
社長・経営者に必要なスキル、求められる能力とは何か?
四半世紀にわたり会社経営に関わり、ようやく分かってきたが、社長に必要なスキルは「決断力」と「求心力」の二つだけで十分に思える。
ちなみに、社長に必要なスキルをAIに尋ねると、
先見性、ビジョン構築力、戦略的思考力、問題解決能力、リーダーシップ、マネジメント力、コミュニケーション能力、行動力、精神力、実行力、レジリエンス力、マーケティング力、財務法務知識、自己変革能力、高い倫理観、ポジティブマインドなど、枚挙にいとまがないが、
実際にこれだけのスキルがひとりの社長に備わっているケースは稀で、現実的には居ないに等しい。
さらに言えば、これらのスキルがすべて備わっていなくても、会社経営に成功する社長は数多にいる。
現実の社長業にたくさん関わってきた身から言えることは、本当に必要な社長の必須スキルはさほど多くない。
冒頭で述べた通り、決断力と求心力の二つさえあれば、会社経営は上々の出来になる。

社長・経営者に必要な決断力について、解説する。
決断力とは、あらゆる選択肢の中から自分の意思で一つの答えを決定し、実行に移す能力のことだ。
決める覚悟、選んだ答えをやりきる覚悟、決断の結果責任を背負う覚悟も決断力に入るが、社長の決断力が高いほど、事業活動の成果が大きくなり易い。
なお、決断の権限は社長ひとりに集中した方が都合よい。
責任の所在が明快になるし、やる・やらない・元に戻す等の決断のスピードが早まり、事業活動のPDCAサイクルが高速で回るからだ。
当然、決断の力が分散する会長社長の二頭体制やチーム経営の合議制はあまり宜しくない。決断力の低下を招き、少しのきっかけで衰退リスクが膨らみ、会社経営が長続きしないからだ。
社長の責任で決断し、その決断の結果責任をすべて背負い、成功からも失敗からも何かを学び次の決断に活かす。この繰り返しが、決断のスキルを高め、会社経営の成果を拡大する秘訣になる。

社長・経営者に必要な求心力について、解説する。
求心力とは、人を惹きつけ、その人を中心に集まろうとさせる力のことだ。
経営は人なり、と言われるように、人を惹きつける求心力無くして会社経営は成り立たない。
求心力は、謙虚さと客観性があれば上手に花開く。
謙虚に自分の弱みを受け入れれば、その弱みを補ってくれる人間を探すきっかけに恵まれるし、
客観的に自他の才能や能力を見抜くことができれば、その才能等を活かす発想やアイデアに恵まれる。
新しい仕事とのご縁も、決断の精度を高める専門家とのご縁も、社員や幹部とのご縁も、言ってみれば求心力に他ならない。
極端な話、社長本人にさほどの才能やスキルが無くても、求心力さえあれば、会社経営のパフォーマンスはいかようにも高めることができる。
(この記事は2025年12月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」