自己資本利益率(ROE=Return On Equity)は、収益性分析に用いられる経営指標の一つである。
自己資本利益率(ROE)は、自己資本(純資産)に対する当期純利益の構成比率を求めることで計算できる。
この記事では、自己資本利益率(ROE)の計算式と目安について、詳しく解説する。
自己資本利益率(ROE)とは、企業の自己資本(純資産)に対してどれだけの利益(リターン)が生み出されているかを示す経営指標で、主に、収益性の内部分析や株式投資家が活用する指標になる。
自己資本利益率はROEと省略表記されるが、これは英語のReturn On Equity(リターン・オン・エクイティ)の頭文字が語源になっている。
かつて、自己資本利益率(ROE)のことを株主資本利益率とも呼んでいたが、日本では2006年の会計基準の改正において、株主資本と自己資本とが異なる値として明確に定義されたことで、現在では「自己資本利益率」が正確な呼称になっている。
なお、自己資本利益率(ROE)の派生用語として、自己資本営業利益率(営業利益÷自己資本×100)や自己資本経常利益率(経常利益÷自己資本×100)があるが、これらも自己資本利益率(ROE)と同様、企業の自己資本(純資産)に対してどれだけの利益(リターン)が生み出されているかを判断するのに用いられる指標になる。
自己資本利益率(ROE)の計算式は以下の通りになる。
自己資本利益率(ROE)=(当期純利益÷自己資本)×100
例えば、自己資本(純資産)が10億円で当期純利益が1億円であれば、(1億円÷10億円×100)=自己資本利益率(ROE)10%になる。
自己資本(純資産)が10億円で当期純利益が0.5億円であれば、(0.5億円÷10億円×100)=自己資本利益率(ROE)5%になる。
因みに、自己資本(純資産)、或いは、当期純利益の何れかがマイナスの場合は、計算結果もマイナスになり、投資価値のない企業という判断が下される。
自己資本利益率(ROE)の目安は10%~20%が標準と云われている。
但し、中小企業など、元々の資本金が小さな会社は、標準値よりも目安が高くなる。また、業績悪化に伴い自己資本が減少している場合も、標準値よりも目安が高くなる。
なお、自己資本利益率(ROE)がマイナスの場合は、債務超過、或いは、赤字経営に陥っているということなので、早急に経営改善しなければならない。
また、自己資本利益率(ROE)の目安は、資本金の規模や業種業態によって変わるので、定点観測で推移分析しながら、自社に合った適正目安を探るのがお薦めだ。
自己資本利益率(ROE)は、企業の自己資本(純資産)に対してどれだけの利益(リターン)が生み出されているかを示す指標なので、改善するには収益性の向上が欠かせない。
例えば、売上拡大一辺倒に走るのではなく、利益率改善、コスト削減、生産性改善など等、収益性に貢献する経営改善を推進すると、自己資本利益率(ROE)の数値が改善される。
なお、収益性改善の具体的手法については、当サイト内の「会社が儲かる実践経営ノウハウ」を参考にしてほしい。
何れにしろ、売上拡大をキープしながら、最小コストで最大利益を生み出す経営基盤を確立することが、自己資本利益率(ROE)の確かな改善手法になる。
自己資本利益率(ROE)に似た指標に総資本利益率(ROA)という指標がある。
総資本利益率(ROA)の計算式は以下の通りになる。
総資本利益率(ROA)=〔当期純利益÷総資本〕×100
総資本利益率(ROA)は、分母が純資産ではなく、外部調達した負債等も含まれた総資本になる。自己資本利益率(ROE)とは異なり、負債を考慮した数値になるため、ROEとROAの二つの経営指標を活用することで負債リスク(倒産リスク)の経営分析ができる。
例えば、ROEが高くROAが低い場合は、純資産が少なく、大きな負債を抱えている可能性が高くなる。なお、一般的にROEは10%以上だと投資価値がある会社だと判断されるのに対して、ROAは5%以上で投資価値がある会社だと判断される。