運転資金の把握は安定経営の第一歩

中小企業の経営者を支える経営ノウハウ情報局

必要運転資金の計算式と適正水準

運転資金の計算式と適正水準

 

運転資金とは、事業活動を円滑に進めるために必要な現金・預金のことである。

 

事業活動とは、端的に説明すれば、売り上げを作るための活動のことである。

 

つまり、運転資金とは、売上を作るために必要な経費の支払いに充当する現金ともいえる。

 

売上に対応する経費は、商品の仕入れ、人件費の支払い、家賃の支払い、水道光熱費の支払い、など等、挙げたらキリがないほどある。

 

当然ながら、運転資金が枯渇すると経費の支払いがストップするので、商品の仕入れがストップする、水道や電気がストップする、事務所の立ち退きを請求される、など等、事業活動に支障をきたす不都合が沢山でてくる。

 

適正な運転資金の水準を把握し、日頃から余裕を持って必要運転資金を確保しておくことは、中小企業の安定経営に欠かせない重要ポイントである。

 

例えば、経営者の頭のなかに必要運転資金の数字が入っていれば、自然とコスト管理がシビアになるので赤字経営に転落するリスクが低くなる。

 

一方、経営者が必要運転資金を把握していなければ、然るべきコスト管理も、利益への執着も曖昧なものになってしまう。

 

これでは、赤字経営に転落するリスクが高まる一方になるであろうことは容易に想像できるだろう。

 

中小企業の最低限必要な運転資金は、現金商売や掛け金商売など、業種業態によって多少前後するが、概ね下記の計算方法で求めることができる。

 

必要運転資金の計算式

 

〔月商-(減価償却費+営業利益金額)〕×1.5=最低必要現金残高

 

※月商に波がある場合は、過去12か月間の平均月商で計算する

 

 

必要運転資金の適正水準

 

中小企業の必要運転資金の適正水準は下記の通りである。

 

なお、運転資金の現預金残高は、その月の支払いが到来する前の最も残高ポジションが高いピーク時点を基準とする。

 

優良水準

 

【〔月商-(減価償却費+営業利益金額)〕×2.5】以上

 

上記計算の結果よりも現預金の残高が多い場合は、安心・安全な水準といえる。成長投資に回す余剰資金や、経営悪化に備える余剰資金も十分に貯蓄することができる。

 

 

標準水準

 

【〔月商-(減価償却費+営業利益金額)〕×2.0】程度

 

上記計算の結果と同程度の現預金残高であれば標準水準である。この水準の運転資金をキープしていれば、資金繰りに窮することはない。但し、成長投資に回す余剰資金や、経営悪化に備える余剰資金の貯蓄は余裕をもってできない。

 

 

危険水準

 

【〔月商-(減価償却費+営業利益金額)〕×1.5】未満

 

上記計算の結果よりも現預金の残高が少ない場合は、運転資金が枯渇気味といえる。その月の支払いが終わると、手元には月商の半分も残高が残っていない状況である。

 

この水準で経営を続けていると自転車操業に陥るリスクが高まるばかりとなる。万が一、自転車操業に陥ると資金繰りに窮して、最悪、倒産することもあり得る。

 

必要運転資金の適正水準の計算例

 

参考モデル会社の損益は、月商1億円,減価償却費1千万円,営業利益金額1千万円,現預金残高1.5億円、とする。

 

この会社の必要運転資金の優良・標準・危険水準の計算結果は下表の通りである。

 

優良水準

〔月商1億円-(減価償却費1千万円+営業利益金額1千万円)〕×2.5=2.0億円

標準水準

〔月商1億円-(減価償却費1千万円+営業利益金額1千万円)〕×2.0=1.6億円

危険水準

〔月商1億円-(減価償却費1千万円+営業利益金額1千万円)〕×1.5=1.2億円

 

この会社の現預金残高の標準水準は1.6億円なので、標準よりも若干下回っていると判断できる。

 

 

余剰資金はどのくらいあれば良いのか?

 

会社経営を長く続けていると必ず逆境がやってくる。

 

当然ながら、逆境がやってきたときに、手元に十分な余剰資金が無ければ、運転資金がすぐに枯渇してしまい、最終的には経営が行き詰ってしまう。

 

中小企業は資金の調達方法に限りがあるので、出来れば、自前で一定の余剰資金を貯蓄しておいた方が安全だ。

 

それでは一体、どの程度の余剰資金があれば逆境を乗り越えることができるのだろうか?

 

中小企業の余剰資金の計算方法は色々なアプローチがあると思うが、売上が20%ダウンしても1年間は持ち堪えることのできる水準が安全ラインである。

 

計算式は、「年商×売上総利益率×20%=適正な余剰資金」で求めることができる。

 

例えば年商が5億円で売上総利益率が50%であれば、5億×50%×20%=5千万円が適正な余剰資金ということになる。

 

事業活動に必要な運転資金に加えて、逆境に備えた余剰資金が手元にあれば、経営が大きく傾くリスクは限りなく小さくなる。

 

なぜなら、急激な経済変動、不慮の事故など等、よほどのことがない限り、売上が20%も減少することは起こり得ないからだ。

 

つまり、売上が20%落ちても1年間経営が続けられる資金が手元にあれば、様々な逆境に打ち克つ経営が実現できるのだ。

 

たとえ売上が激減したとしても、1年間の運転資金(余剰資金含め)が手元にあれば、経営改革を断行し、経営を正常化させることができる。

 

資金調達手段が限られている中小企業は、逆境に陥ってから1年分の運転資金を確保するが難しい。逆境に陥る前に1年分の運転資金を確保しておくことが大切なのだ。

 

➡NEXT「流動比率の計算式と適正水準」へ

 

 

 

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