管理会計は中小企業の経営力を上げる|管理会計の基本機能と効果

管理会計は中小企業の経営力を上げる

 

管理会計とは、会社の数字を有益な情報に変換し、中小企業の経営力を上げる会計手法のことで、学問的には統計学の範囲に入る。

 

中小企業の経営力、強いては業績を上げるうえで、管理会計ほど優れた効果を発揮するマネジメントツールはない。

 

この記事では、会社の経営力向上に役立つ管理会計の基本機能と効果について、詳しく解説する。

 

 

管理会計の基本は数字の活用にある

 

管理会計を通して得られる有益な情報量が増えるほど会社の経営力が上がり、業績改善が加速する。

 

管理会計の有り無しで中小企業の成長と衰退が決まるといっても過言ではないが、管理会計の基本は、会社の数字の活用にある。

 

会社の数字とは端的に事業活動の結果のことで、例えば、人を雇えば人件費が発生し、モノを売れば売上が発生する。

 

すべての事業活動は、会社の数字に集約されるが、会社の数字を漠然と眺めるだけでは会社の経営力は向上しない。

 

会社の数字を経営に活かすには、数字の傾向や性質を分析しなければならず、そのための分析ツールが管理会計になる。

 

管理会計を効果的に運用するには基本を抑えることが不可欠だが、管理会計の基本機能と効果は5つの作業ステップを理解すると分かる。管理会計の基本の作業ステップについて、順を追って詳しく解説する。

 

 

管理会計の基本ステップ1「収集・把握」

 

管理会計の基本ステップ1は「収集・把握」である。

 

収集・把握とは、会社の数字を認識する工程のことだ。

 

元になる会社の数字は、財務諸表、売上台帳、顧客台帳など等、経営に関わる全ての数字が対象になる。

 

これらの会社の数字は、有益な情報源(インプット)になるので、常に高い整合性をキープする必要がある。元の数字の整合性がいい加減では管理会計の効果(アウトプット)もいい加減になる。

 

会社の数字は至るところに転がっている。財務諸表だけが会社の数字ではなく、売上帳、仕入帳、商品台帳、顧客台帳、勤怠表など等、あらゆる領域に数字が転がっている。

 

これらの数字を如何に見つけるかが、管理会計の効果を最大化する秘訣であり、この収集と把握が、管理会計の効果を決定づける出発点になる。

 

 

管理会計の基本ステップ2「整理・分析」

 

管理会計の基本ステップ2は「整理・分析」である。

 

整理・分析とは、収集・把握した経営データを整理分析する工程のことだ。

 

データの整理は年単位、月単位、週単位、など等、一定期間に区切ると分析データとして採用しやすくなる。

 

データの分析は様々な経営指標を用いた分析のほか、平均や傾向の分析、推移や定点観測など等、様々な角度から数字を分解することでデータが整理される。

 

また、分析した数字をあらゆる角度から対比することも重要な作業になり、例えば、前年対比、前年同月対比、前年同週対比、など等、対比の手法は様々ある。

 

データの分析・整理、並びに対比の精度が、管理会計の有益性を決めるといっても過言ではない。

 

 

管理会計の基本ステップ3「取捨・選択」

 

管理会計の基本ステップ3は「取捨・選択」である。

 

取捨・選択とは、整理・分析された経営データを取捨選択する工程のことだ。

 

会社の数字を収集し分析した結果の中には、経営判断の根拠材料として重要性が高いものがある一方で、重要性の低いものもある。

 

重要性の低い経営データの収集や分析は時間のムダであり、時間のムダは、即、コストロスに繋がるので、重要性の高低に応じて、会社の数字を取捨選択しなければならない。

 

経営データの分析結果を取捨選択する作業を継続すると、数字の勘が磨かれる。そして、勘が磨かれると会社の数字を見渡しただけで、使える数字に反応できるようになる。つまり、会社の数字に対するピントが合ってくる。

 

また、取捨選択を通じて使える数字と判定された情報は、経営判断を支える良質な情報になる。良質な情報の精度が高まるほど、経営判断を誤るリスクが低下するが、これこそが、管理会計の最大の効果といっても過言ではない。

 

 

管理会計の基本ステップ4「予測・推定」

 

管理会計の基本ステップ4は「予測・推定」である。

 

予測・推定とは、取捨・選択された経営データを予測や推定に活かす工程のことだ。

 

先の3つのステップを経て分析された数字は、将来予測、或いは行動成果の推定に活用できる。

 

せっかく分析した数字を過去の行動根拠や検証だけに限定活用するのはもったい。将来予測や、行動成果の推定に活用してこそ、管理会計の効果が最大限に活かされる。

 

管理会計は、過去と未来を見通す情報を提供してくれる。そして、長期的に管理会計を運用すると予測と推定の精度が高まり、会社の経営力も自ずと高まる。

 

 

管理会計の基本ステップ5「表現・伝達」

 

管理会計の基本ステップ5は「表現・伝達」である。

 

表現・伝達とは、先の4つのステップを経た経営データを表現・伝達する工程になる。

 

管理会計ではじき出された数字は、会社経営において重要な意思決定の根拠として活用できる。せっかくの有効な数字を、経営者ひとりの胸の内に収めていてはもったいない。

 

管理会計の数字を会社全体で活用するには、数字を社員と共有することが不可欠になる。

 

社員と数字を共有すると、経営者と社員の間に「数字」という共通言語が生まれる。行動も、目標も、修正も、数字という共通言語があれば、意思決定がスピーディーになり、業績改善を効果的に推進できる。

 

以上の5つの基本ステップの精度を高めながら管理会計を運用すると、会社の経営力が高まり、業績改善のスピードが一段と加速する。

 

伊藤のワンポイント
 

管理会計は企業成長の必須ツールです。管理会計の運用効果を高めるにはこの記事で紹介した5つの基本ステップの精度を高めることです。どこか一つでも精度が劣ると、管理会計全体の効果・精度が低下します。企業の盛衰は管理会計で決まるといっても過言ではありませんので、しっかり運用してください。