稟議制度とは、会社経営に関わる事案に対して、稟議書を作成し、社内の役職者の承認を経て最終的に社長が決裁する仕組みのことだ。
大企業では一般的な稟議制度だが、導入している中小企業は意外と少なく、稟議制度を導入していない中小企業ほど、経営管理が杜撰で、会社の倒産リスクも高い。
この記事では、稟議制度がない会社の倒産リスクについて、詳しく解説する。
稟議制度を導入していない中小企業ほど経営管理が杜撰で、会社の倒産リスクも高い。
事実、わたしが再建調査に入ったすべての中小企業においても稟議制度は導入されておらず、様々な経営リスクを抱えていた。
例えば、稟議制度を導入しないことで起こり得る経営リスクを抜粋すると次のような症状(倒産リスク)がある。
☑社員のコスト意識が甘くなる
☑販売計画や目標がいい加減になる
☑経営改善に取り組む姿勢が希薄になる
☑社内ルールが守れない。ルールが時間と共に形骸化する
☑経営改善に関して、経営者と社員の意思疎通が図れない
☑社員が自腹で会社の備品を購入する。公私の区別が曖昧になる
☑設備のメンテナンス管理が杜撰になり、かえって修繕が頻繁化しコスト高に陥る
☑社員が会社に対して経営改善案を提案しても、説明のないまま放置されたり聞き入れてもらえなかったりする
☑社員の意見が経営に反映されない。また、このような会社の対応(反応)に対して、社員が新たな提案を断念する
安定経営を実現するには、会社の規模に関係なく、稟議制度を導入した方が良い。
なぜなら、稟議制度を導入すると、様々な経営リスクが抑制され、会社の安定経営に役立つからだ。
行き過ぎた稟議管理は生産性の低下を招くが、10万円以上の投資稟議、新商品や新規事業の提案稟議等、会社の成長を後押しする稟議は導入した方が効果的だ。なお、一般的な稟議制度の概要は下記の通りである。
経営面 |
経営方針の転換、経営改善、又は管理システムの導入等々 |
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人事面 |
研修の開催、セミナーの開催、福利厚生の改善等々 |
営業面 |
新規顧客の開拓、広告宣伝の展開、顧客サービスの向上等々 |
開発面 |
新商品の開発、品質改善、リサーチの展開、開発設備の導入等々 |
製造面 |
製造工程の改善、製造設備の導入、メンテナンス計画の導入等々 |
件名 |
事案の内容を分かりやすくタイトルにして記載する。 |
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内容 |
事案の内容を簡潔に記載する。 |
詳細 説明 |
5W1Hの要領で、「なぜ? (Why) 」、「いつ? (When) 」、「どこ? (Where) 」、「どんなふうに? (How) 」、「だれ? (Who) 」で、詳細理由を記載する。また、販売や開発事案の場合は、想定の販売計画や製造計画、収支計画、検証の根拠と結果なども記載する。 |
金額 |
必要な金額、決済方法、支払日等を記載する。 |
稟議の承認者は金額の多寡で決定するのが一般的である。
例えば、中小企業の場合は、3万円以下は部長承認、10万円以下であれば役員承認、10万円以上であれば社長承認というのがひとつの目安になる。
なお、稟議書はあらゆる経営分野で作成されるので、稟議書の作成と承認(合否)を繰り返す過程で、経営感覚や思考力等の能力が磨かれる。
従って、稟議制度は、経営者自身の能力開発と共に、社員の人材育成効果も期待できる。社員が成長すれば、会社も成長するので一石二鳥といえる。
ほかにも、経営課題を解決するうえでの経営者と社員のコミュニケーションツールにもなるので、経営改善の成果を一段と押し上げる効果もある。
稟議制度は経営管理の要です。単純に経費の良し悪しの判定に止まらず、新商品・新規事業・設備投資など、会社経営の多方面で活用できます。ですから、稟議制度の運用精度が上がると、経営戦略、業績管理、人材育成、成長投資等、あらゆる会社経営の領域にプラスの波及効果が生まれます。