起業の形態は、個人事業主と法人(株式会社・合資会社等)の二つのパターンがある。
起業した事業を個人事業主からスタートした場合、法人化することで節税メリットや信用メリットを享受することが出来るが、果たして法人化のベストタイミングとは如何に。
この記事では、法人化のベストなタイミング、並びに、個人事業主の法人成りメリットについて、詳しく解説する。
個人事業主の法人化のベストタイミングは様々な基準で考えることができるが、お薦めの基準は「所得・信用・消費税」の3つである。
法人化のタイミングを検討する際に活用できる夫々の基準について、順を追って詳しく解説する。
法人化のタイミングを検討する際に活用できる一つ目の基準は「所得」である。所得を基準に法人化のタイミングを検討する場合は、個人事業主としての課税所得(収入-費用)が500~600万円を超えた時点が一つの基準になる。このラインを越えると、法人よりも税負担が重くなるため、節税のために法人化するケースが多い。
法人化のタイミングを検討する際に活用できる二つ目の基準は「信用」である。美容室や整体などの個人向け商売であれば法人化することでの信用メリットは殆どないが、法人取引がメインの商売は法人化することでの信用メリットが得られる。従って、個人顧客よりも法人顧客が多い場合は、信用メリットを得るために法人化するケースが多い。
法人化のタイミングを検討する際に活用できる三つ目の基準は「消費税」である。個人事業主・法人共に原則2年前の売上が1,000万円以下であれば消費税が免除される。つまり、個人・法人、何れも創業から2年間は消費税が免除される。仮に、個人事業主でスタートしたビジネスの売上が2年目で1,000万円を超えた場合、3年目で法人化すれば、通算4年間は消費税が免除される。消費税10%の負担はキャッシュフローに大きな影響を及ぼすため、消費税を基準に法人化のタイミングを検討するケースも多い。
個人事業主の法人成りのメリットは、節税、信用、消費税の他にもある。
例えば、代表者報酬の経費化、福利厚生の経費化、厚生年金加入などは、法人化メリットの代表例になる。夫々の法人成りメリットについて、順を追って詳しく解説する。
個人事業主の場合、代表者報酬は経費として認められないが、法人成りすることで役員報酬として経費化することができる。事業収益を役員報酬で圧縮(経費化)することができるので、所得税(役員報酬)と法人税(当期利益)の二つの軸で納税額を調整・最適化できる。
個人事業主の場合、代表者や専従者(代表者の家族)の福利厚生は認められていないが、法人成りすることで、一定の福利厚生費を経費化することができる。例えば、個人事業主は、健康促進のための施設利用料や人間ドック等の検診費用は自己負担になるが、法人化することで経費化することができる。
個人事業主は代表者も従業員も国民年金に自己負担で加入する事になる。法人成りすると、厚生年金に加入することが可能になり、しかも、掛け金の半分を経費化できる。更に、厚生年金の方が受給金額が多いため、役員家族や従業員のメリットも大きくなる。
(本記事は2020年9月に執筆掲載しました)