中小企業において、システム導入後に想定通りにコストが下がることは稀だ。
また、独自システムを導入した結果、経営の自由度が低下することも、よくあることだ。
この記事では、システム導入の失敗事例、並びに、システム導入時の注意点について、詳しく解説する。
システム導入のコンサル提案は多岐にわたる。
例えば、業務管理システム、在庫管理システム、受注発注システム、顧客管理システム等々、その種類は多種多様だ。
多くのシステム会社は、会社経営を効率化するために様々なシステム開発を行い、顧客企業への導入を提案し、システム会社によっては、システム導入前・導入後のコンサルティング業務を提供する会社もある。
ひと昔前はパッケージソフトやクラウドソフトの汎用性が低かったこともあり、中小企業であっても、このようなシステム会社とコンサル契約を結んで、独自システムの導入を進める事例が多くあったが、中には、システム会社の提案通りに行ったシステム導入が失敗に終わり、会社経営が傾くケースも少なくなかった。
私自身が経営に関わっていた中小企業も、業務効率化のために独自システムの開発・運用に数千万円の投資を行っていた。
その後も、関連会社へのシステム導入で多額の追加投資を行い、その後はパソコンのOS変更、或いは、業務体制に変更が生じるたびにシステム改修費用がかかっていた。さらに、導入後も年間数百万円のシステム維持費がかかっていた。
そして2014年初頭、パソコンのOSであるWindowsXPのセキュリティーサポートの更新切れに合わせて、大規模なシステム改修の必要が生じた。
追加費用は数千万円である。
経営効率化のためには新たなシステム導入が欠かせないと迫るシステム会社に対して、システム投資の保留を告げて、既存のパッケージソフトを活用した業務体制が構築できないかの検討を開始した。
検討を重ねたところ、現在のパッケージソフト(或いはクラウド)は汎用性も自由度も上がっていて、数種類のソフトとクラウドシステムを組み合わせることによって現行の体制で、これまで通りに業務をこなせることが分かった。
どうしても自動化が必要な部分はシステム会社に独自ソフトの作成を依頼したが、最終的には200万円程度のシステム投資金額に抑えることができた。
既存のパッケージソフトなので維持費は年間10万円程度で、結局、従来のシステム導入・維持費用の十分の一以下のシステム投資費用で収まったのだ。
旧システムを振り返ってみると多額のシステム投資を費やした割には、使っていない、もしくは使いこなせていない機能が沢山あったことに気がついた。
また、外部環境に左右されやすい中小企業の場合は、固定費を必要最低限に抑え、変動費を上手にコントロールする経営スタイルの方が、会社の成長速度が加速しやすい。
一度、独自システムを導入すると、初期投資の金額もさることながら、固定費として維持費に費やす金額もバカにならず、多額の固定費は、時に会社成長の足を引っ張る原因になり得る。
これからは、「パッケージソフト+クラウド+自社運用」というシステム体制も賢い選択のひとつだ。
システム導入を行う場合は、多額の初期投資に加えて、システム導入後の固定費用の負担を考慮しなければならず、そのうえで、そのシステム導入が本当に効果的なのか、本当に会社に利益を生み出すのか、導入前に冷静に検証する必要がある。
システム会社のシミュレーション通りにコストが下がることは稀で、なかには、初期投資費用と維持費用で、かえってコストアップに繋がりシステム導入自体が失敗に終わるケースもある。
ある程度の会社の規模になるとシステム導入は避けられない側面もあるが、会社は生き物みたいなものなので、時には、システム通りに管理できないことも起こり得る。
システム導入で失敗しないためには、システム導入前の慎重な検証が何よりも大切だ。
(この記事は2016年6月に執筆掲載しました)