仕入債務回転率(日数)とは、支払効率を計る経営指標の一つである。
仕入債務回転率(日数)が売上債権回転率(日数)を上回るとキャッシュフローが悪化するので、良好な資金繰りの実現に欠かせない重要な経営指標といえる。
この記事では、仕入債務回転率、及び、仕入債務回転日数(期間)の計算式(求め方)と適正水準(目安)について、詳しく解説する。
仕入債務回転率とは、仕入債務に占める売上原価の構成比率のことで、支払効率を計る経営指標の一つである。
仕入債務とは、仕入れの対価として支払う現金以外の買掛金と支払手形のことで、仕入債務に占める売上原価(仕入の総原価)の構成比率を求めることで仕入債務回転率の計算ができる。
仕入債務回転率が分かると、仕入費用の支払い率が明らかになるので、支払効率の良し悪しが分かる。
また、仕入債務回転率が高いほど仕入債務の支払いが早く、仕入債務回転率が低いほど仕入債務の支払いが遅い、ということが分かるので、資金繰りを改善する目標指標として活用することができる。
仕入債務回転率の計算式(求め方)は下記の通りである。
仕入債務回転率=(売上原価÷仕入債務)×100
例えば、売り買い共に現金商売の場合は、仕入債務が発生しないので、(売上原価〇〇円÷仕入債務0円)×100=仕入債務回転率は計算不能になる。
売上原価が1億円で、仕入債務の期末残高が0.1億円の場合は、(売上原価1億円÷仕入債務0.1億円)×100=仕入債務回転率1,000%となる。
売上原価が1億円で、仕入債務の期末残高が0.2億円の場合は、(売上原価1億円÷仕入債務0.2億円)×100=仕入債務回転率500%となる。
仕入債務回転率の適正水準(目安)は、1,200%以上が標準である。
仕入債務回転率が標準にない場合は、支払効率が悪く、支払条件の悪化や支払遅延のリスクが高まっている可能性が高いので、注意した方が良いだろう。
なお、仕入債務回転率は、現金商売や消費者相手の商売に比べて、卸売業や法人相手の商売の方が低くなる傾向にあるため、業種業態によって適正水準に差が生じる。
従って、上記適正水準に合致しない場合は、仕入債務回転率の推移を定点観測(※1)することをお薦めする。
定点観測の結果、仕入債務回転率が悪化しているようなら、支払効率が悪化している可能性が高いといえる。
※1 定点観測とは、同じ方法(定点)で継続的にある一定の項目を観察し、以前のものと比較してその差異を分析することである
仕入債務回転率と同じ用途で活用できる仕入債務回転日数(期間)という経営指標がある。
仕入債務回転日数(期間)とは、仕入に伴い発生した仕入債務が支払われるまでの日数のことで、仕入債務回転率と同様の役割りを持つ経営指標である。
仕入債務回転日数のメリットは、売上債権回転日数と共に運用すると、キャッシュフロー重視の経営を実現しやすくなる点にある。
例えば、売上債権回転日数を下回らないように仕入債務回転日数をコントロールすることができれば、資金繰りが悪化することはなく、常に、プラスのキャッシュフローが維持することができる。
【関連記事】売上債権回転日数の計算式と適正水準
仕入債務回転日数(期間)の計算式(求め方)は下記の通りである。
仕入債務回転日数=(仕入債務:買掛金+支払手形)÷(売上原価÷365日)
例えば、仕入債務の期末残高が0.1億円で、売上原価が1億円の場合は、仕入債務0.1億円÷(売上原価1億円÷365日)≒仕入債務回転日数36日となる。
仕入債務回転日数の適正水準(目安)は40日以下が標準である。
仕入債務回転日数が標準にない場合は、支払効率が悪く、支払条件の悪化や支払遅延のリスクが高まっている可能性が高いので、注意した方が良いだろう。
なお、仕入回転日数は、仕入債務回転率同様、現金商売や消費者相手の商売に比べて、卸売業や法人相手の商売の方が長くなる傾向にあるため、業種業態によって適正水準に差が生じる。
従って、上記適正水準に合致しない場合は、仕入債務回転日数の推移を定点観測(※1)することをお薦めする。
仕入債務回転日数は、支払いの気前の良さを表すバロメーターです。取引先にとっては短いほど喜ばれますが、売上債権回転日数を下回らないように注意しなければキャッシュフローが悪化し、最悪、黒字倒産という残念な結果を招くこともあり得ます。短期過ぎても長期過ぎても都合悪いのが、この指標の特徴です。