キャッシュフロー経営の基本|黒字倒産を防ぐための資金管理指標


キャッシュフロー経営とは、現金の流れを重視する経営スタイルのことだ。


現金は企業経営の根幹を支える指標になるので、キャッシュフロー経営の理解は企業の盛衰を決定づける。


この記事では、キャッシュフロー経営の基本について、詳しく解説する。



キャッシュフローと利益の違い


キャッシュフローと利益の違いについて解説する。


キャッシュフローと利益の大きな違いは、計算方法の基準の置き方にある。


キャッシュフローの計算は現金の増減に基準が置かれていて、利益(粗利・営業利益等)は取引の発生時点に基準が置かれている。


例えば、仕入原価80円の商品を100円で販売したとする。


キャッシュフローの計算は、仕入の支払い、売上の回収など、実際の現金の動きに連動して計算される。(例:仕入の支払いが済んだのに、売上の回収がなければキャッシュフローはマイナス80円となる)


一方の利益の計算は、販売までの過程で生じた商取引の発生に連動して計算される。(例:売上100円-仕入80円=利益20円となる)


両者を比べれば分かるように、キャッシュフロー(現金)と利益の金額はまったく一致しない。


だから、利益が出ていれば、会社経営は安泰という思い込みは、極めて危険な事態を招く。会社経営は現金がなくなった瞬間に破綻するからだ。


黒字倒産が起きるメカニズム


黒字倒産が起きるメカニズムについて解説する。


黒字倒産はキャッシュフロー経営の実践力が弱いほど、起こり易くなる。


しかも、黒字倒産に企業規模の大小は関係ない。事実、2008年に起きた世界同時不況の際に日本の上場企業の倒産が相次いだが、その半数は黒字倒産だった。


黒字倒産とは、読んで字のごとく、経営成績は黒字なのに、現金が枯渇して倒産してしまう事態のことを言う。


前章の「キャッシュフローと利益の違い」で解説した通り、 キャッシュフローと利益の金額は一致しない。


利益が出ていても、キャッシュ(現金)がマイナスになる事態は良くあり、


例えば、売上の回収が遅い、利益が在庫に変わる・設備に変わる、利益以上に返済負担が重い等の状況はキャッシュを減らす典型になる。


当然、キャッシュがマイナスになる事態を放置し続ければ、次第に手元の現金が枯渇し、いくら黒字経営であっても、会社は倒産の危機に瀕する。


黒字倒産を未然に防ぐには、現金の増加、あるいは現金の流れに重点を置くキャッシュフロー経営の実践が欠かせないのだ。


営業CF・投資CF・財務CFの読み方


営業CF・投資CF・財務CFの読み方について解説する。


キャッシュフローの計算は、営業活動・投資活動・財務活動の三つの領域に分かれる。


中小零細等の非上場企業には作成義務がないが、それぞれの計算過程、読み方、注視すべきポイントは以下の通りだ。


営業CF

営業活動によるキャッシュフローは、会社の最終利益「税引前当期純利益」に本業の営業活動の過程で生ずる現金増減に影響を与える項目を加算・減算して計算する。具体的には、減価償却費、支払利息、売上債権、棚卸資産、仕入債務、法人税等の支払い、その他資産・負債の増減などがある。


営業CFは会社の資金繰りに直結する領域なのでプラスが絶対目標になる。共通で言えるのは売上債権と仕入債権、製造業等は減価償却費、小売業等は棚卸資産、これらの項目の増減はCFに大きな影響を与えるので注視するとよい。また、営業CFは、投資CFと財務CFのマイナスをカバーする原資になるので最も重要なCFになる。


投資CF

投資活動によるキャッシュフローは、固定資産(設備、機械、有価証券等)の取得や売却、並びに、貸付の増減に応じて計算する。事業用の固定資産を取得した年度はマイナスになる。投資CFのマイナスは、営業CFと財務CFでカバーすることになるが、ココのシミュレーションが甘いと資金繰りに行き詰まるので注意が必要だ。


財務CF

財務活動によるキャッシュフローは、金融機関からの借入金、借入金の返済、配当金の支払等の増減に応じて計算する。新しく借金をした年度はプラスになるが、返済だけの年度はマイナスになる。財務CFのマイナスが営業CFを上回ると返済苦に陥り、資金繰りに行き詰まるので、営業CFのプラスの範囲内で返済計画を立てることが大切だ。


中小企業が最優先で見るべき資金指標


中小企業が最優先で見るべき資金指標について、解説する。


前章で解説した営業CF・投資CF・財務CFの増減と併せて見るべき指標は、PLの経常利益、BSの現預金と純資産の3つの項目だ。


これらの指標を見ていれば、キャッシュフロー経営が板につき、資金繰りで悩むことが殆ど無くなる。


営業CF・投資CF・財務CFの判断ポイントは既に解説した通りだ。PL(損益計算書)の経常利益、BS(貸借対照表)の現預金と純資産は、何れも常に増加・プラスが正常となる。


PLの経常利益、BSの現預金と純資産が何れも増加・プラス傾向であれば、営業CF・投資CF・財務CFのバランスが適正(最終合算CFがプラス)に保たれる。


逆に、PLの経常利益、BSの現預金と純資産のどこかが減少・マイナス傾向になると、営業CF・投資CF・財務CFのバランスが悪化(最終合算CFがマイナス)し、資金繰りに支障がでるようになる。


利益だけを気にする経営者は少なくないが、PLの経常利益だけでなく、BSの現預金と純資産の二つの指標だけは、毎月、月次のたびにチェックすることをお薦めする。


資金ショートを防ぐ実践的な管理方法


最後に、資金ショートを防ぐ実践的な管理方法について解説する。


資金ショートを防ぐ実践的な方法としてお薦めなのは、資金繰り表の作成だ。


資金繰り表とは、現金の残高を月単位で計算する表のことだが、最低半年から一年先までの資金繰りの計画を作成すると安心だ。


資金繰り表は、半年から一年先の売上と経費の計画値に、回収・支払いのタイミングを加味するだけで簡単に作成できる。ココに一過性コスト(税金・返済・設備投資等)を加えると、資金繰りの先行きが読めるようになる。


あとは、実績が確定する度に計画値を実績で上書きし、予実管理を継続するだけで良い。


長期間、資金繰り表を運用するとキャッシュフローの流れが手に取るように分かるようになり、資金繰りの失敗が少なくなる。


また、新規の借入や設備投資の回収計画の精度も上がるので、会社経営の成果を出しやすくなる。資金不足に対する先手も打ちやすくなるので、社長業のストレスも小さくなる。結果、現金の流れを重視するキャッシュフロー経営がますます盤石になる。


執筆者・監修者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」