多くの中小企業は人手不足に悩み、事業拡大のアクセルを踏めずにいる。
当然、事業拡大の取り組みが弱まると、衰退リスクが膨らみ、少しのきっかけで破綻の危機に瀕する。
中小企業が生き残るには、人手不足を根本から解決する人事戦略が不可欠になるが、最も有効な方法は女性とシニア層の活用である。
日本国内の生産年齢人口(15~64歳人口)は、1995年の約8,500万人をピークにずっと減少傾向にあり、2025年には7,000万人割れ、その後も毎年数百万人単位での減少が続く。
一方の就業者人数は、2000年以降から直近までの20数年間、ずっと6,500万人前後を安定的に推移している。
生産年齢人口が減少している中で、就業者人数が一定をキープしている原因は、女性とシニア層の就業率増加にある。直近20年間だけ見ても、女性とシニア層の就業者は500万人も増加している。
つまり、従来、働く必要のなかった専業主婦層や定年後のシニア層(65歳以上)の就業者が、年々増加傾向にあるということだ。この傾向は今後も続き、この労働力を先手必勝でいかに取り込むかが、企業の繁栄を大きく左右する。
さらに、女性とシニア層は人生経験が豊富なので、労働力だけでなく、人間力向上のためのアドバイザーの役割も期待できる。中小企業の生き残りは、女性とシニア層の活用で決まると言っても過言ではないのだ。
中小企業が女性とシニア層の活躍を推進する戦略について、詳しく解説する。
中小企業が女性とシニア層の活躍を推進するうえで抑えるべきポイントは、働きやすい環境作りとフレキシブルな労働時間の配慮だ。
以下、それぞれの女性・シニア層の活躍推進戦略について、詳しく解説する。
働く環境が男性仕様の職場はじつに多いが、女性専用のトイレや更衣室、シニア層が休憩し易いスペースや健康管理が気軽にできる機器の設置など、女性とシニア層の活躍を推進するには、職場の環境を相応に整える必要がある。また、体力に劣る女性やシニア層に適した業務領域を上手に創出する必要もある。職場の受け入れ態勢が充実すれば、女性とシニア層の採用率と定着率が高まり、人手不足のリスクが低下する。また、職場環境は働く意欲とも直結するので、会社全体のモチベーションも向上する。
2021年4月改正の高年齢者雇用安定法により70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となった。男女ともに健康寿命が70歳を超えていることから、定年後、70歳まで働く就業者は今後も増え続けるとみられるが、若年層と比較して、シニア層の人生設計はまちまちなので、よりフレキシブルな労働時間が求められる。これは、女性就業者(主に専業主婦層)も同様だ。当然、期間限定雇用や時短出勤だけでなく、早朝のみ、午前のみ、午後のみ等、フレキシブルな労働時間の選択が充実するほど、女性とシニア層の採用率と定着率が高まり、人手不足のリスクが低下する。
(この記事は2023年2月に執筆掲載しました)