多角化とは、本業の他にも多角的に事業を展開することである。
多角化戦略には、水平型・垂直型・集中型・集成型の4つの型があり、それぞれにメリットとデメリットがある。
この記事では、多角化4つの型と中小零細企業における多角化戦略のメリット・デメリットについて、詳しく解説する。
多角化とは、本業の他にも多角的に事業を展開することである。
中小零細の企業経営の成功セオリーは、多角化とは反対の「選択と集中」が一般的だが、やはり、一定の多角化がなければ衰退リスクは大きくなる。
例えば、選択と集中で事業構成をシンプルにするほど、事業効率が高まり、収益も上がり易くなるが、何かの拍子で既存商品や販路等が不調に陥ると、その瞬間に衰退リスクが大きくなる。
ショップ(実店舗)一択の販路しか持っていない企業が、災害や不可抗力等でショップの集客力を失い、事業が衰退するパターンは典型になる。
こうした事業リスクは、ショップ以外(通販・委託・卸売り等)の販路を多角化で拡大することで払拭できる。
選択と集中で本業の事業価値を高めることは事業存続の絶対条件になるが、その本業の顧客のすそ野を広げる手段として、多角化戦略は大いに役立つのだ。
なお、多角化戦略を大別すると、水平型・垂直型・集中型・集成型の4つの型がある。それぞれの特徴とメリットとデメリットについて、順を追って詳しく解説する。
水平型多角化について、詳しく解説する。
水平型の多角化とは、既存顧客、並びに、既存顧客に類似する顧客に対して、既存の経営資源やノウハウを活かして作った新商品を投入する多角化戦略である。
商品の横展開と同時に販路開拓にも力を入れている総合家電メーカーのようなビジネスモデルが典型になる。
また、既存販路のデジタル化(ネットショップ・ネットモール・オンライン化等)を進めて、顧客のすそ野を広げる戦略も水平型多角化に該当する。
既存の顧客・知見・経営資源・ノウハウ等をフル活用できるので、比較的リスクの低い多角化戦略になる。
中小零細企業においても、水平型の多角化戦略はメリットが多く、デメリットが少ないので、積極的に展開したい多角化戦略と言える。
垂直型多角化について、詳しく解説する。
垂直型の多角化とは、既存顧客、並びに、既存顧客に類似する顧客に対して、新しいノウハウをベースに作った新商品を投入する多角化戦略である。
最新のデジタル技術や通信インフラを活用した新商品、或いは、製造業が非製造業を買収することで生まれる新商品を既存顧客に提案する戦略は典型になる。
また、既存ビジネスの前後の事業分野を新たに取り込み、既存顧客のすそ野を広げる戦略も垂直型多角化に該当し、企画・製造・流通・販売等をすべて担うユニクロのようなビジネスモデルは典型になる。
垂直型の多角化戦略は、専門性と堅実性が肝になるので、素人レベルで安易に手を出すと失敗する可能性が高い。
短期的に事業規模を拡大できるメリットはあるが、中小零細企業にとってはデメリットの方が大きい。
垂直型の多角化を展開する場合は、スモールビジネスからスタートし、トライ&エラーを繰り返しながら多角化事業の規模を大きくする意識が重要になる。
集中型多角化について、詳しく解説する。
集中型の多角化とは、既存の経営資源やノウハウを活かして作った新商品を、全く新しい顧客(市場)に対して投入する多角化戦略である。
カメラ・フィルム技術を医療機器・化粧品等に転用した富士フィルムのようなビジネスモデルは集中型多角化の典型になる。
また、法人向け商品の製造技術を活かして、家庭用や末端消費者向けの商品を作り、新たな顧客を開拓する戦略も集中型多角化に該当する。
集中型の多角化戦略は、アイデアひとつで事業化できるメリットがある一方で、営業力(販売力)が肝になるので、販売の難易度が高いというデメリットがある。
しかし、昨今はデジタル技術(HP・SNS等)を使えば、比較的簡単に新たな販売ルートを開拓することができるので、中小零細企業であっても積極的に挑戦すべき多角化戦略と言える。
最後に、集成型多角化について、詳しく解説する。
集成型の多角化とは、既存の顧客も既存のノウハウも全く接点がない分野で新たに展開する新規商品、あるいは、新規事業のことである。
集成型多角化のことをコングロマリット型多角化ともいうが、複数事業を展開している総合商社などが典型になる。
また、小売業者や製造業者が金融業に進出するケースや通信業者が農業や飲食業に進出するケースも集成型多角化に該当する。
集成型の多角化は、多額の先行投資を要するだけでなく、既存ビジネスとの接点がゼロなので超ハイリスクであり、進出先の市場にライバルが多い場合はリターンも少ないため、資本力に乏しい中小零細企業には不向きな多角化戦略と言える。