社長の重要な仕事の一つに「経営改善の推進」が挙げられる。
この経営改善の成果がうまく上がらない場合は、仕事の検証精度を磨いてほしい。
仕事の検証精度を高めれば、戦略修正がより良い方向に進み、経営改善の成果が自然と大きくなるからだ。
検証精度を高める方法は数知れずあるが、最も抑えるべきは「管理会計」と「組織力」である。
管理会計とは、事業活動の結果を客観的数値から分析する会計手法だが、管理会計で数字を絶えずモニタリングすると、仕事の検証精度がグッと高まる。
例えば、会社経営においては、やってみるまで結果が出ないことが沢山あるが、管理会計で数字をモニタリングしていると、客観的な根拠データがリアルタイムで把握できるので、悪い兆候も良い兆候もすぐに分かる。
つまり、行動結果の認知速度が上がり、失敗を最小限に食い止める、或いは、成功パターンを早期発見する、ということが可能になる。
当然ながら、管理会計の運用期間が長期にわたるほど、仕事の検証精度が磨かれて、経営改善の成果が大きくなる。
組織力も仕事の検証精度と密接な関係性がある。
例えば、組織力が高い会社では、良い兆候も悪い兆候も、現場の社員がすぐに発見する。
逆に、組織力が低い会社では、良い兆候も悪い兆候も、現場の社員が見逃しがちになる。いわゆる、見て見ぬふり、事なかれ主義に陥る。
組織力を高めるには、判断基準、情報共有、人財育成、社員満足度、コミュニケーションの5つのポイントが重要だ。
例えば、
社員に「判断基準」を与えれば、善悪の判断力が高まり、「情報共有」すれば、組織全体の判断力が高まる。
社員の「人財育成」を推進すれば、組織と現場の力が高まり、「社員満足度」を追求すれば、現場の士気とモラルが向上する。
社員との「コミュニケーション」が円滑であれば、経営者との一体感が増し、マンパワーが最大化される。
以上の5つの要素は、社長が率先垂範で実践することが大切で、この実践が不足すると、組織力と共に仕事の検証精度が低下し、様々な衰退リスクが噴出する。
前章で解説した組織力が高い会社の特徴として挙げられるのは、組織マネジメントの基本である「PDCAサイクル」が定着していることだ。
例えば、京セラ、日本電産、ユニクロ、ソフトバンクのように、たった一代で一兆円企業に成長した会社があるが、成長を後押ししたのはPDCAサイクルだ。
この4社のPDCAサイクルは、異常に速い。ソフトバンクに至ってはリアルタイムで業績集計が出来ているので、分速でPDCAサイクルが回っているともいえる。
PDCAサイクルが速ければ高い検証精度を維持することができるので、失敗の芽も成功の芽も、早い段階で摘み取ることができる。
結果を読むことはできても、結果を100%当てるとこなど不可能だ。つまり、すべての行動には想定外のリスクが付きまとっている。
こうしたリスクを放置したままの状態ほど危険なことはない。当然ながら、仕事の検証を疎かにすれば、会社はいとも簡単に衰退する。
財務バランスが悪い会社、生産性が低下している会社、業績が伸び悩んでいる会社は、仕事の検証精度が低下している可能性が高いので、日頃からしっかりと意識してみてほしい。