債務償還年数と預貸率の計算式と適正水準|借入・融資適性を計る経営指標

債務償還年数と預貸率の計算式と適正水準

 

債務償還年数と預貸率は、銀行融資を左右する指標だ。

 

なぜなら、何れも銀行が融資先企業を格付分析する際に用いる指標だからだ。

 

債務償還年数は返済能力を示し、預貸率は返済余力を示すので、融資先企業の債務償還年数と預貸率が分かると、自ずと、融資限度額や金利等の融資条件が決まる。

 

従って、銀行から有利な融資条件を引き出すには、適正な債務償還年数と預貸率をキープすることが大切になる。

 

この記事では、債務償還年数と預貸率の計算式と適正水準について、詳しく解説する。

 

 

債務償還年数と預貸率悪化の弊害は?

 

債務償還年数と預貸率が悪化すると、融資枠を縮小される、或いは、追加融資を断られる、など等の状況に陥ることが往々にしてあり得る。

 

或いは、債務償還年数と預貸率を把握せずに銀行融資を続けた結果、いつしか返済苦に陥ることも往々にしてあり得る。

 

資金調達手段が限られている中小企業にとって、銀行融資ほど身近なものはない。また、運転資金や成長投資の原資を銀行融資で賄うケースも一般的である。

 

銀行融資に失敗しないためには、融資審査を行う銀行側が重視している債務償還年数と預貸率の把握が欠かせない。

 

債務償還年数と預貸率の計算式と適正水準について、それぞれ順を追って、さらに詳しく解説する。

 

 

債務償還年数の計算式と適正水準

 

債務償還年数とは会社の返済能力を示す経営指標である。

 

債務とは文字通り、返済すべき借金のことで、すべての短期借入金と長期借入金を合計することで計算できる。

 

償還年数とは、債務の完済に要する年数で、債務を会社が生み出す年間キャッシュフローで割ることで計算できる。

 

債務償還年数の計算式は下記の通りである。

 

年間キャッシュフロー=(経常利益×50%)+減価償却費

 

債務償還年数=債務÷年間キャッシュフロー

 

例えば、債務が5千万円で、年間キャッシュフローが1千万円であれば、5千万円÷1千万円で、債務償還年数は5年となる。

 

債務償還年数の適正水準は5年以内で、一般的に債務償還年数が10年を超えると銀行の融資条件が厳しくなる。

 

 

預貸率の計算式と適正水準

 

預貸率とは会社の返済余力を示す経営指標である。

 

預貸率は、銀行が預かっている預金と、貸し出してる融資金の割合で計算される。

 

貸し出している融資金より、預かっている預金が多ければ、預貸率が高くなり、銀行側の安心度が高まる。

 

逆に、貸し出している融資金より、預かっている預金が少なければ、預貸率が低くなり、銀行側の不安感が高まる。

 

つまり、預貸率は、企業の心証を決定付ける指標でもあるのだ。

 

預貸率の計算式は下記の通りである。

 

預貸率=預金÷借入金

 

例えば、預金が1億円あり、借入金が8千万円あった場合の預貸率は、1億÷8千万円で、預貸率125%となる。

 

預貸率の適正水準は100%以上で、一般的に100%を下回ると銀行の融資条件が厳しくなる。

 

ちなみに、借入金があっても実質無借金経営と云われる会社は、運転資金を差し引いた預貸率が100%を上回っている会社である。

 

実質無借金経営は、返済しようと思えばいつでも返済できる経営状態なので、金利の払い損と思う経営者もいるかも知れないが、適度な借入枠を常に確保することができるので、実質無借金経営であっても多少の借入はしておいた方が得策だ。

 

伊藤のワンポイント
 

債務償還年数と預貸率、重要なのは債務償還年数です。債務償還年数が適正水準から外れると、早晩、資金繰りが厳しくなりますので、適正水準内に収まるように融資をコントロール、或いは、返済計画を考えなければなりません。債務償還年数の管理が杜撰になると、必ず借金で失敗します。