
すべての事業活動にはコストがかかる。
だから、コスト・費用の使い方は、企業の盛衰を決定づける重要な要素になる。
この記事では、社長が知るべきコストの投資判断、並びに、削る費用と増やす費用の見極め方について、詳しく解説する。

コストの分類(守りのコスト/攻めのコスト) について解説する。
コストは、既存事業の運営に使う費用は守りのコスト、未来の事業を創るための費用は攻めのコストに分類すると分かり易い。
守りと攻めのコストの配分は、守りに8-9割、攻めに1-2割の配分で割り振ると、未来志向のある活動が充実し、企業の永続性が着実に高まる。
守りのコストは、既存事業の運営に使う費用だが、常に最適化する心掛けが必要だ。特にムダムラの放置は、収益力を低下させるので気を付けてほしい。
攻めのコストは、成長投資と言い換えることができるが、研究開発、人財育成、新規市場開拓、新商品や新事業の投入、新技術やテクノロジーの活用などが挙げられる。
すべてのビジネスには新陳代謝の作用が働くので、攻めのコストを投下し続けないと、周囲の変化や進化についていけなくなり、少しのきっかけで衰退し易くなる。従って、時には利益を犠牲にしてでも投下し続ける意識が大切だ。

削ると会社が弱る費用について解説する。
削ると会社が弱る費用の代表格は「人件費(全業種)」、「攻めのコスト(成長投資)」、「減価償却費(製造業)」の3つだ。
人件費の削減は、生産性の改善を起点に行うのであれば問題ないが、単純な給与削減、賞与カット、昇給据え置き等はモチベーションの低下を招き、事業活動のパフォーマンスを著しく低下させる。
人件費を使うほどに成果(売上・利益・現金等)が拡大するスパイラルを回すには、人件費を削るのではなく、常に増加傾向を目指すことが大切だ。
攻めのコスト(成長投資)は前章で解説した通り、コスト全体の1-2割の配分で継続投下し続ける意識が必要だ。削るほどに未来の事業環境が厳しくなるので、計画的に運用することをお薦めする。
減価償却費は主に製造業に不可欠なコストになるが、この費用を極端に削ると設備の老朽化や陳腐化を招くリスクが高まる。
良好な設備環境(設備を起点に大きな売上・利益が稼げている状態)をキープするには、一定の減価償却費が必要だ。なお、一定の減価償却費は、資産効率を高める設備投資を計画的に推進するとキープできる。

利益を増やす費用の使い方について解説する。
利益を増やす費用の使い方は簡単だ。コストの費用対効果を徹底的に高めれば良いだけだ。
コストは売上を作るために費やす性質のものなので、基本、削るものではなく、使うものだ。
だから、自分の会社の経済領域にコストを強くダイナミックにぶつけるほど、獲得できる売上と利益は大きくなる。
コストの費用対効果を高めるポイントは選択と集中だ。
攻めのコスト、人件費、減価償却費(主に製造業)に加えて、守りのコストの中から上位コスト(トップ3程度)を抜き出し、これらの領域のコストの費用対効果を徹底して高めれば、利益は自然と増える。
例えば、上位コストが人件費、売上原価、減価償却費の3つだとしたら、
人財の教育と採用、仕入の低減と製造効率の向上、資産効率を高める設備投資の推進といった行動目標を掲げ、組織全体で実践するほど、上位コストの費用対効果が高まり、コストを使うほど売上と利益が増えるスパイラルが回る。
上位コストは業界で同じ構造になり易いので、上位コストの使い方が上手な会社は、大抵は業界のリーディングカンパニーになる。コストを制する者が、業界を制し、未来を制するのだ。

最後に、コストの投資対効果の測り方について解説する。
コストの投資対効果(費用対効果)は、売上高経費率で測定できる。
コストは売上を作るために費やすものだが、売上に占めるコストの割合は小さいほど良い。
売上高経費率(総コスト÷売上高×100)は、売上に占めるコストの割合を示す経営指標なので、投資対効果(費用対効果)の測定にピッタリだ。
例えば、売上が1,000万円、総コストが900万円であれば、900万円÷1,000万円×100=売上高経費率90%となる。売上の9割がコストで、残り1割は利益なので、良好な経営状態と言える。
売上1,000万円に対して、総コストが1,100万円になると、1,100万円÷1,000万円×100=売上高経費率110%となり、売上よりも多くのコストを費やしている状態、つまり、赤字経営となる。
売上高経費率が80~90%の範囲内に収まっている会社は、概ねコストの投資対効果(費用対効果)が高いと言える。売上高経費率が95%以上の会社はコストの投資対効果が低い状態にあるので、早急にコスト構造の最適化に取り組んだ方が良いだろう。
(この記事は2026年1月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」