大企業であれ、中小企業であれ、赤字経営は不幸の始まりである。
なぜなら、赤字経営の行きつく先は会社の倒産だからだ。従って、経営者であれば赤字経営を決して容認してはいけない。
この記事では、赤字経営を黒字化する基本の道筋から黒字化の具体的方法に至るまで、詳しく解説する。
黒字化とは、マイナス収支(赤字経営)からプラス収支(黒字経営)に収支を改善する取り組みのことだ。
会社経営の存続は、売上以下のコスト、つまり、プラスの収支が絶対条件になるので、赤字経営の会社にとって黒字化の取り組みは不可欠になる。
黒字化の判定は様々あるが、本業の儲けを示す営業利益の黒字化、会社全体の儲けを示す経常利益の黒字化、キャッシュフローの黒字化は安定経営の絶対条件になる。
特に、営業利益の黒字化とキャッシュフローの黒字化は重要で、営業利益が赤字だと事業そのものの継続が困難になり、キャッシュフローが赤字だと黒字倒産のリスクが飛躍的に高まる。
赤字経営の先にあるのは企業倒産なので、赤字に転落する予兆を感じたら、すぐに黒字化に取り組むことが大切だ。
中小企業の約7割が赤字経営に陥っていると云われている。
赤字経営に頭を悩ませている経営者も多いと思うが、黒字化の方法さえ抑えれば赤字脱却の道筋は見えてくる。
中小企業において、赤字経営を黒字化する方法はシンプルで、まずは徹底してムダとロスを排除し、収支をトントンに持っていくことが早期黒字化の基本アプローチになる。
収支をトントンに持っていく順番は、第一にキャッシュフローの黒字化、次に、事業収支上(経理上)の黒字化である。
赤字経営を脱却しようと、売上拡大や事業拡大に躍起になる経営者がいるが、この選択は間違っている。
なぜなら、現在進行している売上拡大や事業拡大の戦略が、赤字経営の元凶になっている可能性が高いからだ。
従って、何よりも優先すべきは、赤字の原因であるムダとロスを排除し、収支をトントン(プラスマイナスゼロ)に持っていくことだ。
売上拡大や事業拡大は、それからでも遅くなく、黒字化した後に、いかようにも挽回できる。
赤字経営の原因になり得るムダとロスの垂れ流しは、現金の垂れ流しと同じことだ。
自分の財布から毎日お金が逃げていると思えば、黒字化への意欲も上がるのではないかと思うが、赤字経営を黒字化するために収支をトントンに持っていくと、会社の現金流出が止まるので運転資金にゆとりができる。
運転資金にゆとりができると、会社の資金繰りと経営者の心に余裕ができる。さらに、経営者の不安も解消されるので、冷静かつ客観的な精神状態で、事業成長のアイデアを考えることができるようになる。
冷静さと客観性を見失った経営者の経営判断は、大概、誤っていることが多い。
従って、何事にも優先して、収支をトントンに持っていき、会社経営にゆとりを持つことが重要なポイントになる。
収支をトントンに持っていく一番の近道は、事業のロスとムダを徹底的に解消することだ。
そして、事業のロスとムダは「売上・売上原価・販売管理費」の3つの領域に潜んでいる。それぞれのロスとムダの解消方法を詳しく解説する。
意外なことに、ロスとムダは売上の中にも潜んでいる。
ロスとムダになりうる最たる原因は、赤字商品と赤字取引だ。
赤字経営に陥っている中小企業には、売れば売るほど赤字が拡大する赤字商品、或いは、赤字取引が必ず存在する。
赤字商品や赤字取引は、商品や取引毎の損益分析で探ることができる。
広告宣伝の意味合いがあったとしても、赤字経営であれば、全ての赤字商品と赤字取引を解消すべきだ。会社経営の原則は儲けること、即ち、黒字経営が第一である。
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売上原価の中にも、ロスとムダがたくさん潜んでいる。
主なロスとムダの発生場所は、仕入と製造原価だ。
仕入のロスとムダは、仕入調達ルートや調達方法の工夫で改善することができる。製造原価のロスとムダは、製造商品の組合せや人員配置の工夫で改善することができる。
仕入等のロスとムダを改善する際に注意すべき点は、品質を低下させないことだ。なぜなら、資本力の乏しい中小企業にとって、安かろう悪かろうの仕入方針の行く末は、衰退しかないからである。
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販売管理費の中にも、ロスとムダがたくさん潜んでいる。
主なロスとムダの原因は、労働生産性の低下と経費の無駄遣いだ。
労働生産性の低下は、営業ルートや配送ルートの損益分析、催事やイベントの損益分析等々、あらゆる労働生産性を個別分析することでムダとロスを探ることができる。
経費の無駄遣いは、収益に貢献していない経費の削減、消耗品の調達ルート変更による経費削減、広告宣伝や印刷物の調達ルート変更による経費削減、水道電機の節約、文具の共有化、など等、ムダとロスを解消する方法はいくらでもある。
なお、経費の無駄遣いは、変動費よりも固定費の削減を推進した方が即効性が高い。
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モノを売ったら、1円でも多く儲かる。
黒字経営は会社経営の基本原則である。
赤字経営では、不安が消えない、報酬が増えない、成長投資の原資が賄えない、未来が見えない、、、など等、良いことはひとつもない。
中小企業の黒字化は、赤字経営に転落した時点で、すぐに取り組まなければならない。
なぜなら、資本力に乏しい中小企業の場合、黒字化の取り組みが遅れるほど、赤字経営からの脱却が難しくなるからだ。
常に黒字経営をキープするために、しっかり経営改善に取り組むことが、赤字経営を未然に防止する確かな方法になる。