値下げの罠と正しい価格戦略|中小企業が陥りやすい薄利多売の回避法


お客様にとって、商品やサービスの価格は安いに越したことはない。


しかし、安易な値下げは会社経営の衰退リスクを引き寄せ、場合によっては経営破綻の危機を招く。


この記事では、値下げの罠と正しい価格戦略、並びに、中小企業が陥りやすい薄利多売の回避法について詳しく解説する。



値下げが利益を破壊する理由


値下げが利益を破壊する理由について解説する。


値下げが利益を破壊する大きな理由としては挙げられるのは「売上減少」と「付加価値低下」の二つだ。


売上減少が利益を破壊する理屈は簡単だ。利益は、売上-コストで計算されるので、値下げで売上が減少すると、コストが変わらない限り、利益も減少する。


コストは変わらないのに、周囲が値下げしたからといって、それに追従した結果、利益が減少するパターンは典型になる。(例:売上100円-コスト90円=利益10円⇒値下げ後の売上90円-コスト90円=利益0円)


付加価値の低下で利益が破壊される理屈も難しくない。


値下げした後に、従来の利益水準に戻そうとすると、どうしてもコストを下げざる得ない。より安い原材料やより安い製法等を追求することになるので、大抵は付加価値の源泉になる強みが削がれる。


強みが削がれると、商品やサービスの魅力が低下するので、顧客の購買動機は次第に「価格のみ」になる。結果、ライバルがさらに値下げすると、追従せざる得なくなり、ますます利益が破壊される状況に追い込まれる。


このように、安易な値下げは会社経営の衰退リスクを引き寄せ、場合によっては経営破綻の危機を招く。値下げには利益を破壊する副作用があることを決して忘れないことだ。


値下げなしで売れる仕組み作り


値下げなしで売れる仕組み作りについて解説する。


値下げなしで健全な売上をキープするには、会社の付加価値(強み)を磨き続けるしかない。


例えば、小さな会社は大企業が得意とする大量、画一的、広域、資源分散、万人向け、ワンサイズ、ビックサイズ等の戦略ではなく、


少量・多品種・狭域、資源集中、少数向け・スモールサイズ等の戦略で商品やサービスを展開することで、大企業との差異が生まれ、お客様の心に響く付加価値が得られる。


この大と小の違いこそが、小さな会社が新しく生まれ続ける理由だが、


言い換えれば、違いを創造し、付加価値を高めることが、値下げなしで健全な売上をキープする秘訣であり、小さな会社が生き残る絶対条件になる。


また、調子の良い時ほど、強み、エッジ、とんがり等の付加価値を磨く意識が必要だ。


付加価値が大きくなると、集客力、収益力、ブランド力などが盤石になり、価格競争に左右されない強い会社になる。


好調時は、強み、エッジ、とんがり等の付加価値を磨く原資、組織、環境が揃っているので、価値向上を推進する絶好のタイミングだ。


小さくトライアンドエラーを繰り返し、スピーディーに付加価値を磨くほど、売上と利益が拡大し、経営基盤が盤石になる。


価格競争から抜け出す差別化戦略


価格競争(薄利多売)から抜け出す差別化戦略について、解説する。


価格競争(薄利多売)から抜け出す差別化は、前章で解説した通り、大企業とは違うことをやり続ける戦略が一番効果的だ。


この差別化戦略をベースに、近道したり、横着したりせず、


丹精込めて事業を育てることが大切で、植物や生き物を育てるがごとく、手間暇を惜しまず、丁寧に、諦めずに、丹精込めて事業を育て続けると、着実に付加価値が大きくなる。


樹木の年輪が大きくなるほど、大木となり倒れにくくなるように、丹精を込めた事業は世の中から必要とされ、繁栄の原動力になる。


今どういう事業を抱えているかよりも、今の事業をどう育てるかの方がよほど重要だということだ。


また、値下げの圧力やコストの圧迫を跳ね返す、価格据え置きや値上げ提示等も時には必要だ。


ビジネスは必ず経済物価の影響を受けるので、値下げの圧力やコストの圧迫が起こる。こうした圧力や圧迫に屈すると、薄利多売に陥り、次第に利益が減少し、会社経営が行き詰まるので、適宜、価格据え置きや値上げ提示等が必要になる。


なお、値上げのやり方に関しては、以下の関連記事で詳しく解説しているので参考にしてほしい。


【関連記事】値上げの正しいやり方|顧客離れを防ぎ利益を増やす価格戦略


価格戦略の成功事例


最後に、価格戦略の成功事例について解説する。


何れも私が実際に経営サポートに入った先の企業の価格戦略の成功事例だ。


ケース1「売上1.5倍、営業利益が20倍に増えた会社」

この会社は、良い商品を作っていながら、その付加価値を十分に表現できていなかった。矢継ぎ早に、付加価値研鑽、ターゲット顧客明確化、情報発信充実等を実践し、短期間で顧客単価10%アップを達成した。結果、利益水準が大幅に改善し、現預金も沢山増えた。


成長投資の原資が増えたので、設備投資、人財育成、新規事業等の未来投資も活発になり、経営基盤が更に盤石になった。この会社の価格戦略の成功ポイントは、強みを徹底して磨くことを最優先したことだ。その結果、強みが磨かれるほどに、弱みが無くなり、価格競争力と共に会社の永続性が高まった。


ケース2「売上1.5倍、営業利益15倍に増えた会社」

この会社は、低価格戦略で売上を拡大していたので値下げの弊害が顕著だった。真っ先に、ターゲット顧客を綿密に分析したところ、低価格戦略から高価格戦略に切り替えても、影響が小さいことが分かった。


矢継ぎ早に、不採算商品や事業の縮小・改善、ニーズ対応型からニーズ提案型商品の拡充、高付加価値商品の拡充等を実践した結果、売上拡大のペースを維持しながら、利益率を大幅に改善することができた。


現預金も飛躍的に増加し、資金繰りの悩みが解消されると共に、成長投資も活発になり、経営基盤が更に盤石になった。この会社の価格戦略の成功ポイントは、レッドオーシャン(熾烈な市場競争)から脱却するために、オリジナリティー溢れる商品を拡充し、独自のブルーオーシャン市場(ニッチ独占市場)を開拓したことだ。


(この記事は2026年1月に執筆掲載しました)


執筆者・監修者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」