中小企業に迫る超高齢化社会の衰退リスクと成長戦略

 

高齢化社会とは、総人口に占める65歳以上の高齢者が7%を超えた社会のことだ。

 

高齢化社会は中小企業を取り巻く経営環境に大きな影響を与えることから、しっかり未来を予測し、今から成長の一手を打つことが大切になる。

 

この記事では、中小企業に迫る超高齢化社会の衰退リスクと成長戦略について、詳しく解説する。

 

 

高齢化社会の実態

 

国内の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合を高齢化率と言う。

 

高齢化率7%超を高齢化社会、14%超を高齢社会、21%超を超高齢社会といい、日本の高齢化率は、2019年時点で超高齢社会をはるかに超える28%台に達している。

 

総務省の調査によると2025年には日本の高齢化率は約33%(3人に1人は高齢者)に達し、その後も40年間にわたり上昇し続ける試算が出ている。

 

高齢化社会が進むと、医療福祉や社会保障制度の問題、財政や税負担の問題だけでなく、労働力人口の減少、経済成長率の低迷、高齢者の生活の質低下など、様々な社会問題が深刻化し、会社経営を取り巻く状況も大きく変化する。

 

例えば、医療福祉の実費負担が重くなれば、医療福祉サービスを十分に受けられない高齢者が増え、高齢者の生活の質が急速に低下する。当然、そうした高齢者を無償(家族)でサポートせざる得ない現役世代が増えれば、労働生産性と共に経済成長率が著しく悪化する。

 

国内の消費活動も低迷するので、企業の収益性と国の税収が減少し、ますます悪循環のスパイラルから抜け出すことが困難になる。高齢化社会は、中小企業の安定経営を脅かす、深刻な課題でもあるのだ。

 

 

後継者問題・事業承継の課題

 

高齢化社会に伴う後継者問題・事業承継の課題について、詳しく解説する。

 

経済産業省の統計(2021年)によると、経営者の平均年齢は60歳を超えており、70歳超が約250万人、その半分が後継者未定であり、今後10年間で60万社が黒字廃業の危機にあるとされている。

 

中小企業の経営者層の高齢化率(50%超)は、日本全体の高齢化率(30%弱)をはるかに上回る状況で、超高齢社会どころか、最早、超超高齢社会と言って過言ではなく、後継者問題や事業承継の課題など、深刻な衰退リスクの元凶にもなっている。

 

さらに、2035年には、高度成長期で財を成した多くの団塊世代(1947〜1949年生まれ・約800万人)が死亡平均年齢に達し、国民財産(購買力)が著しく減少するとみられているため、中小企業の経営環境は、高齢化と共にますます厳しくなる。

 

後継者問題・事業承継の課題を払しょくするには、経営者の若返りが必要だが、後継者育成や生産性改善に後れを取っている中小企業ほどそのハードルが高く、殆どの企業はドラスチックな改革(大胆な改革)が必要なところまで追い込まれている。

 

 

中小企業が超高齢社会を生き抜く戦略

 

中小企業が超高齢社会を生き抜く成長戦略について、詳しく解説する。

 

超高齢社会の進行によって、中小企業を取り巻く経営環境は刻々と変化する。

 

市場と消費トレンドは、高齢者寄りの医療福祉ビジネスが増えると予想されるが、購買力は落ちてくるので、今から生産性を高めないと、競争を生き抜くのが困難になるだろう。

 

高齢者を支えるために、これまで働く必要のなかった専業主婦や高齢者自身の就業が増えるので、時短パートやフレキシブルな働き方に対応する必要があるだろう。

 

生産年齢人口(15~64歳人口)が減少し続ける一方で、生活苦のために労働する就業人口は増えるので、娯楽・外食・嗜好品ビジネスは、さらに創意工夫が求められるだろう。

 

物価と平均年収は多少増えるかも知れないが、国内市場は人口減少と共に縮小の一途をたどるので、海外売上比率を高めないと収益性をキープするのが困難になるだろう。

 

以上のように、超高齢社会は中小企業を取り巻く経営環境に大きな影響を与える。将来の経営基盤を盤石にするには、しっかり未来を予測し、今から成長の一手を打ち、確かな実績を一つひとつ積み重ねることが大切だ。

 

(この記事は2023年2月に執筆掲載しました)