接待営業は売上増加に有効か否か?
結論から言うと、接待営業は売上増加に有効ではない。
この記事では、接待営業とは何か、並びに、接待営業が売上増加に有効なのか否かについて、詳しく解説する。
接待営業とは、取引攻勢をかけている相手先、或いは、既に取引のある特定のキーマンに対して飲食機会や贈答品を提供するなど、いわゆる接待交際を通じて取引を担保する営業手法のことである。
接待営業の当事者同士の関係は密になるかも知れないが、そこに信頼関係が生まれることは殆どない。
お金の切れ目が縁の切れ目というように、さほどの信頼関係は生まれない。つまり、接待交際は、売上増加に有効ではない。
また、特定の人物に限定して接待営業を行っていると、担当者の異動などで相手方の組織が変化した途端に取引を解消されることがある。
接待の席を1回設けるだけで5万~10万円は軽く超える。
当然ながら、取引自体が短命に終わると、投じたお金が回収できずに収支がマイナスになることもあり得る。
接待営業が好きな経営者はお金を使うのが大好きなタイプが多いが、お金は上手に使ってこそ生きることを忘れてはならない。
会社のお金を投じるのであれば、接待営業ではなく、商品の付加価値向上のために投じた方が、費用対効果は高い。
或いは、接待営業に使う費用を値下げ原資に使い、競合他社よりも優位な価格帯で営業展開することも有効な方法になる。
御恩や感謝の気持ちを忘れない「忘恩の精神」は大切ではあるが、行き過ぎた接待営業は会社の足を引っ張る要因になる。
何気ないタイミングでささやかな御品を贈ったり、礼状やお便りで感謝の気持ちを伝えたり、金額の多寡にこだわらずに素直な気持ちを相手に届けるだけで、日頃の感謝の気持ちは伝わるものだ。
そもそも、商売の大原則である「商品やサービスの優位性(付加価値)が取引を成立させている」という原則を忘れてはならない。
この商売の大原則を理解すれば、自ずと、お金を投ずる先が見えてくるはずだ。
上手なお金を使い方をマスターして、会社の利益を拡大すると、会社経営が安定するだけではない。経営者自身の報酬も増え、生活水準も一段と安定する。
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中小企業の場合はオーナー経営者が多いので、接待営業が常態化している会社が稀にある。
このような中小企業の経営者に対して「接待営業をやめなさい」と言っても急に全てを改めることは困難で、そもそも、接待営業が経営者の文化(アイデンティティー)になっている場合もある。
接待営業が常態化している会社の場合、ソフトランディングで改善するのが最も無理がない。
改善手法は「毎月の接待費用に予算を設ける」ことと「接待営業の頻度を減らす」ことが基本姿勢になる。
接待営業が常態化している会社の場合、際限なく会社の利益が接待交際費に流れる傾向が強い。
予算を設けると接待交際費の上限コントロールができるようになるので自然にブレーキがかかるようになる。
そして、接待の頻度を減らすと、接待交際費は大幅に削減される。
例えば、毎月の接待を隔月に減らすだけで接待交際費は半額になる。接待を受けている相手は、毎月が隔月に変わったくらいで不穏に思うことはない。
接待営業を減らしながら正攻法の営業展開にシフトすると、会社の利益は増加傾向に転じる。
なぜなら、接待交際費の削減金額は全て利益に転換するからだ。そして、増加した利益を成長投資に振り向けると、会社の利益は更に増加する。
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最後に、中小企業の接待交際費について、仕訳上のルールを簡単に解説する。
接待営業を行うと様々な領収書が手元にたまり、仕訳に困ることがあるかと思うが、接待交際費に関連する各仕訳ルールは概ね以下の通りになる。
交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用は「接待交際費」に仕訳される。
会議に関連して、会議のための室料、資料代、食事代・弁当などの飲食物を供与する費用は「会議費」に仕訳される。
専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用は「福利厚生費」に仕訳される。
飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5千円以下である費用は「会議費」に仕訳される。
カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他のこれらに類する物品を贈与するために通常要する費用は「広告宣伝費」に仕訳される。
会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用は「会議費」に仕訳される。