持株比率(出資比率)の計算方法と株主権利(支配権)|経営リスクの管理指標

持株比率(出資比率)の計算方法と株主の支配権と経営リスク

 

持株比率(出資比率)とは、株式の出資割合を示す経営指標のことだ。

 

持株比率に応じて株主の権利(支配権)が変わるので、会社経営の重要な経営指標になる。

 

この記事では、株式の基本概要、持株比率の計算方法から株主権利に至るまで、詳しく解説する。

 

 

株式とは何か?

 

持株比率(出資比率)の計算基準になる「株式」とは、株式会社の設立資本金の出資額に応じて交付される一種の権利のことである。

 

そして、設立資本金の出資と引き換えに株式を交付される出資者のことを「株主」という。

 

現在は1円の設立資本金で株式会社の設立が可能だが、2006年4月以前は1千万円の設立資本金が必要だったので、株主が複数人存在する会社も珍しくなかった。

 

会社の設立資本金を出資した株主には、株式と共に会社の支配権が与えられる。

 

株主がひとりであれば支配権はひとりに帰属するが、株主が複数人いれば出資割合に応じて支配権の範囲が変わり、その支配権を明らかにする指標が、持株比率(出資比率)になる。

 

 

持株比率(出資比率)の計算方法

 

持株比率(出資比率)の計算方法について解説する。

 

持株比率は、発行済の総株式数に占める保有株式数を求めることで計算できる。計算式は下記の通りになる。

 

持ち株比率の計算方法

持株比率=(保有株式数÷総株式数)×100

 

例えば、会社の発行株式数が100株で、株主A氏の保有株式数が50株であれば、(50÷100)×100=A氏の持株比率は50%になる。

 

会社の発行株式数が100株で、株主B氏の保有株式数が25株であれば、(25÷100)×100=B氏の持株比率は25%になる。

 

株主は会社経営を左右する重要な存在になるので、持株比率は会社経営の超重要指標になる。

 

 

持株比率に応じた株主権利・支配権

 

持株比率(出資比率)に応じた株主の権利・支配権は下記の通りである。

 

持株比率毎の株主権利

100%保有

持株比率が100%(株式100%保有)、なお且つ、代表取締役に就任すれば、会社経営にかかわるすべての決議を自分ひとりで行うことができる。

 

2/3以上保有

持株比率が2/3以上あれば、株主総会の特別決議ができる。例えば、取締役の解任、定款変更、合併や解散、など等、会社経営に関する重要な事柄を決定することができる。

 

1/2以上保有

持株比率が1/2以上あれば、株主総会の普通決議ができる。例えば、役員報酬の変更、剰余金の配当等々の事柄を決定することができる。

 

1/3以上保有

持株比率が1/3以上あれば、株主総会の特別決議を阻止することができる。

 

3%以上保有

持株比率が3%以上あれば、株主総会の招集、会社の帳簿等、経営資料の閲覧ができる。

 

株主総会とは?

株主総会とは、株式会社の最高の意思決定機関であり、会社経営に関する重要事項を決定する会議である。株式会社の場合、最低年1回は開催される。

 

株主権利とは?

株主総会において議決権の行使ができる。議決権は株主の重要な権利になる。また、利益配当を請求(利益配当請求権)もできる。但し、会社の方針によっては、配当を行わず、再投資の原資として内部留保に回す場合もある。(会社に利益がない場合は配当できないこともある)。会社清算時の、残った財産の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)も持っている。

 

 

持株比率(出資比率)に応じた経営リスク

 

大企業の大半は株主と代表取締役が分離しているが、中小企業の大半は株主と代表取締役が分離していない。

 

殆どの中小企業は、代表取締役自身が2/3以上の株式を保有し、会社経営に関わる重要な決議を社長自身の裁量と判断で行っている。

 

つまり、安定経営を実現するために必要な持株比率(出資比率)は2/3以上が一つの目安になり、2/3を下回ると様々な経営リスクが生じる。

 

例えば、中小企業であっても、創業者の家族や親戚、或いは、友人知人に株式が分散されてしまい、正当な後継者が2/3以上の株式を保有せずに代表取締役に就任しているケースがある。

 

この場合、株主同士の対立が原因で、会社衰退のリスクが飛躍的に高まることがある。

 

「船頭多くして船山に登る」のことわざ通り、会社経営の舵取りも複数になるほど失敗リスクが高まる。また、持株比率の勢力次第では代表取締役を解任されることもあり得る。

 

経営能力がない代表取締役の解任であれば問題ないが、株主同士の欲が絡んだ、代表取締役の解任であれば、社員が犠牲になる。

 

つまり、企業の永続性を高めるための持株比率は2/3以上が絶対条件になる。

 

但し、親子間で事業承継する場合で、子供の経営に危うさを感じる部分があれば2/3以上の株式は与えない方が良い。この場合は親が2/3以上の株式を保有していれば、万が一、子供が暴走しても食い止めることができる。

 

 

持株比率が低い社長が取るべき行動とは?

 

会社経営において、株主の存在は重要だ。

 

また、中小企業の場合は、社長自身の持株比率も様々な経営リスクに直結するので重要視しなければならない。

 

万が一、現役社長でありながら持株比率が2/3以下の場合は、株主同士の対立を避けるために日頃から株主をフォローする心がけが欠かせない。

 

例えば、

 

☑株主に業績を開示して安心感を与える

 

☑株主に経営方針を丁寧に説明して安心感を与える

 

☑株主に時折り利益配当を行い、出資の恩に報いる

 

等々、会社経営の透明性と公平性を訴求することが、株主の信頼を得る秘訣になる。株主の信頼が得られれば、自ずと経営者に対する信頼感も高まり、株式譲渡という道も開けてくるはずだ。

 

伊藤のワンポイント
 

会社経営者にとって持株比率は超重要な指標です。じっくり将来を見据えた会社経営を目指すのであれば、持株比率2/3以上が条件です。また、株式は財産価値があるので、相続の際に揉める原因になります。ですから、不用意に株式を分散させないでください。株式の分散は次世代の経営者を悩ませる種になりかねません。