ファブレス経営とは、自社で生産設備を持たずに、外部の協力工場に100%生産委託しているメーカーのことである。
ファブレス経営戦略は、外部資本の活用を起点とした新商品や新ビジネスの展開を可能にするので、小さな会社であっても成長を加速することができる。
この記事では、中小企業に適したファブレス経営戦略について、詳しく解説する。
ファブレス経営とは、自社で生産設備を持たずに、外部の協力工場に100%生産委託しているメーカーのことである。
ファブレスの語源は「fabrication=工場」が「less=ない」が由来になっており、製品寿命が短い半導体分野で生まれたビジネスモデルになる。
ファブレス経営戦略は、外部資本の活用を起点とした自社ブランドの新商品や新ビジネスの展開を可能にするので、小さな会社であっても成長を加速することができる。
製造環境の柔軟性を高めるために製造分野を全て外部資本化することで、低コスト、且つ、高い競争優位性をキープしながら自社ブランド品の製造販売ができるので、ファブレス経営戦略で世界的企業に躍進した会社も数多にある。
また、リース等を中心に経営基盤やビジネスモデルを構築し、自前で大きな資本(設備・機械・重機・人員・専門職)を抱えない事業戦略も、ファブレス経営戦略のひとつになる。
ファブレス経営は、自らは商品の設計やマーケティング、販売や請負などに特化し、生産を外部工場に委託する、或いは、必要な経営資源を外注で取り込むことにより、小さな会社でも自由なビジネス展開や事業形態の実現を可能にする。
また、新事業の構築に必要な投資費用を負担することなく、新しい商品やビジネスを市場に投入することができるのもファブレス経営のメリットといえる。
このように、外部資本を活用した事業体制を構築する戦略が、ファブレス経営の特徴であり、なかには、設計なども外部に委託し、販売のみを行う企業など、さらに事業特化したファブレス企業もある。
従って、ファブレス経営は資本力に乏しい中小企業に適した経営戦略といえる。
ファブレス経営は事業サイクルのスピードと共に、会社の成長を加速させる利点もあるので、マーケティングに成功して独自市場を築くことができれば、高収益のビジネスモデルを実現することができる。
例えば、ファブレス経営で成功した世界的企業として、アップルとナイキが挙げられる。
1974年創業。アップル(Apple Inc.)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く、インターネット関連製品・デジタル家庭電化製品および同製品に関連するソフトウェア製品を開発・販売する世界的ファブレス企業である。
1968年設立。ナイキ(Nike Inc.)は、アメリカ合衆国オレゴン州に本社を置くスニーカーやスポーツウェアなどスポーツ関連商品を扱う世界的ファブレス企業である。
ファブレス経営戦略を展開しようとしている会社、或いは、ファブレス企業が注意すべき点は二つある。
それは、「生産工場の選定」と「独自市場の創出」だ。
例えば、ファブレス経営戦略を推し進める中小企業が、生産工場の選定を誤ると倒産リスクが高まる。また、仮に適切な生産工場が見つかったとしても独自市場の創出が出来なければ販売活動がとん挫し、倒産リスクが高まる。
ファブレス経営戦略・ファブレス企業が気を付けるべき「生産工場の選定」と「独自市場の創出」について、更に詳しく解説する。
現在、ファブレス企業に対応する生産工場は数多くあり、どの分野、どの地域であっても、ファブレス企業のニーズに耐えうる環境にある。
しかし、生産工場ならどこでも良いというわけではなく、やはり、生産工場を選定するうえで注意すべき点を抑えなければ、ファブレス戦略は失敗する。
ファブレス企業が最も注意すべき点は、独自の販売網(市場・ブランド力)を保有している生産工場を選ばないことだ。
アップルやナイキのようにブランド力が備わっているファブレス企業であれば別だが、多くのファブレス企業はブランド力が弱い段階で、生産を委託するケースが多い。
生産を委託するということは、当方の商品設計やコンセプト等のノウハウが全て生産工場に流出するということである。
生産工場に独自の販売網があり、ノウハウを模倣された商品を生産・販売されてしまっては元も子もない。
委託先と秘密保持契約を締結していたとしても契約の抜け穴は必ずあるし、契約書が抑止力にならないケースは数多くある。
有名ブランドの模倣品流通の多くはノウハウの流出が原因だ。従って、ファブレス戦略で生産工場を選定する際は、生産活動に特化している企業を選ぶことをお薦めする。
生産を委託するということは、誰でも同じ商品が作れるということである。
従って、一定規模の独自市場を創出しない限り、販売拡大の可能性が著しく低下する。
例えば、生産委託でAという商品を発売した直後に、他社が類似品Bという商品を発売し、顧客がAからBに流れてしまったら、Aの商品は売れなくなり終売せざる得なくなる。
また、生産委託する場合、ある程度の数量(ロット)を生産しなければならない。
当然ながら、生産した商品を一定期間で販売することができなければ、廃棄ロスが生じてしまい会社の収益を圧迫する要因になる。
従って、「類似品が投入されても顧客が流出しない販売市場」、なお且つ、「ある程度の数量が消化できる販売市場」を独自に保有していないとファブレス経営は成功しない。
独自市場の大きさとブランド力は比例する。つまり、如何に強いブランド力を形成できるかが独自市場形成のポイントであり、ファブレス戦略成功の秘訣になる。
市場に受け入れられる商品を生み出し、新しい顧客を創出する限り、市場規模は無限に広がる。
ファブレス経営をベースに事業を構築する戦略は成長スピードを加速する有効な手段です。ですから、小さい会社ほど積極的に活用してほしいと思います。注意すべきは、パートナーとブランディング(マーケティング)です。この部分の詰めが甘いと、ファブレス経営の失敗リスクが高まります。
(この記事は2016年7月に執筆掲載しました)