いと思うが、会社経営も同じである。
競争のないブルー・オーシャン市場を気ままなペースで経営できれば、さぞかし気分が良いだろう。
なお、ブルー・オーシャン戦略は、世界トップクラスのビジネススクールINSEADのW・チャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授が競争のない市場を創り出した数々の企業を研究したうえで体系化した経営戦略である。
2005年にハーバード・ビジネス・レビュー誌に論文が掲載され、その後発表された関連著書は世界で1,000万部を超えるベストセラーを記録している。
ブルー・オーシャン市場と対極にあるのがレッド・オーシャン市場である。
レッド・オーシャン市場とは、熾烈な競争が繰り広げられている市場のことだ。
この市場は、世界市場を相手にしている大企業の独壇場なので、中小企業がレッド・オーシャン市場で競争を勝ち抜くのは至難の業になる。
下表はブルー・オーシャン戦略とレッド・オーシャン戦略の主な比較である。
ブルー・オーシャン戦略 | レッド・オーシャン戦略 |
---|---|
競争のない市場を創出する | 既存市場で勝負する |
競争を無意味化する | 競合他社に勝つ |
新規需要の創出 | 既存需要の拡大 |
価値を高めながらコスト低下を図る | コスト低下を価格に還元していく |
差別化と低コストを共に追求 | 差別化か低コストの二者択一 |
価値革新(低コスト) | 技術革新(高コスト) |
大企業、中小企業問わず、殆どの会社はレッド・オーシャン市場での競争を強いられている。
しかし、いかに小さな中小企業であっても、工夫と努力で、自らの力でレッド・オーシャン市場から抜け出し、ブルー・オーシャン市場を創出することができる。
中小企業にとって、競争のないブルー・オーシャン市場を創出するブルー・オーシャン戦略は、会社を救う優れた経営戦略といっても過言ではない。
ブルー・オーシャン戦略で最も重要な作業は「価値革新(バリュー・イノベーション)」になる。
価値革新のことをバリュー・イノベーションというが、ブルー・オーシャン戦略の成功は、バリュー・イノベーションで決まる。
バリュー・イノベーションとは買い手の価値を高めながら、コストを押し下げることで、買い手の価値を高めるバリュー・イノベーションは、業界であまり認知されていない要素を取り込む、或いは、商品価値を高める新たな情報を発信するなど、無から有を生み出す大変な作業になる。
コストを押し下げる方法は、業界で常識とされている要素をそぎ落とす方法が正攻法になり、バリュー・イノベーションが成功し売上が拡大すると、規模の経済性が働きコストが一段と低下する。
なお、価値革新(バリュー・イノベーション)は、多額の研究開発費を投じて行う技術革新(イノベーション)とは似て非なるもので、また、コストをかけて価値を高めるブランド戦略とも対極の方法になる。
この二つのポイントが、ブルー・オーシャン戦略、最大のポイントといえる。
買い手の価値を高めながらコストを押し下げるバリュー・イノベーションの成功に不可欠な4つのアクションは下表の通りになる。
取り除く |
業界の常識で取り除く要素は何か? |
---|---|
増やす |
業界標準と比べて増やせる要素は何か? |
減らす |
業界標準と比べて減らせる要素は何か? |
付け加える |
業界であまり認知されていない加えるべき要素は何か? |
そして、取り除く、増やす、減らす、付け加えるという4つのアクションを検討するうえで注意すべき主なポイントは下記の通りになる。
顧客を集客できるか? |
戦略に一貫性があるか? |
競合他社と同じ戦略で勝負していないか? |
顧客に対して過剰に価値提供していないか? |
競合他社と同じ商品特性で勝負していないか? |
差別化が競合他社の後追いになっていないか? |
顧客に提供する価値は価格と見合っているか? |
キャッチフレーズに専門用語を使っていないか? |
競合他社と同じ顧客層をターゲットにしていないか? |
差別化か低コストの二者択一戦略をとっていないか? |
商品やサービス単体で勝負をかけていないか?(森を見ているか?) |
取り除く、増やす、減らす、付け加えるという4つのアクションを実践し、バリュー・イノベーションの骨子が整理されると「極めて高い独自性」が誕生する。
高い独自性を軌道に乗せるには、企業と顧客を結び付ける「訴求力のあるキャッチフレーズ」が不可欠で、訴求力のあるキャッチフレーズを掲げたうえで、高い独自性の発信を積極展開すれば自ずと顧客が集まり始める。
バリュー・イノベーションで集客した市場は、競争のない「ブルー・オーシャン市場」になる。
ブルー・オーシャン戦略を支えるバリュー・イノベーションに終わりはない。なぜなら、テクノロジーや時流は、時間の流れと共に変化するからだ。
どんなに強固なブルー・オーシャン市場を築いたとしても、月日が過ぎると共に事業価値の陳腐化が始まる。
事業価値の陳腐化が始まるということは、競合他社との差が縮まるということだ。
従って、バリュー・イノベーションに終わりはなく、例えば、1970年代から2000年代の30年を切り取っても、様々なテクノロジーや時流の変化があった。
音源は、レコードからカセットへ、カセットからCDへ、CDからオンラインへ、保存は、フロッピーディスクからハードディスクへ、ハードディスクからクラウドへ、通信は、固定電話から携帯電話へ、携帯電話からスマートフォンへ、販売は、対面形式からセルフサービス形式へ、セルフサービス形式からオンライン形式へ...。
当然ながら、ブルー・オーシャン市場を築いたとしても、ほんの小さな気の緩みから新たなテクノロジーや時流に乗り遅れると、途端にレッド・オーシャン市場に飲み込まれる。
ブルー・オーシャン戦略を成功させるには、ひたむきな経営改善(バリュー・イノベーション)が欠かせない。
☑お客様が満足する品質なのか?
☑お客様が求めるサービスは何か?
☑お客様が求めている商品を提供するにはどうすべきか?
☑お客様が喜ぶ独自商品やサービスを提供するためには何をすべきか?
☑テクノロジーや時流、時代の変化に対応するためには何をすべきか?
多くの中小企業はテクノロジーや時流の変化が訪れてから、ようやく対応を試みるが、それでは時すでに遅しである。
やはり、未来のテクノロジー、或いは時流の変化が自社の事業構造にどのような影響を与えるのか、お客様の価値判断がどう変化するのか、など等、日頃から変化の影響を考えなければ、変化に対応することはできない。
経営者に強い信念と胆力がなければ、終わりのないブルー・オーシャン戦略を推し進めることはできない。
ブルー・オーシャン戦略は事業価値の再構築でもある。
独自ノウハウを持つ中小企業であれば、チャレンジの価値は十分にある。中小企業が熾烈な市場競争から脱却するにはブルー・オーシャン市場を切り開くしかないのだ。