多角化戦略とは、事業を多角的に展開する経営戦略のことだ。
多角化戦略は、事業収益のリスク分散のメリットがある一方で、失敗に伴う業績悪化のリスクがある。
この記事では、中小企業に適した多角化戦略について、詳しく解説する。
資金調達手段に限りのある中小企業ほど、多角化戦略を慎重に進める必要がある。
わたし自身、多角化で失敗して危機的経営状況に追い込まれた中小企業をたくさん見てきたし、過去の歴史を振り返っても、多角化の戦略を誤って衰退した企業は数多にある。
多角化戦略を成功させる秘訣は、本業との関連性をしっかり保持しながら多角化を展開することだ。
本業との関連性が高い多角化ほど失敗リスクが軽減され、多角化事業の成功率が上がる。
下図は、多角化戦略を進めるうえで活用する戦略マトリックスである。
赤丸で囲った本業の技術やノウハウを新しい市場へ多角化展開する、或いは、本業の市場へ新しい技術やノウハウを多角化展開する戦略が、最も成功率が高い多角化戦略になる。
ちなみに、赤丸の外にある本業とまったく関係ない分野(新規×新規)での多角化は、いかに多角化戦略が優れていたとしても失敗の確率が極めて高いので、資本力に乏しい中小企業にはお薦めしない。
本業との関連性を持った多角化戦略が最も失敗リスクが小さく、中小企業に最も適した多角化戦略になる。
多角化戦略成功のカギは本業にある。
なぜなら、本業の技術と市場の付加価値が高いほど、その本業に関連した多角化事業の成功率が上がるからだ。
本業の付加価値が競合ライバル企業よりも優れていると、その本業に関連(派生)した多角化戦略を優位に展開することができる。
従って、多角化戦略を本格的に展開する前に、競合ライバル企業よりも本業の付加価値を高めることも、多角化戦略成功の必須条件になる。
下図は、本業分野の付加価値を高める際に活用する戦略マトリックスである。
赤丸で囲った本業の技術や市場の付加価値を高めると本業に関連した多角化戦略の成功率が上がり、本業の付加価値が高まるほどエッジの効いた多角化事業(先鋭的事業)のアイデアや戦略が生まれやすくなる。
多角化戦略成功のカギが本業にあると云われる所以はココにある。
本業の付加価値研鑽に終わりはない。
なぜなら、経済環境の変化、世間の価値観の変化、最新技術の陳腐化、競合ライバル企業の台頭、など等、周囲の環境が変化すると、本業の付加価値が簡単に陳腐化するからだ。
本業の付加価値を研鑽するには、周囲の環境変化に目を光らせ、その変化が本業にどのような影響を及ぼすのかを徹底的に考え、先手先手で対策を講じなければならない。
そうした努力の継続が本業の付加価値を高め、多角化戦略の成功率を上げるのだ。
多角化の前に本業を極めることは、多角化戦略の正攻法です。本業の競争優位性が高まると、本業に関連する多角化事業の成功率も高まります。逆に、本業が脆弱なうちに多角化に走ると中途半端な結果に陥りがちで、最悪、多角化がきっかけで経営破たんの危機に瀕するケースもあります。