税理士と経営コンサルタントを混同している中小企業経営者はじつに多い。
しかし、税理士の本来の仕事は税務業務オンリーであり、会社経営全般に対してアドバイスできるだけの応用スキルは殆どない。
この記事では、税理士の本来の仕事、並びに、税理士と経営コンサルタントの違いについて、詳しく解説する。
税理士を経営のプロと勘違いしている中小企業経営者はじつに多いが、これは危険な認識になる。
なぜなら、税理士は税務のプロフェッショナルではあるが、決して、経営のプロフェッショナルではないからだ。
経営の専門外である税理士のアドバイスを鵜呑みにするのは危険なことだが、税理士を経営のプロと勘違いしている経営者は多く、例えば「うちには税理士の先生がついているので会社経営は万全」と考える経営者は少なくない。
税理士は税務全般を扱う国家資格を持つ士業であり、経営コンサルタントではない。税理士試験にパスした後は、国税局に入局するか、開業するかのどちらかで税理士業に専念するのが普通で、会社経営の経験をしている税理士は殆どいない。
繰り返すが、税理士は、税務のプロフェッショナルではあるが、経営のプロフェッショナルではないのだ。
税理士は経営の専門家ではなく、あくまで税務の専門家である。
従って、税理士からの経営アドバイスを過度に信じたり、アドバイスを鵜呑みにすると、経営判断の失敗リスクが高まる。
そもそも税理士側も税務全般の顧問を引き受けているのであって、会社経営の顧問を引き受けているわけではない。従って、こちらから過度に経営アドバイスを求めるのは、お門違いともいえる。
ちなみに、過去に私が再建調査で関わった倒産寸前の全ての中小企業に税理士が顧問としてついていた。税務顧問である税理士には、健全な会社経営を実現する義務はなく、このことからも税理士が経営のプロではないことが分かると思う。
なお、税理士は税務のプロではあるが、税理士業の業務範囲は広く、例えば、個人向け所得税等の税務は得意だが法人税が不得意という税理士も中にはいる。会社経営のコンサルに専念できるほど、税理士業は簡単ではないのだ。
最近は、月次決算の数字を加工して経営診断書のようのものを提示する税理士事務所も出てきたが、それはサービスの一環で提示しているだけで、本気でその会社の業績改善のために提示している情報ではないと考えた方が良い。
因みに、下記チェックリストに一つでも当てはまる場合は、その税理士の経営アドバイスは参考にならないと思った方が良い。
☑顧問料が月額5万円以下
☑費用の仕訳勘定科目の種類が少ない
☑月次決算書の作成を税理士に丸投げしている
☑月次決算書の仕上がりが月初1週間以内に上がってこない
☑減価償却や接待交際費等の経費を調整して利益操作している
☑棚卸や減価償却費を毎月算定していない
☑売上や経費の集計が杜撰
税理士の経営アドバイスを鵜呑みにする経営者がなぜいるのか?
その答えは、経営者自身が経理面に苦手意識を持っているからである。
これは大企業でも起こり得ることだが、経営者が経理面に苦手意識を持っていると、経理部分がブラックボックス化される。
経理部分がブラックボックス化されると、経理部や税理士から上がってくる経営資料を100%信じるのみ、という状況に陥る。しかも、さらなる勘違いが重なり、経理のプロ=経営のプロという思考が定着し、税理士からの経営アドバイスを鵜呑みにしてしまう。
経理と、経営は、まったく別物の領域だ。
わたし自身、税法の勉強を5年かけて習得したので分かるが、税理士の知識は財務諸表の理解や納税面にとても役立つ知識だ。また、この知識を元に会社経営に有効な分析手法を沢山開発できたので、経営力の向上にも役立った。
しかし、多くの税理士は、資格を取得したら国税局に入局するか、個人事務所を開設して税理士業に専念するのが普通である。資格取得後に会社経営の実務経験を積んでいる税理士は稀で、多くの税理士は、会社経営の実務経験がない。
つまり、税務の知識を会社経営に活かす術を殆ど持っていないのだ。
ちなみに、弁護士と公認会計士は、試験を受けることなく税理士登録ができる。公認会計士は財務諸表に精通しているが、殆どの弁護士は財務諸表が読めないと思ってよい。
会社経営は経営者自身が舵をとらなければ大きく成長しない。経営のプロではない税理士からのアドバイスを鵜呑みにするのは危険な経営姿勢なのだ。