新規事業を成功に導く秘訣は、独立採算の損益管理にある。
なぜなら、新規事業の損益管理がいい加減だと、新規事業の成功率が著しく低下すると共に、会社全体の損益管理もいい加減になるからだ。
この記事では、新規事業を成功に導く損益管理方法について、詳しく解説する。
新規事業の成功は、独立採算が肝になる。
なぜなら、新規事業を独立採算で管理しなければ、新規事業の損益が不明瞭になり、失敗リスクが高まるからだ。
新規事業の損益が不明瞭だと、成功と失敗の境界線が不明瞭になるので、事業撤退、或いは、事業への積極投資の経営判断基準が曖昧になる。
例えば、新規事業が赤字経営に転落した際に、事業撤退のタイミングを誤り、本業の収益を圧迫する事態を招くこともあり得る。
或いは、新規事業が順調に成長していたとしても、成長投資の判断を誤り、成長の芽を摘んでしまうかも知れない。
このように、新規事業の損益管理は成功を左右する重要な要素になり、独立採算の管理精度が新規事業の成功を決定づける。
独立採算の損益管理がされていない新規事業の成功率は極めて低く、新規事業が失敗に終わるだけなら良いが、場合によっては本業の利益を食いつぶし、経営危機に陥る事もあり得る。
新規事業を成功に導く確かな判断基準を持つには、損益の実態を掴む独立採算の損益管理が欠かせないのだ。
新規規事業を成功に導く損益管理方法について、詳しく解説する。
「新規事業」の独立採算を実現する損益管理方法と損益項目の概要は、下表の通りになる。
売上 |
新規事業の売上のみを計上する |
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売上原価 |
新規事業の売上原価のみを計上する |
売上総利益 |
新規事業の売上総利益を算定する |
直接経費 |
新規事業に関わる直接経費のみを計上する。(新規事業単体の損益を集計するうえで最も大事なのは、直接経費の集計である。責任者の人件費や家賃等の固定費、水道光熱費等の変動費まで、新規事業に関わっている全ての直接経費を集計する) |
貢献利益 |
新規事業の貢献利益を算定する。 |
本部経費 |
本部経費を一定比率に応じて配賦する。 |
営業利益 |
新規事業の営業利益を算定する。 |
「新商品」の独立採算を実現する損益管理方法と損益項目の概要は、下表の通りになる。
売上 |
新商品の売上のみを計上する。 |
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売上原価 |
新商品の売上原価のみを計上する。 |
売上総利益 |
新商品の売上総利益を算定する。 |
直接経費 |
新商品に関わる直接経費のみを計上する。(新商品を販売するうえで必ず要する直接経費を全て集計する) |
貢献利益 |
新商品の貢献利益を算定する。 |
新規事業の成功と失敗の判断基準は、会社全体への利益貢献度を示す「貢献利益」を用いる。
貢献利益が黒字の場合は会社への貢献度が高く、貢献利益が赤字(マイナス)の場合は、会社への貢献度が低い、言い換えると、会社の足を引っ張っる事業であることが分かる。
貢献利益が黒字であれば成長事業として投資を加速しても問題ないが、貢献利益が赤字であれば本業の収益圧迫を解消するための撤退を検討しなければならない。
立ち上げ当初から赤字覚悟の事業という位置づけであれば、赤字の許容限度額を事前に設定しないと会社全体の損益が際限なく悪化する。当然ながら、全体の収益を全て食いつぶすと、会社は倒産危機に陥る。
倒産危機に陥る中小企業は、赤字事業や赤字商品を放置しているケースが多い。
新しく物事を始めたら、しっかりと行く末を見守ることが大切で、新規事業を立ち上げた場合は、独立採算の損益管理がそれに当たる。何事もやりっぱなしでは、次につながる確かな一手は打てないのだ。
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新規事業の損益管理は、将来の事業計画を作成するうえでも役に立つ。
例えば、過去の損益実績は、具体性があり、数字をリアルにイメージ(予測)することができるので、将来の事業計画作りに活用すると計画の精度が高まる。
また、過去の損益実績は、経営戦略や戦術の検討資料として活用することもできる。さらに、新規事業の損益管理は、仮説の検証作業でもある。
新しい取り組みが仮説(計画)通りに推移することはなく、大体は仮説(計画)を下回る結果になるが、仮説と検証を繰り返すことで計画の精度が磨かれる。
計画が磨かれれば、仮説の精度が上がり、新規事業の成功率も自ずと上がる。