どんぶり経営とは、ドンブリ勘定でお金を管理している経営状態のことである。
どんぶり勘定で会社の数字が曖昧になると、経営判断の根拠も曖昧になり、会社経営の失敗リスクが飛躍的に高まる。
この記事では、どんぶり勘定の弊害から倒産リスクに至るまで、詳しく解説する。
どんぶり経営とは、会社の数字を軽視する経営姿勢のことだが、分かりやすくいうと、「入るお金」と「出るお金」の管理がいい加減ということである。
大きな失敗が許されない中小企業の場合、どんぶり経営からの脱却が成功と失敗を分かつといっても過言ではない。
どんぶり経営の分かりやすい例をいくつか挙げる。
▶A店舗とB店舗の売上を、一つのどんぶりで勘定する
▶A工場とB工場の工場経費を、一つのどんぶりで勘定する
▶営業部門と製造部門の損益を、一つのどんぶりで勘定する
このようなどんぶり勘定の経理を行うと、最終的な会社全体の損益は把握できるが、個々の部門損益が全く把握できなくなる。
更に、具体的なぶんぶり経営の例をいくつか挙げる。
▶A店舗のために費やした広告宣伝費を、一つのどんぶりで勘定する
▶A工場の修繕費用を、一つのどんぶりで勘定する
▶営業部門の接待交際費を、一つのどんぶりで勘定する
個々の損益が把握できなければ、その店舗や工場の正しい損益が見えなくなり、適正な経営状況であるか否かの判断がつかなくなる。
当然ながら、経営状況が分からなければ、会社の問題点や課題を把握することができず、合理的かつ具体的な経営目標を掲げることもできなくなる。
要は、どんぶり経営が常態化すると、まともな会社経営ができなくなってしまうのだ。
これが、どんぶり経営最大の弊害である。
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中小企業にありがちなどんぶり経営の弊害と倒産リスクについて、詳しく解説する。
下図は、前章で解説したどんぶり経営例に用いた会社組織のイメージ図である。
この中小企業は、営業部と製造部の2つの部門の下に4つの部署があり、会社全体を構成している。
夫々の部門や部署毎の損益集計がどんぶり勘定で行われていたらどうなるだろうか?
会社全体が良好な黒字経営であれば問題ないのかも知れないが、
例えば、
▶B店舗が販売不振に陥っていたら?
▶B工場の操業度(※1)が著しく落ち込んでいたら?
営業部門の販売不振も製造部門の操業度低下も、個々の部門損益を正しく把握していなければ、全く見えてこない。
当然ながら、事前に経営改善の手を打つことは不可能だ。
一部門の業績低迷が会社全体の損益にハッキリと表れてくるころには末期状態ということも珍しくない。その場合、不振部門の再建は手遅れとなる。
また、どんぶり経営はコスト管理にも影響を及ぼす。
例えば、A店舗とB店舗の損益がひとつのどんぶりで勘定されていたら、夫々の店舗の正しい損益が把握できない。
これでは双方のトップである店長の成績評価も適正に行えない。更に、店舗の損益も、店長の成績も曖昧では、コスト管理も曖昧になる。
杜撰なコスト管理は「ムダとムラ」を生み出し、収益性と生産性を著しく低下させる。そして、自ずと業績悪化の循環に陥り、会社は倒産へ傾く。
さらに、業績悪化の時に手に負えなくなる点も、どんぶり経営の弊害になる。
どんぶり経営による会社倒産は、むしろ必然といってもいい。
※1 操業度(操業率)とは、企業が有する生産能力の一定期間における利用状態のこと。例えば、生産能力の最大値を 100として、それに対する実際の生産量の比率で表わされる
どんぶり経営は、業績が良い場合であっても、さまざまな弊害がある。
例えば、
▶A店舗の販売が好調を維持している
▶A工場の操業度が上向いている
好調部門があったとしても、個々の部門損益が分からなければ、具体的な好調具合が見えてこない。
当然ながら、人員の増減戦略や設備の投資戦略に大きな影響を及ぼすことになり、不調な部門の人員を増員したり、設備投資を行ったりする判断ミスも起こり得る。
経営判断の誤りは、倒産に繋がる重大なリスクだ。
どんぶり経営が常態化して会社の数字が曖昧になると、全ての経営判断が曖昧な根拠の上に成り立つことになる。
曖昧な経営判断ほど恐ろしいものはなく、場合によっては、失敗しか道がないといった状況に陥ることもある。
会社経営の基本は、第一に正確な数字を把握することに尽きる。正しい会社経営を行うのであれば、どんぶり経営から脱却しなければならない。
どんぶり経営は衰退リスクを高めるだけで、メリットはひとつもありません。また、どんぶり経営は会社(経営者)の論理性と客観性を著しく低下させるので、漠然とした経営不安も山積します。事業活動の結果、並びに、成功と失敗の兆候は、すべて数字に表れることを決して忘れないでください。