三代目社長が会社を倒産させる事例は非常に多い。
事実、わたしが過去に関わった会社再建の全体の6割が三代目社長の会社だった。
三代目社長が会社を倒産させる理由として考えられるのは、第一に「経営能力が低い」ということが挙げられる。
なぜ、経営能力が低い三代目社長が多いのかというと、創業者に比べて、会社経営の経験が圧倒的に少ない状態で、社長の座に就いてしまうからだ。
創業者は、経営資源である、ヒト、モノ、カネ、情報を自らの力で集めて、事業を開始しているだけあって、経営能力を磨く機会に恵まれている。
また、身銭を切る、或いは、借金をするといった金銭的リスクも負っているので、損得勘定や金銭感覚も十分に磨かれる。
さらに、会社を軌道に乗せるまでの苦労や会社の成長と衰退の勘所を十分に経験しているため、会社経営を安定させるための経営実学をしっかり体得している。
創業者の代で会社の経営が安定し、創業者から二代目にバトンが引き継がれ、会社の経営状態が安定するほど、経営者としての能力を研鑽する機会は失われる。
当然ながら、創業者と同じような経営体験ができない三代目社長の経営能力は、自ずと創業者よりも劣ってしまう。
事実、過去にわたしが関わった会社再建先の三代目社長の経営能力は燦々たるものだった。
なお、経営能力が低い三代目社長の特徴は当サイト内の「三代目社長の宿命と中小企業の事業承継の課題」で紹介している。
三代目社長が会社を倒産させる本当の理由は「経営能力が低い」という理由以外にも、決して見逃してはならない大きな理由がある。
それは、「ビジネスモデルの破たん」である。
創業者から三代目社長に至るまでの時間は50年~60年が一般的である。
つまり、三代目社長が受け継いでいるビジネスモデルは、半世紀前のビジネスモデルということである。
会社倒産の危機に瀕する三代目社長は、祖父の時代から、或いは、父親の時代からのビジネスモデルに何の疑問も抱かずに会社を受け継ぎ、ビジネスモデルの破たんに気が付かないまま、経営に当たっているケースが多い。
ビジネスを取り巻く環境は刻一刻と変化している。半世紀も立てば、なおさらである。
当然ながら、時流の変化や最新のテクノロジーに乗り遅れると、簡単に事業価値が陳腐化してしまう。
事業価値が陳腐化するということは、ビジネスモデルが破たんし、市場競争からはじき出されるということである。
一度、市場競争からはじき出されると、そこから挽回するのは至難の業で、会社が衰退する一方という事態に陥ることも珍しくない。
創業者からの時間的距離が短い二代目社長に比べて、三代目社長の役割は大きく、会社の成長と衰退の分岐点は、三代目社長が握っているといっても過言ではない。
会社倒産から身を守るために三代目社長がすべきことは、ビジネスモデルの総点検と変化への順応である。
変えるべき部分を変え、残すべき部分を残す。
これが、三代目社長の生きる道である。
経営者が三代も下ると、半世紀ほどの時が経過します。事業環境は絶えず変化しています。変化へのおざなりな対応は事業の陳腐化リスクを飛躍的に高めます。つまり、代々の経営姿勢が、後継者の末路を決めるのです。次世代を見据えた会社経営を意識することの重要性は、ここにあります。