新規販路を開拓すると、売上拡大に弾みがつく。
また、ターゲット顧客にフィットする販路を新規開拓するほど、売上を増やしやすい環境が整う。
ビジネスにおける販路は主に下図のような販売ルートがある。
左端に最もBtoCの純度が高い実店舗があり、そこから右に移行するにつれてBtoBの純度が高くなる。中央には個人と法人、両方に向けた販売ルートがあり、BtoCとBtoBの境界が無くなる。
会社の大小関わらず、基本的には販路が多いほど、顧客にフィットする商品の売り方や作り方が最適化されるので、事業活動のパフォーマンスは上がり易くなる。
例えば、サントリーという大企業があるが、同社は上図の販売ルートをすべて保有している。
法人直販は大手小売り・量販店等、法人向け卸売りは外食チェーン等、個人向け卸売りは酒屋等、個人・法人向けECはアマゾン、アスクル等、外部ECは楽天、カクヤス等、自社ECも保有し、工場に隣接する直営ショップ(実店舗)も保有している。
なお、中央を起点に左右の両極に近づくにつれて、中間マージンが無くなり、獲得利益が大きくなる。(例外は下請け構造の取引)
また、BtoCとBtoBの境界線がない個人・法人向けEC(アマゾン・アスクル・モノタロウ等)は、テストマーケティングに最適の販路になる。
個人向けの商品が法人に売れたり、法人向けの商品が個人に売れたり、意外なターゲット顧客が見つかり、反応を見ながら商品をブラッシュアップすると思わぬヒットに恵まれることもある。
新規販路を開拓して売上を拡大した事例について紹介する。
個人向けの商材を扱っている会社だが、指導前の売上は6.5億円、個人販売70%:法人販売30%、個人会員5万人の成績だった。
この会社の場合、販売できる商品数に限りがあった為、利幅の取れる個人向け販売の比率を高める新規販路開拓を推進した。(BtoC純度の高い実店舗と自社ECに販路集約)
結果、僅かな期間で売上8億円、個人取引99%:法人1%、個人会員6.5万人という成績改善が実現できた。
新規販路開拓を推進し、BtoCの純度を高めることで得られたメリットは沢山ある。
例えば、自分たちのメッセージで商品の魅力を伝えられるようになった。商品の販売力と開発力が一段と磨かれて売上拡大が加速した。法人向け取引よりも利幅が改善されて、収益性が良くなった。
さらに、自社ECに海外向けECを実装して海外売上比率を高めることにも成功した。口コミやメディアでの拡散力も強化され、競争優位性が高まり、経営が益々安定した。
以上の例のほか、売り方を工夫して新規販路を開拓する手もある。
例えば、スポーツジムはBtoCの純度の高い実店舗をベースにビジネスを展開しているが、オンライン向けのヨガやストレッチ商品を開発すれば、自社ECという新規の販路開拓ができる。さらに、ジムを福利厚生サービスの一環として大企業向けに売り込めば、法人直販という新規の販路開拓ができる。
販路が最適化されているか否か、新規販路の開拓余地が無いか否か、折にふれてチェックすることをお薦めする。
(この記事は2025年3月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」
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