どんぶり勘定とは、収支の勘定がいい加減なことを云う。
会社経営における「どんぶり勘定」は収支管理の簡素化メリットがある一方で、収支計算の精度を低下させるデメリットがある。
この記事では、どんぶり勘定の意味、並びに、どんぶり勘定の会計メリットや経営デメリットに至るまで、詳しく解説する。
どんぶり勘定とは、収支の勘定がいい加減なこと、或いは、細かな収支を勘定せずに無計画にお金を使うことを云う。
どんぶりの語源は、江戸時代に職人(火消し・大工・商人等)が身につけていた腹掛けについていた「どんぶり」と呼ばれる大きなポケットと云われている。
腹掛けそのものをどんぶりと呼んでいた節もあり、そのどんぶりから無造作にお金を出し入れする仕草、或いは、どんぶりを愛用している職人衆のあるにまかせて無計画にお金を使う姿勢がどんぶり勘定のルーツと思われる。
どんぶり勘定の歴史は古いが、現代においても使い方は変わらず、例えば、収支の勘定がいい加減な会社経営を表す「どんぶり経営」、あるにまかせて無計画にお金を使う社長を表す「どんぶり勘定」などは典型例になる。
どんぶり勘定の会計メリットは多くない。
せいぜいあって、会計の作業や手間が簡素化されることが唯一のメリットといえる。
どんぶり勘定のよくある会計パターンを挙げると、極力勘定科目を増やさない、事業別や担当者別の仕訳を増やさない、経費精算を数カ月分ため込む、売上請求を数カ月分ため込む、領収証等を税理士に丸投げする、など等がある。
何れも、会計に携わる当事者の作業が簡素化されるため、どんぶり勘定が定着するほど、会計作業が楽になる。
どんぶり勘定の会計デメリットはじつに多い。
例えば、期間損益の収支が曖昧になる、整合性が低下する等は典型的なデメリットで、商品や事業の個別収支が不明になる等の深刻なデメリットもある。
また、収支が曖昧になるほどに会計資料の精度(正確性)が低下するので、経営判断の根拠に使えない、或いは、銀行等からの信用が低下するといった二次的なデメリットも生まれる。
こうしたデメリットを払拭するには、どんぶり勘定から脱却するために、会計の精度と整合性を高めることが不可欠になる。
どんぶり勘定の経営メリットは多くない。
せいぜいあって勘と経験に頼った会社経営を何の制約もなく推し進めることができることが唯一のメリットといえる。
例えば、数字が苦手な経営者であれば、どんぶり勘定に固執することで苦手な数字から解放されるメリットが享受できる。
計画や節約が嫌いな経営者であれば、どんぶり勘定に固執することで、あるにまかせて無計画にお金を使えるメリットが享受できる。
このように、あるがまま、思うがまま、ストレスフリーで会社経営ができる点が、どんぶり勘定の唯一のメリットといえる。
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どんぶり勘定の経営デメリットはじつに多い。
例えば、勘と経験に頼った会社経営に陥ることで頻発する決断ミスや長期的視点の欠落から陥る資金繰りの失敗などは、どんぶり勘定の典型的なデメリットになる。
また、数値管理が組織に定着しない、事業活動の検証精度が著しく低下する等のデメリットもあり、大概は、経営者の勘が鈍った瞬間に衰退リスクが噴出する。
更に、万が一業績が悪化すると、業績悪化の原因特定(損益の詳細分析)に時間がかかり、健全化の成功確率が著しく低下するデメリットもある。
業績が好調であっても、どんぶり勘定で複数の事業部の収支が曖昧になっている場合は、成長投資の正しい采配ができなくなるデメリットもある。
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どんぶり勘定は、百害あって一利なしだ。
どんぶり勘定は、会社経営の生命線になる決断の精度と検証精度を著しく低下させる。
経営者の論理性と客観性も著しく低下させるので、漠然とした経営不安も消えなくなる。
事業活動の結果、並びに、成功と失敗の兆候は、すべて数字に表れる。どんぶり勘定に固執すると、そうした成功と失敗の兆候を見落とし、高確率で経営に失敗するので、くれぐれも気をつけてほしい。