本部経費とは、収益を生み出さない管理部門の維持管理に費やされる経費のことだ。
本部経費の対象になる管理部門は、経営陣、総務経理やコールセンター、或いは、会社全体の将来収益に貢献している開発部門などの維持管理費用も含まれる。
中小企業の場合、本部経費は少ないほど良い。
なぜなら、会社の収益にさほど貢献せず、さらには会社の機動力の足を引っ張る本部経費を低コストに抑え、収益を生み出す営業部隊に経営資源を集中させた方が、会社の競争力が高まるからだ。
例えば、創業以来、増収増益を維持している(株)未来工業は、社員数が800名を超えているにも関わらず人事部がない。
創業者の山田昭男氏の方針で、もったいないから設置していないとの事だが、これなどは、ムダな本部経費をかけず、収益を生み出す営業部隊に経営資源を集中させている好例である。
中小企業のなかには、年商が大きくなると管理部門を拡大しようとするケースを見かけるが、ムダな本部経費は少ないほどよい。
また、収益に見当たった範囲内で本部経費をコントロールすることも大切である。
当然ながら、収益度返しの本部経費の散財は、会社の成長に少しも役立つことはなく、かえって、会社の衰退を早める結果を招いてしまう。
とはいっても、すべての本部経費をゼロにすることはできない。
例えば、コールセンターや総務経理といった本部経費はアウトソーシングできるが、機密性が高く、将来の収益源になり得る新商品の開発経費などの本部経費は必要不可欠だ。
会社の成長に欠かせない本部経費を、自社に見合った適正水準の範囲内でコントロールすることが、会社全体の収益バランスを整えるコツである。
中小企業に適した本部経費の目安は、粗利高本部経費率で測定できる。
粗利高本部経費率とは、粗利高(売上総利益高)に占める本部経費の構成比率のことだ。
会社の収益に対する本部経費の割合が分かるので、本部経費のコントロールに活用できる。粗利高本部経費率の計算式は下記の通りである。
粗利高本部経費率=(本部経費÷粗利高)×100%
例えば、本部経費が5千万円で、粗利高が10億円であれば、(5千万円÷10億円)×100%で、粗利高本部経費率は5%となる。
本部経費には、管理部門の総人件費、管理部門に係る変動費(光熱費等)と固定費(家賃や減価償却費用等)等が含まれる。
中小企業の粗利高本部経費率の標準水準は10%以下である。
従って、粗利高本部経費率が10%超であれば、本部経費の削減を検討しなければならない。
たとえ粗利高本部経費率が10%以下であっても、営業スタッフを兼任させるなどして、本部経費のさらなる削減を検討することも大切である。
好調な業績を維持している中小企業は、営業部門だけに利益目標を与えるのではなく、管理部門に対してもしっかり利益目標を与えている。当然ながら、全社員の利益意識が高まると、業績拡大のスピードは一段と加速する。
収益を生み出さない管理部門は、人一倍、ロス・ムダ・ムラに敏感でなければなりません。その意識が収益部門の利益意識を高め、会社全体の経費の使い方に締まり(秩序と節度)を与えるのです。管理部門の利益意識が低下すると、会社全体が利益に無頓着になりますので、くれぐれも注意してください。