本部経費とは、主に管理部門の経費のことである。
営業部門が複数ある場合は、管理部門である本部経費と、営業部門の直接経費を分別集計しないと、営業部門の真の利益が見えなくなる。
この記事では、本部経費の集計と、本部経費の公平な配賦方法と配賦基準について詳しく解説する。
本部経費とは、主に管理部門(収益を生み出さない間接部門)の経費のことである。
本部経費の集計は、収益を生み出さない総務や経理等の管理部門のほか、会社経営や営業部門を間接的にサポートしている役員の人件費や開発部門等の経費も対象になる。
集計された本部経費は、最終的には営業部門に負担させることになるが、この本部経費を営業部門に負担させる計算手続きのことを「本部経費の配賦」という。
本部経費の配賦は公平かつ合理的な方法で行わなければならず、なお且つ、本部経費の配賦方法と基準は一定でなければならない。
なぜなら、毎回、配賦方法と基準が区々では、営業部門の損益を公平に算定、或いは、公平に判定・評価することができなくなるからだ。
当然ながら、各営業部門の経費集計が不明瞭では、正しい損益を把握することはできず、経営判断を誤るリスクと共に、会社衰退のリスクが高まるばかりとなる。
つまり、複数の営業部門がある企業において、正しい本部経費の集計と配賦なくして、正しい会社経営は出来ないのだ。
中小企業に適した本部経費の配賦方法はいくつかある。
この記事では特に公平性の高い「粗利比率・社員比率・床面積比率」の3つの配賦方法を紹介する。それぞれの本部経費の配賦方法と基準について、詳しく解説する。
粗利構成比率を基準に本部経費を配賦する方法について、詳しく解説する。
粗利とは、売上総利益のことだが、粗利構成比率で本部経費を配賦する方法は最も一般的な配賦基準である。
例えば、5つの営業部門があり、本部経費が100万円であれば、本部経費の配賦は下表の通りになる。
A事業 |
B事業 |
C事業 |
D事業 |
E事業 |
|
---|---|---|---|---|---|
粗利構成比率 |
10% |
15% |
20% |
25% |
30% |
本部経費配賦 |
10万円 |
15万円 |
20万円 |
25万円 |
30万円 |
売上総利益の金額の構成比率が大きいということは、それだけ本部のサポート貢献度も大きいといえるので、売上総利益の構成比率を用いて本部経費を配賦する方法は公正かつ合理的な基準といえる。
所属社員数の構成比率を基準に本部経費を配賦する方法について、詳しく解説する。
例えば、5つの営業部門があり、本部経費が100万円であれば、本部経費の配賦は下表の通りになる。
A事業 |
B事業 |
C事業 |
D事業 |
E事業 |
|
---|---|---|---|---|---|
社員構成比率 |
10名 |
15名 |
20名 |
25名 |
30名 |
本部経費配賦 |
10万円 |
15万円 |
20万円 |
25万円 |
30万円 |
所属社員数の構成比率が大きいということは、それだけ本部のサポート貢献度も大きいといえるので、所属社員数の構成比率を用いて本部経費を配賦する方法も公正かつ合理的な基準といえる。
床面積の構成比率を基準に本部経費を配賦する方法について、詳しく解説する。
例えば、5つの営業部門があり、本部経費が100万円であれば、本部経費の配賦は下表の通りになる。
A事業 |
B事業 |
C事業 |
D事業 |
E事業 |
|
---|---|---|---|---|---|
床面積構成比率 |
10坪 |
15坪 |
20坪 |
25坪 |
30坪 |
本部経費配賦 |
10万円 |
15万円 |
20万円 |
25万円 |
30万円 |
床面積の構成比率を配賦基準にする場合、各営業部門が同一地域であれば差ほどの不公平感は出ないが、各営業部門が都市部と地方に分かれている場合は、坪単価に差が生じるので不公平感が出てしまう。
同一地域で展開する小売業などは床面積を基準して本部経費を配賦して差し支えないが、営業地域が広く分かれている場合は、粗利か所属社員数で本部経費を配賦した方が公平な配賦基準になる。
本部経費の配賦をしない例外パターンについて、詳しく解説する。
本部経費の営業部門への配賦は、正確な事業損益を把握するために欠かせないが、営業部門が赤字で、なおかつ、以下のようなケースに該当する場合は配賦しない判断もあり得る。
当該赤字部門の黒字化に時間がかかる
一定期間経過後に当該赤字部門の閉鎖等を検討している
営業部門が赤字で、黒字化に時間がかかる、或いは、閉鎖を検討している場合は、本部経費を無理に配賦しない経営判断もあり得る。
デメリットは、過去データとの比較の際に整合性が崩れることだが、1年経過後にズレが解消されるので特段気にする必要はない。
また、他部門との収益比較がアンフェアになるデメリットもあるが、赤字部門は黒字化に全集中することが第一なので、割り切って考えた方が良い。
健全部門は本部経費の負担が重くなるが、クリアしなければならない課題だと思って、業績改善に努めることが大切になる。
稀に営業部門と管理部門が仲違いしている会社があるが、そのような諍いは会社の足を引っ張るだけなので改めた方がよい。
なぜなら、管理部門は営業部門がなければ報酬を得られないが、営業部門は管理部門のサポートがなければ売り上げを作ることができないからだ。
お互い同じ会社の社員として外に目を向けて仕事をしなければ、会社は成長しない。
そもそも、経営者自身が、管理部門と営業部門の立場を深く理解していれば、部門同士の仲違いは起こり得ない。
日頃からお互いの部門を労う気遣いも、中小企業経営者の大切な仕事だ。
本部経費の正確な集計と公平な配賦基準は、正しい部門別損益を把握するうえで不可欠です。日頃から正しい部門別損益を把握している会社は、業績悪化の芽を早く摘み取ることができます。一方、部門別損益が曖昧な会社は、業績悪化の原因が特定できないまま、衰退の一途を辿ることが多いです。