
社長が決断を行う上で、数字は最も身近な根拠になる。
しかし、数字の認知バイアス(偏見や先入観で非合理な決断をする心理)がかかると、誤った判断を誘発する恐れがある。
この記事では、社長の決断を誤らせるバイアス、並びに、数字で経営判断を正しく行う方法について、詳しく解説する。

経営者が陥り易い認知バイアスについて解説する。
経営者が陥り易い認知バイアスの代表例は「数字の責任所在」と「数字の相関関係」だ。
数字は事業活動の結果を示すので、数字が悪いと、現場で働く社員が悪いと考えるバイアス(偏見や先入観)がかかる経営者が稀にいるが、これは間違いだ。
事業活動の結果は社長の責任、当然、結果を示す数字の責任も社長が背負うのが正しい認識だ。誤ったバイアスは、社員のモチベーションとパフォーマンスを引き下げるので、くれぐれも注意してほしい。
数字の相関に関してもバイアス(偏見や先入観)がかかっている経営者が稀にいる。売上が上がれば利益も上がる、利益が増えれば現金も増える、利益は節税で減らした方がいい等は典型だ。
数字のバイアスは危険な決断を招き、衰退リスクを高めるので、注意してほしい。なお、バイアスがかかりやすい数字の勘違いを以下の関連記事で紹介しているので、参考にしてほしい。
【関連記事】社長がやってはいけない数字の勘違い10選|経営を誤らせる危険な思い込み

数字無視の感覚経営の危険性について解説する。
数字は事業活動の結果を表すので、数字無視の感覚経営は極めて危険だ。
感覚的にうまく行っているように見えても、数字(結果)がついてこない、あるいは、数字(結果)が悪化することは良くあることだ。
数字を見て、言動を修正し、また数字を見る。この繰り返しが、会社経営を安定させる正攻法であり、決断の精度を高める確かな方法だ。
また、数字があると、この数字まで悪化したら撤退、あるいは規模縮小など、経営が危機的状況に陥る前に上手に先手を打つことができる。
このほかにも、人件費のコントロール、一般コストや成長投資のコントロールも数字があるからうまく采配でき、費用対効果を高めることができる。
感覚一辺倒でうまくいくほど会社経営は甘くない。百戦錬磨の社長であっても感覚の衰えは必ず来る。だからこそ、数字という根拠を武器に決断する術を定着させることが重要だ。

数字を使った決断プロセスについて解説する。
数字を使った精度の高い決断プロセスを実現したいのであれば、重要な経営指標のチェックを日常化すれば良い。
お薦めの指標は、PL(損益計算書)の「売上高と経常利益」、BS(貸借対照表)の「現預金と純資産」だ。僅か4つの指標をチェックするだけで決断の精度が飛躍的に上がる。
何れの指標も増加が良好を示し、減少は悪化を示す。
経営者がこの指標をベースに決断すると、判断の精度が良くなる。
また、この指標をベースに目標数値を決め、その目標を達成するための行動目標と達成期日を社員に示せば、効率的に経営を改善することができる。
決断のプロセスに数字がないと、感覚的な自己流経営に陥り、衰退リスクを大きくしてしまう。そうならない為にも、数字を使った決断を心掛けてほしい。

最後に、判断ミスを減らす仕組みづくりについて解説する。
経営者の決断ミスや判断ミスを減らす最も有効な策は、検証の精度を高めることだ。
未来は予測することはできても、未来を当てることは誰にもできない。また新規事業等は十中八九失敗するのだから、すべての決断や判断には失敗のリスクがついて回る。
会社経営は決断の連続で前に進むので、失敗を怖がって決断を先延ばしするのは愚の骨頂で、大切なのは、決断の失敗をリカバリーする仕組みをつくることだ。
判断ミスの検証は、前章で紹介したPLの「売上高と経常利益」、BSの「現預金と純資産」が役立つ。この何れかの指標が減少傾向に陥ったら、どこかで判断ミスが起きたと考えてよい。
また、現場の最前線にいる社員に判断基準を持たせることも必要だ。
こういう顧客の声、現場の声、こういう状況や数字が出たら判断ミスの疑いありという基準を与えるのだ。社員の合否の判定スピードが上がるので、会社として判断ミスに即座に対応できるようになる。
判断ミスが少なくなると、社長業の精度が上がるだけでなく、社員のパフォーマンス、会社の売上と利益、お客様の満足度など、すべての指標が良好になるので、検証の仕組みはしっかり構築してほしい。
(この記事は2026年1月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」